更新日: 2021.10.19 その他保険
SDGsと交通事故の関係とは? 日本における交通事故の状況とは
保険加入の義務化の有無にかかわらず、自転車事故は誰もが避けたいものです。SDGsの目標3.6でも「2020年までに、交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす」という項目があります。環境に優しく、健康増進にもなる普段の足である自転車について、日本における自転車事故の状況や事故後の賠償、それを防止するための交通法規を見ていきましょう。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
交通事故とSDGsの関係は
SDGs(持続可能な開発目標)には、17の目標と169のターゲットがあります。交通事故は17の目標の3番目「すべての人に健康と福祉を」の中の3.6「2020年までに、交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす」に関係します。
e-Stat「道路の交通に関する統計 / 交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」より筆者作成
上記のグラフのように、日本国内では2010年に比べて死者数は43%減となっています。ただし、自転車乗用中の事故は37%減と若干減少幅が小さくなっています。
自転車事故の特徴は
令和2年の相手当事者別自転車乗用中死者・重傷者数の合計は6829人で、うち対自動車での事故が5425人で最も多くなっています。また自転車相互が392人、自転車単独は560人となっています。
対自動車事故で自転車側に法令違反があった状態での死者・重傷者数は2966人で、安全義務違反がうち30%、一時不停止・交差点安全進行義務違反がそれぞれ16%、信号無視が7%等となっています。
自転車事故に対し、その程度により変わりますが、高額な損害賠償を求める事例もあります。「自転車事故でも賠償金の額が大きくなる」ということに目がいきがちですが、自転車とはいえ重大な事故につながるということを十分意識しなくてはなりません。
事故を防ぐには
いうまでもないですが、交通ルールを守ることです。
では、自転車はどこを走ればよいのでしょうか。道路交通法では、自転車は歩道と車道の区別がある道路では車道を、また、道路では左側を通行しなければならず、車両通行帯のない道路では、道路の左側端を通行しなければいけませんし、自転車同士は並進してはいけません。
また、道路を横断する場合や交差点を通行する場合にその付近に自転車横断帯があるときは、当該横断帯を通行しなければなりませんし、右折の場合は2段階右折をしなければなりません。
法令違反で最も多かった安全義務違反ですが、その安全義務には片手運転やスマホの操作、傘を差す等の禁止が含まれています。
次に信号無視に関してですが、横断歩道を進行して道路を横断する場合や、歩行者用信号機に「歩行者・自転車専用」の標示のある場合は、歩行者用信号機に従わなければいけません。またそれ以外でも、夜間の通行時の灯火義務や酒気帯び運転等の禁止といったものがあります。
交通違反をすれば、罰則や罰金が科されることもあります。例えば、飲酒運転の場合は5年以下の懲役または100万円以下の罰金、信号無視の場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金です(※)。
万が一事故を起こしてしまった、そのときとそのあとは
絶対に行わなければならないのは、直ちに負傷者を救護して、危険を防止する等必要な措置を講じなければいけません。また、警察に事故の内容を連絡しなくてはいけません。
その後被害者に対して損害賠償を請求されることもありますし、刑事処分を受ければ前科がつきます。過去の判例ですが、自転車を運転していた小学生と歩行者による事故によって、裁判で保護者に1億円近い賠償責任が発生したという判例や、スマホを使用しながらの運転で歩行者を死亡させ禁錮2年、執行猶予4年の有罪判決が出た判例もあります。
安全第一がSDGsの目標達成に寄与する
自転車はとても手軽で環境にも優しく、健康増進にもつながる便利で身近な乗り物です。しかし、それはあくまでも交通ルールを守ったうえでの話です。
SDGsというと、何か大きくて一個人で何かできるようなものではないと思うかもしれませんが、「交通事故による死亡やけがを半分にまで減らす」という目標については、一個人の行動で目標達成が可能なものです。
秋は気候もよくたまには自転車で遠出を、と考えている方もいらっしゃるかもしれません。その際はぜひ交通ルールを守っていきましょう。
また前述のとおり、自転車事故においても、事故の状況によっては多額の賠償金の支払いを命じられることもあります。自動車同様、運転には十分気をつけなければなりません。自転車での移動が多い方は、自治体等の保険加入義務の有無に関わらず、万が一に備え自転車損害賠償保険の加入を検討しましょう。
(※)北海道警察 ホームページ
(出典)
警視庁交通局「令和2年における交通事故の発生状況等について」
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表