育児休業を延長しても保険料は免除になる?
配信日: 2021.11.30
今回は育児休業を取得した際の保険料免除の制度について解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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育児休業等取得期間中の社会保険料免除について
育児休業を取得した際には、事業主が「健康保険(協会けんぽ)・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書(新規・延長)/終了届」を年金事務所などに届け出ることにより、本人そして事業主双方の社会保険料負担が免除される制度です。また、対象となる子どもについては、「監護期間中の子ども」さらに「要保護児童」も含まれます。
■免除が適用される期間
育児休業を取得し、休業を開始した日を含む月から、育児休業が終了し復帰した日を含む月の前月までの期間(ただし、子どもが3歳になるまで)となっています。
■免除期間の取り扱いは?
保険料免除が適用されていても、健康保険の給付は変わらずに受けることができます。また、免除期間については、将来の年金額に反映されることとなっています。
育児休業を延長する場合の対応
育児休業を延長する場合でも引き続き、事業主が延長の書類を提出することで保険料の免除を受けることが可能です。ただし、子どもが3歳になるまでという要件は変わりません。
■2021年の法改正内容に注意
2021年の法改正により、賞与部分の免除については、「1ヶ月を超える育児休業を取得している場合に限り、免除の対象とする」こととなりました。この改正は2022年10月1日より適用されます。
その他育児休業にかかわる特例
育児休業を取得した際には、上記で紹介した保険料免除以外にもさまざまな特例が用意されています。
■育児休業後の社会保険料の特例
育児休業から復帰しても、短時間勤務などで収入が育児休業に入る前と比べて減少する可能性があります。その際、引かれる社会保険料の計算の基礎となる標準報酬月額が、育児休業に入る前のものを適用されると、本来の標準報酬月額で計算する額よりも多くの保険料を支払う必要が発生します。
そのような負担を軽減するために、現在では特例として、育児休業から復帰し、働き方によって収入が育児休業前よりも減少した場合においては、復帰してから3ヶ月間の標準報酬月額を基に保険料を改定できることとなっています。
この届け出についても、事業主が「健康保険・厚生年金保険育児休業等終了時報酬月額変更届」を年金事務所に提出することによって、復帰後4ヶ月目からの保険料より適用されます。
ただ、この特例によって支払う保険料が少なくなると、将来受け取れる年金額が少なくなってしまうという懸念がありました。そのような不安を払しょくするために、次のような特例が用意されています。
■3歳未満の子を養育する期間についての年金額の計算の特例
この特例は、上記の特例を受けた場合における保険料の減少によって、将来受け取る年金額が少なくなるといったことを防ぐため、子どもが3歳になるまでの期間においてその期間の各月の標準報酬月額が育児休業前よりも下がった場合は、3歳になるまでの間、育児休業前の標準報酬月額が適用されます。
この場合も事業主経由で「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を年金事務所に提出する必要があります。
■育児休業期間中の住民税徴収猶予制度
育児休業中の1年以内の期間において、住民税の納付が困難であると判断した場合、本人が市区町村役場に届け出ることで納付の猶予を受けることができます。
ただし、あくまでも納付猶予であることから、育児休業から復帰した際には猶予部分の住民税を延滞金と併せて納める必要があります。
まとめ
女性の社会進出が進むなか、出産、育児を経て社会復帰がしやすいように、近年育児や介護の制度改正が行われています。男性でも育児休業が取りやすくなるなど、制度の改革も進んでいますが、社内的にはなかなかとりづらいといった風潮も見られます。
とはいえ、今後の少子化対策において、子育ては女性だけの問題ではなくなりつつあります。男女ともに、分け隔たりなく必要な休業が取れるような社内の雰囲気を作っていくことも今後の大きな課題といえるでしょう。
出典
(※1)厚生労働省「育児休業期間中の社会保険料の免除」
(※2)厚生労働省「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の成立について(令和3年6月25日)
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員