生命保険に加入する時は契約者・被保険者・受取人の関係に注意しよう!
配信日: 2021.09.30
・契約者(=保険料負担者。以下、「契約者」に表記統一)
・被保険者
・死亡保険金受取人
税金の種類と税額が変わることで、受け取る死亡保険金の金額に大きな変化があります。死亡保険金は遺族の生活資金としてとても大切なものですから、この三者をよく確認して加入しましょう。
すでに加入している生命保険がありましたら、すぐに保険証券の名義欄を確認しましょう。
執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント
1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。
人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。
保険金にかかる税金の種類が異なる! 死亡保険の内容を確認しよう
生命保険を契約する際、冒頭で示した三者(契約者・被保険・死亡保険金受取人)を必ず指定しなくてはなりません。また、満期保険金の受取人が指定できる、満期保険金がある保険商品もあります。今回は満期保険金がない生命保険について説明します。
1.死亡保険金に課税される税金の種類とは?
死亡保険金に税金がかかるパターンは、多くの場合次の3つが挙げられるでしょう。
(1)契約者と被保険者が同一人物であり、受取人は相続人である
課税される税金・・・相続税
以下で確認してみましょう。
<例>契約者:A(夫) 被保険者:A(夫) 受取人:B(妻や子)
※( )内の夫・妻・子は多くの場合こうなるとの例示で合って、例えばBが第三者であっても構いません。
このケースでは「相続税」の課税対象です。しかし死亡保険金は遺(のこ)された家族(法定相続人)にとって重要な生活資金となるため、
「 500万円×法定相続人の数 」
が非課税となることをしっかり確認しておきましょう。
<例>被保険者夫の死亡保険金2000万円、法定相続人が妻と子2人の場合
2000万円-500万円×3人=500万円
2000万円のうち500万円だけがみなし相続財産となり相続税の対象です。
(2)契約者と被保険者が別の人で、契約者と受取人が同じ人である
課税される税金・・・所得税
以下の例で詳しく見てみましょう。
<例>契約者:A(夫) 被保険者:B(妻) 受取人:A(夫)
このケースの場合は、保険金が「一時所得」として扱われ、課税されるのは「所得税」となります。
死亡保険金額-払込保険料総額-特別控除50万円=一時所得の課税金額
この半分が総所得金額に算入されます。
<例>死亡保険金2000万円、払込保険料総額1500万円の場合
2000万円-1500万円-50万円=450万円 この半分の225万円が総所得金額に算入されます。
(3)契約者と被保険者が別の人で、契約者ではない別の人が受取人である
課税される税金・・・贈与税
<例>契約者:A(夫) 被保険者:B(妻) 受取人:C(子)
三者とも別の人物となり、このような契約では「贈与税」の課税対象です。贈与税が課税される場合、
「 死亡保険金額から基礎控除額である110万円を引いた金額 」
が贈与される財産となるのです。
<例>死亡保険金2000万円の場合
2000万円-110万円(基礎控除)=贈与財産1900万円
ちなみにこの贈与財産(一般贈与財産)のみの税金は、
1900万円×50%-250万円=700万円となり700万円が税金です。
2.税金面で有利になるのは?
上記で解説した3つのパターンのうち、税制上有利になることが多いのは、相続税のケース、つまり(1)のケースです。ただし、相続財産が多くて、他の所得が少ない場合などは(2)の所得税のケースが有利になる場合もあります。
(1)の相続税のケースの場合、生命保険の非課税分だけではなく、葬儀費用なども非課税になりますので覚えておきましょう。
さらに、相続する金額から基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)が引かれるため、他の相続財産があまり大きくなければ、少しの相続税か相続税がかからないケースが一般的です。
また、配偶者の税額軽減(配偶者の法定相続分または、1億6000万円までは非課税)を利用できます。
こんなケースに注意
■ケース1
男性で独身時代に生命保険を契約、死亡保険金の受取人を自身の父親とした。結婚して、妻が出産した場合は、死亡保険金受取人をそのままにしていると、妻子が法定相続人となり、父が法定相続人からはずれて、みなし相続財産の非課税枠から外れてしまいます。
■ケース2
ケース1で父親が死亡したら、受取人は父親の相続人になっていまいます。いろいろなケースが想定されますが、本来もらえるはずだった、妻子の死亡保険金が減るケースもあります。特に注意が必要です。
■ケース3
所得税になるケースは、夫の給料から保険料が天引きされる場合です。妻を被保険者の保険に入る場合、天引きのほうが保険料は安いので(または妻に所得がないので)、夫を契約者と受取人として保険に入ることもあるでしょう。
ただし、この所得税のケースが、すべて相続税のケースに比べて損をするわけではありません。
■ケース4
贈与税になるのは、ケース3で受取人を子どもにした場合です。「契約者と被保険者が別の人物、契約者ではない別の人物が受取人」のケースとなってしまいます。この贈与税のケースにならないよう気を付けてください。
保険金の受取人は、何度でも変更することが可能です。しかし、つい忘れがちですね。生命保険とは長い付き合いになります。例えば、結婚、出産、離婚など、生活環境・家庭環境に変化が生じた場合、保険金の受取人を見直すことをお勧めします。
また、上記のような家庭環境等に変化が生じた時は必ず保険証券を確認してください。被保険者が死亡した場合は、死亡保険金受取人は確定し、変更できなくなりますので、くれぐれも注意してください。
(参考・引用)
生命保険文化センター「生活基盤の安定を図る生活設計/死亡保険金に相続税がかかる場合の具体例は?」
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント