夫が定年退職したあと、健康保険はどうなる?
配信日: 2021.12.08
定年退職後の健康保険の仕組みや、必要な手続きについて解説します。
執筆者:新井智美(あらい ともみ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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定年退職後の健康保険
会社の健康保険に加入していた場合、定年退職後は原則として被保険者の資格を失います。しかし、多くの健康保険では任意継続加入制度を導入しており、その制度を利用するか、もしくは国民健康保険に切り替えるか、いずれかを選択することになります。
健康保険の任意継続加入制度とは
任意継続加入制度とは、退職後2年間までそれまでの健康保険に加入できる制度で、定年退職のみならず、自己都合による退職の場合でも利用できます。ただし、支払う保険料については、それまでの事業主との折半から全額自己負担となります。支払う保険料が倍になる点には注意が必要です。
保険料は2年間変わりませんが、任意継続加入中に介護保険の第2被保険者(65歳以上が該当)となった場合は、保険料が変更となる可能性があります。
健康保険の保険料については、厚生年金保険料と同様に標準報酬月額によって決定されますが、退職後は収入が下がることから、任意継続加入者の保険料については上限額が設けられているケースも見られます。
もし、任意継続加入を希望する場合は、その際の保険料がいくらになるのかを事前に確認しておくようにしましょう。保険料については、会社の労務部門などに問い合わせることで確認できます。
■任意継続加入制度のメリット
通常、会社で加入している健康保険には、傷病手当金を始め、インフルエンザ予防接種費用の一部負担、人間ドックの費用補助など、さまざまなサービスが用意されています。
これらのサービスは基本的に、国民健康保険には用意されていないことから、任意継続加入することで、これらのサービスを受けることができます。
■任意継続加入制度利用の注意点
任意継続加入制度の利用を選択した場合、その後2年間は他の会社の健康保険に加入するといった理由がない限り脱退できません。途中で国民健康保険料のほうが安いといった理由で国民健康保険へ切り替えることはできません。
任意継続加入制度の手続き
任意継続加入制度を利用する場合、退職日の翌日から20日以内に加入している健康保険組合に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出する必要があります。
また、扶養している家族がいる場合は、扶養している事実が証明できる書類を添付し、「被扶養者届」も併せて提出することで手続きを行うことができます。
ただし、被扶養者となるには収入などの要件を満たしている必要がありますので、条件についても事前に確認し、該当しているかどうかをチェックするようにしましょう。
■任意継続加入後の保険料の支払い
退職するまでの健康保険料については、厚生年金保険料と合わせて給与から天引きされます。しかし、任意継続加入後は加入している健康保険組合から納付書が届きますので、毎月自分で振り込む必要があります。
もし、保険料の振り込みが確認されなかった場合、任意継続加入の資格を失いますので、必ず期限までに振り込むようにしましょう。健康保険組合によっては前納などの制度が用意されていることがありますので、不安な場合はそのような制度を活用することをおすすめします。
任意継続加入期間終了後は?
任意継続加入期間(2年間)が経過した後、働いていない場合は国民健康保険に切り替える必要があります。その際には任意継続加入の資格喪失日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口にて手続きを行います。
■国民健康保険の保険料
国民健康保険の保険料については、「医療分」「介護分」「後期高齢者支援金分」の3つに区分され、それぞれ「所得割」「均等割」「資産割」「平等割」で計算された金額を組み合わせて決まります。また、所得額が一定以下の場合は軽減措置を受けることができます。
まとめ
定年退職後の健康保険制度については、加入していた健康保険組合の任意継続加入制度を利用するか、国民健康保険に切り替えるか、いずれかを選択します。
その際に気をつけていただきたいのは、退職した翌年の国民健康保険料は、前年の所得で計算されることから、任意継続加入制度を利用するよりも高くなりがちです。
2年目は前年が年金収入のみとなるため、所得額が減少し、保険料については任意継続加入制度を利用するよりも負担が少なくなる可能性があります。
しかし、それだけの理由で「2年目から国民健康保険にしよう」と決めるのではなく、定年退職時に、任意継続加入制度を利用する際の保険料と、退職した翌年そして翌々年の国民健康保険の保険料を比較して決めることが大切です。
特に退職月が1月~6月など年の前半に該当する場合は、翌年の任意継続加入制度利用時の保険料を考慮する必要があります。ただ何となくといった理由で任意継続加入制度を利用するのではなく、その保険料を払うメリットがあるかどうかも考えるようにしましょう。
出典
全国健康保険協会 ホームページ
東京都福祉保健局 ホームページ
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員