医療費が高額に! 負担を軽減できる高額療養費制度と限度額適用認定証とは
配信日: 2021.11.23
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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知って安心、高額療養費制度と限度額適用認定証
日本では全員が健康保険に加入して、大部分の人は3割の自己負担で医療サービスを受けることができます。例えば風邪をひいて病院に行った時、窓口で請求される金額は全体でかかった費用の3割です。
とはいえ、大きな病気やけがで入院するとなると3割の負担でも高額になります。そのような時に知っておくと安心な制度に、高額療養費制度があります。
これは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。金額はひと月(月始めから月末まで)単位で合計されます。
例えば、総入院医療費が100万円だったとします。自己負担は3割で30万円です。高額療養費制度は、年齢や所得によって限度額が設定されています。69歳未満で年収が約370~770万円の場合、自己負担限度額は約9万円です(限度額については、後ほど計算方法など詳しく説明します)。
約9万円に負担が軽減されるのはうれしいですが、30万円を窓口でいったん支払った後、30万円-9万円の差額21万円の支給を受けるとなると、戻ってくるとしても30万円を用意しなければなりません。これは大変です。
そこで70歳未満の人は、事前に限度額適用認定証の交付を受けておくことで、窓口の自己負担額を一定の金額(ここでは約9万円)に抑えることができます。限度額適用認定証の申請窓口は図表1のとおりです。加入している健康保険によって申請先は異なります。
高額療養費制度の限度額の計算方法
ひと月の上限額は収入によって区分されています。69歳以下の場合は、図表2のようになっています。
70歳以上の人は、認定証に関して図表3のように分類されています。限度額の計算などの詳細は下記をご参照ください。
(参考:厚生労働省「平成30年8月から、高額療養費の上限額が変わります」(※2))
入院だけでなく外来診療でも使える
限度額適用認定証を使用する時の注意点を3つお伝えします。
(1) 入院だけでなく、外来診療の受診でも使える
外来診療でも、その月の窓口負担の合計額が自己負担限度額を超える場合は、認定証を提示することで限度額までにとどめることができます。
(2) 食事代、保険外の治療、差額ベッド代などは自己負担限度額に含まれない
(3) ひと月単位で限度額が決められている
例えば同じ入院治療をしても、入退院が同月内の場合と入院期間が2ヶ月にまたがった場合とでは自己負担の金額が変わります。冒頭の入院医療費100万円の場合、自己負担限度額は約9万円でしたが、これは入院から退院まで同月内の金額です。
自己負担の30万円の内訳が<1月 25万円><2月 5万円>で請求されていたら、1月分の限度額の約9万円と2月分の5万円を支払うことになります。もし可能なら、日程調整を検討されるのも一案です。
急な入院などで申請が間に合わなかった場合も、退院までに提出することで限度内の清算ができます。また限度額適用認定証の交付を受けなくても、後日「高額療養費支給申請書」を図表1の窓口に提出することで、高額療養費の上限額を超えて支払った金額を払い戻すことはできます。
病気やけがで入院した時のために、民間の医療保険に加入している人は多いです。ご自身の自己負担限度額や上記(1)~(3)を知っておくことは大切です。加入している医療保険の確認と見直しに役立つ情報だと思います。
(※1)厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
(※2)厚生労働省「平成30年8月から、高額療養費の上限額が変わります」
(参考)
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士