更新日: 2021.07.07 その他保険
退職後でも傷病手当金や出産手当金の給付は受けられる! その条件は?
被保険者資格喪失後、受けられる給付とその条件とはどのようになっているのでしょうか。全2回に分けて取り上げます。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
資格喪失後でも支給されるお金の種類
健康保険の被保険者は、同制度から保険給付を受けることができます。退職をすると、その被保険者でなくなりますが、被保険者資格喪失後に給付されなくなると、健康の保持、生活の保障の点から健康保険制度の趣旨にそぐわなくなるため、被保険者資格喪失後に受けることができるものがあります。
その資格喪失後に受けられる給付の種類として、傷病手当金、出産手当金、出産育児一時金、埋葬料・埋葬費が挙げられます。しかし、受給のためにはそれぞれ要件があります。
傷病手当金・出産手当金の額と支給期間
被保険者が、業務外の病気・けが(私傷病)で療養のため労務に服することができない場合に支給される傷病手当金、出産のため労務に服さなかった場合に支給される出産手当金があります。
傷病手当金は、在職中の標準報酬月額(つまり給与などの報酬の月額)をもとに計算され、原則、傷病手当金は「支給開始月以前1年間の各月の標準報酬月額の平均の30分の1」に3分の2を掛けた額が支給されることになっています(【図表1】)。
つまり、給与の3分の2が給付されることになります。療養のために仕事に就かなかった日で、その4日目から支給されることになり、これが最大で1年6ヶ月支給されることになっています。
出産手当金についても同様の計算方法で計算され、こちらは出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日まで支給されることになっています。
傷病手当金・出産手当金の継続給付
これらは在職中だけでなく、退職による被保険者資格喪失後でも継続して支給されることがあります。
(1)被保険者資格喪失した日の前日(退職日)まで引き続き1年以上被保険者(任意継続被保険者等を除く)であること
(2)被保険者資格喪失時に傷病手当金あるいは出産手当金を受けていること
いずれにも該当する場合が資格喪失後の継続給付の対象となります(【図表2】)。
これらの要件を満たせば、傷病手当金は、支給を始めてから起算して1年6ヶ月を限度に支給され、出産手当金は、出産の日以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産の日後56日までを限度に支給されます(【図表2】)。
同一の保険者から、つまり、協会けんぽだった場合は協会けんぽから、健康保険組合だった場合は、退職前の健康保険組合から支給されることになります。
老齢・退職年金を受けると継続給付の傷病手当金は調整
傷病手当金の継続給付の受ける人が60代以上の場合もあることでしょう。しかし、60代以降で老齢・退職年金が受けられる場合は、継続給付としての傷病手当金は調整されてしまいます。
老齢・退職年金が傷病手当金より多い場合は傷病手当金が支給されず、老齢・退職年金(360で割った額)より1日の傷病手当金の額が多い場合は、当該年金との差額が支給されます。
60代、特に老齢基礎年金と老齢厚生年金が受けられる65歳以降、在職中に傷病手当金を受け、退職してからも継続給付の傷病手当金を受けられる場合は、調整があることをあらかじめ理解しておく必要があるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー