更新日: 2021.05.19 医療保険
AYA世代(思春期・若年成人)のがん、どう備える?
この年代は、社会的にも経済的にも人生の中でも、最も変化の激しい年代といえるでしょう。義務教育が修了し、一般的には高等学校や高等教育機関に進み、就職します。その後は人によるとは思いますが、結婚や住宅の購入、出産などを迎えることもあるでしょう。
人生の中で、最も変化が激しく、そして希望に満ちた年代なのがAYA世代なのですが、今、AYA世代のがんが注目されています。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
イメージしがたいAYA世代のがんには、特有の課題も
がんという病気は、どちらかといえば、「がん適齢期」といわれる中高年世代の病気であるというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
がん検診クーポンの対象は40歳(子宮けいがんは20歳から)からですし、協会けんぽの生活習慣病予防一般検診の対象は35歳からですので、そのようなイメージがあるのもうなずけます。
AYA世代の方は、その多くが、これらの検診の対象とはなっていませんが、今、AYA世代のがんが注目されています。「がん適齢期」の中高年世代とは異なり、AYA世代ならではの、特有の課題があるからです。
AYA世代の時にがんに罹患(りかん)してしまうと、その後の人生設計、つまり中高年世代のそれに比べてはるかに長い、その後のライフプランやキャリアプランに大きな影響を与える可能性があります。
例えば、住宅ローンを組むことを検討した場合、がんになったため団体信用生命に加入できず、それゆえに住宅ローンを組むことが困難になったり、選択肢が狭まったりすることが考えられます。
AYA世代前半の年代は未成年であり、学業半ばです。最終的な意思決定は保護者ということになりますが、子どもの反抗期と重なり、親子で細かな相談をすることが難しいという家庭もあるかもしれません。また、症状や治療によっては、学業を諦める決断を迫られる可能性もあります。
AYA世代後半の年代は、成人しているとはいえ人生の経験が乏しく、それでいて、がんの治療方針やその後のキャリア形成など、さまざまな決断を迫られることもあります。
AYA世代のがんの治療は、メンタル、家族関係、学業、キャリア、ライフプランなどへの影響を考えると、「がん適齢期」の中高年世代のそれとは大きく異なるケアが必要となります。
AYA世代のがんそのものにも特徴がある
まず、その年代ゆえ、小児がんと成人のがんの両方に罹患(りかん)する可能性があります。25歳未満の場合、希少がんになる場合が多いようです。希少がんとは、患者が希少ながんのことで、専門とする医師が少ない傾向があるようです。
25歳以上のAYA世代では、子宮がんや乳がんといった女性の機能にかかわるがんが多いほか、消化器系のがんも多いようです。女性の機能にかかわるがんや消化器系のがんは、中高年世代のがんにも多く見られ、治療方法も確立しています。
しかし、治療方法が確立しているのは中高年世代であって、AYA世代は「希少な患者」ということになってしまいます。希少な患者は、治療実績が少ない等の課題があるのです。
若くてもがん保険を
がん保険というと、「がん適齢期」である中高年世代に契約するイメージが強いのではないでしょうか? がんになってしまうと、以後、がん保険の加入が困難になってしまいます。さらに治療を行ったとしても、以後再発や転移の可能性が続きます。
今、子育て中の方の中にも、AYA世代の方もいらっしゃることでしょう。ご自身のがん保険と併せて、お子さんのがん保険の加入の有無についても、一度は検討なさることをお勧めします。
厚生労働省「思春期・若年成人(AYA)世代のがんの現状と課題」
国立がん研究センター 中央病院「AYA世代のがんについて」
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役