来年からパート・アルバイトの社会保険適用が拡大。年金・保険料の負担はどう変わる?
配信日: 2021.11.11
「従業員数501人以上の勤め先」で働くパート・アルバイトの人は、すでに2016年10月から社会保険の加入対象となっていますが、来年の10月からは「従業員数101人以上の勤め先」に適用が拡大されます。
さらに2024年10月からは「従業員数51人以上の勤め先」に拡大。ここまで拡大されると、いよいよ自分ごとという人も少なくないのではないでしょうか。
今回は、この社会保険適用拡大について詳しく説明するとともに、世間の主婦の反応を見てみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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パート・アルバイトの年金や医療保険が充実!社会保険適用拡大とは
まずは厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」(※1)をチェックしてみます。
社会保険適用拡大とは、先述のとおり対象の勤め先で働くパート・アルバイトの人たちが社会保険の適用になるという政策のこと。具体的には、対象の勤め先で働くパート・アルバイトのうち、以下の4つに当てはまる人が社会保険の適用となります。
・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・月額賃金が8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
●年金・保険料の負担はどう変わる?
ここからは、月収8.8万円(年収106万円)で働くパートさんを例にしてみます。
今までは国民年金・国民健康保険料(例:月1万9100円)は自分で支払う必要がありました。これが社会保険適用になると、本人負担は月1万2500円になり(労使折半)、給料天引きになるというわけです。
●年金・医療保険のメリットは?
国民年金から厚生年金に加入すると、基礎年金部分に加えて報酬比例部分が上乗せされます。
例えば年収106万円(月額8.8万円)の場合、月々の厚生年金保険料は8100円。基礎年金部分以外の、増える報酬比例部分の年金額の目安は、「月額9000円(年額10万8300円)×終身」ということになります。
そのほか、厚生年金加入中の障害については、障害等級1・2級の場合、障害基礎年金に加え障害厚生年金の上乗せがあるなど保障がワイドに。遺族基礎年金に加えて、遺族厚生年金も受け取れるようになります。
気になる健康保険も充実し、業務外の事由による療養のため働くことができないときに「傷病手当金」が受け取れるようになったり、産休期間中に「出産手当金」が受け取れるようになったりします。
これだけでも社会保険のメリットは大きいといえそうですね。
扶養の範囲内で働いている人はどうなる?
配偶者の扶養の範囲内に収入をおさめることで、国民年金・国民健康保険の負担をなくしている人も多いでしょう。社会保険の適用が拡大されると、いったい保険料はどのようになるのでしょうか。
●社会保険適用拡大前
これまでは年収が130万円を超えると、国民年金・国民健康保険料の負担が発生していました。うっかり年収がオーバーしてしまい、月額2万2500円(目安)を払わなくてはならなくなってしまった……なんて経験がある方もいらっしゃるでしょう。
ここで支払っても、国民年金のみのため基礎年金は増額されないという残念な事実もあります。
●社会保険適用拡大後
社会保険適用拡大後は、年収106万円(月額8.8万円)を超えるなど各種要件を満たした場合に、厚生年金保険・健康保険に加入することになります。
例えば年収106万円(月額8.8万円)の場合、月の保険料の負担は1万2500円(労使折半)となります。厚生年金に加入することになるため、年金が増額されるというメリットがあります。前までのように、保険料を納めることになっても損にはなりません。
もちろん、先述のとおり医療保険のメリットも。受け取れる年金が増えて保障も充実するとなると、扶養の範囲を気にすることなく働けるようになりますね。
社会保険適用拡大、好意的に捉える主婦がおよそ6割
いよいよ来年10月から適用が拡大されますが、世間の主婦はどのように捉えているのでしょうか。
ソフトブレーン・フィールド株式会社が発表した調査結果(※2)を見てみましょう。この調査は、平均年齢49歳、非正規で働く主婦中心の498人を対象に行われたもの。
・よいことだと思う 58.6%
・わからない 34.5%
・よいことではない 6.8%
わからないが3割強いるということから、社会保険適用拡大そのものの認知度がそこまで高くないのかもしれません。それでも、「よいこと」と捉えている人が6割近くにのぼりました。
よいことだと思うと回答した理由については、以下のとおり。
1位:将来年金の受取金額が増えるから 66.4%
2位:社会保険の半分を会社が負担してくれるから 66.1%
3位:今よりも働く意欲を高められると思うから 32.5%
4位:今まで厚生年金に入りたくても入れなかったから 25.0%
5位:障害年金の認定基準が広くなり保障が手厚くなるから 12.7%
6位:子どもを「被扶養者」にできるから 11.0%
多くの主婦が「年金の受取金額が増える」「保険料が労使折半になる」ことをメリットとして挙げています。
現在扶養の範囲内で働いている人の意見としては、「夫の扶養の範囲内に収入を収めて、支払う保険料を節約しているが、もらえる年金は少なくある程度自分で何とかしておいた方がいいと思うため(50代・業務委託)」「収入の壁を気にすることより自分の社会とのつながりがもっと欲しい(40代・パート)」という具体的なものも。
いっぽうで、最初の質問で「よいことではない」と回答した人からは、「今の働き方が自分に合っているから(40代・パート)」「自分の時間と仕事のバランスを調整して働きたいから(40代・業務委託)」といった意見も挙がりました。
たしかに新たに社会保険の対象となった人は、任意ではなく加入が義務化となるため、突然の変化に戸惑う人が出てきても当然といえますね。
社会保険適用拡大は、来年2022年の10月から。該当する方は、早めに詳細をチェックして月々の収入や保険料、受け取れる年金額などをシミュレーションしておくのがいいかもしれません。
出典
※1 厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
※2 ソフトブレーン・フィールド株式会社「働く主婦500人アンケート調査」
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部