海外で入院・・『もしも』は起こると考える。海外の医療保険(第2話)

配信日: 2018.01.27 更新日: 2019.01.16

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海外で入院・・『もしも』は起こると考える。海外の医療保険(第2話)
前回は、筆者の二回の入院にまつわる費用のご紹介をしつつ、海外での医療費のインフレについて触れました。また、海外生活をする『外国人』として、筆者自身が医療費負担リスクをどのようにコントロールしているかのお話をしました。今回は、一般的に皆さんにどのような選択肢があるかをご紹介していきます。
田中ゆき恵

執筆者:田中ゆき恵(たなか ゆきえ)

イギリスCII AFP

アメリカパブリックアイビー、The University of Michigan, Ann Arborを卒業後、マレーシアを本社にもつイギリス系IFA、Infinity Financial SolutionsにてシニアコンサルタントとしてFP歴10年以上のキャリアを持つ。バンコク、ジャカルタ、クアラルンプールを中心に、海外居住者のために、財テクゲームを取り入れたお金セミナーを実施。海外居住中のへそくり術、教育資金のため方、老後資金準備法、相続対策などを得意としており、わかりやすさと包括的なアドバイスをモットーに活動中。各地の日本人向けフリーペーパーなどでも執筆協力している。
https://www.facebook.com/InfinitySolutionsJapaneseService/

海外生活を送る上での医療保険オプション

後から参照する事があるのでもう一度ご紹介しておきますが、前回ご紹介をした『海外生活を送る上での医療保険のオプション』は次の4つです。
 
A)日本から海外旅行保険に加入していく
B)クレジットカードの付帯保険
C)住民票を抜かずに、国民健康保険に切り替える
D)居住先でのローカル保険もしくは、世界中でカバーされる国際医療保険に加入する
 

『既往症』とは?

そして本題に入りますが、海外での保険加入で一番ネックとなる可能性があるのが『既往症』です。読んで字の如く、『既にかかった事のある疾患や、治療を受けたことのある症状』を指します。例えば、『一度がんを発症した経験のある方は、がん保険に加入する事ができない』とかいう話は、聞いた事がある方も多いかと思います。
 
一般の保険加入の際(国民健康保険ではない、民間の保険の事)、既往症は『免責』。つまり、保険会社のカバー責任を免れる条項なので、名義人の自己負担となります。
 
ロングステイヤーの方からなどのご相談で一番多いのがこの『既往症』にまつわる案件で、日本で旅行者保険に加入している方でも、『こないだまで高血圧の薬も保険が使えたのに、使えなくなった』とか、『保険会社がもう来年は更新しないと言ってきた』というご相談がとても多いのです。
 
しかし、『既往症』がついてからの医療保険加入は、免責事項が増えていく訳なので、当然条件が悪くなります。保険会社からすると、『この(免責)条件でよければ、加入させてあげるよ』というスタンスです。
 
筆者の加入している国際医療保険の場合、グループ加入という事で、『Medical History Disregarded』という特約がついています。簡単に言うと『既往症も保障してあげるよ』と言う特約です。個人で入る場合、この特約を付けてくれる保険会社があったとしても、保険料は高額になります。
 

リスク回避の方法

このリスクを回避する方法として、Cの国民健康保険はとても有効です。
 
海外での医療サービス利用時も、医療機関でもらったオリジナルのレシートと診断書を帰国時に申請すれば、『日本で同じ治療を受けた場合の請求額』を基準額として、その7割を返してもらうことができます。そして最大のメリットは『既往症』もカバーしてもらえるという点。
 
既往症がある方や恒常的な投薬がある方は、国民健康保険を継続していくのは費用的にも(特に日本での収入が発生していない場合)悪いオプションではありません。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000062584.pdf
 
但し、Cの弱点は『建て替えリスク』及び『基準価格のリスク』です。建て替え金額が高額な場合や、建て替え期間が長くなる場合、ご自身のお財布事情を圧迫することがあるかもしれません。
 
ちなみに、損保ジャパンのサイトでは、海外で実際に起こった手術の実例及びコストが掲載されていますので、自己負担リスクというのが実際どのくらいになりそうか、ご参照ください
http://www.sjnk.jp/kinsurance/travel/kaigai/airport-off/case/
 
地域によっては、日本で同じ症状の治療をした場合との差が高額になり、負担額と戻ってきた額にかなりの差が出る地域があります。価格.comの資料では、日本での虫垂炎手術及び入院にかかる費用が約60万円程度なのに対して、フランスでは100万円程度という差額が掲載されています。
http://hoken.kakaku.com/insurance/travel/select/cost/

 
これでお話しすると、自己負担額100万円に対して、日本で請求した場合60万円をベースに7割しか返ってこないことになりますから、42万円返ってきても58万円は負担額となってしまうという事です。そうなってくると、Bのクレジットカード付帯の旅行保険のカバー条件や申告方法なども、しっかり確認して頂くと良いでしょう。
 

クレジットカード付帯の保険

多くの場合、クレジットカード付帯の保険は、『渡航後3ヶ月』などというようなカバー期間の制限があります。
 
従って、滞在がそれ以上長期化する方には不向きといえます。更に、カード会社によって(1)直接決済してくれるタイプと、(2)自己負担後の払い戻しのパターン、(3)病院での利用前にクレジットカード会社に連絡をして、承認を得ないと直接決済をしてくれないパターン(保険会社に国際電話などをすることになります)などがあります。実際使う段になって困らないよう、『知っておく』ことは大切です。
 
『承認制』の場合のリスクは、利用者本人が意識不明だったりした場合の事なども、クレジット会社に確認が必要です。このように色々なオプションがありますので、皆さんに合った方法で、海外居住中のリスクに対応してください。
 
次回は、FP目線からの、海外での『鉄壁』医療保険のご紹介と、海外での医療保険活用必勝法をご紹介します。
 
Text:田中ゆき恵(たなか・ゆきえ)
イギリスCII Award in Financial Planning認定者
Infinity Financial Solutions シニアコンサルタント

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