更新日: 2022.01.26 その他保険
時短勤務の派遣社員は社会保険の加入義務はある? 加入後、次の仕事までに待機期間が発生したらどうなる?
また派遣社員には、前社の派遣期間終了から次の派遣先の勤務開始まで「待機期間」というものが発生することがあります。このような場合、社会保険の取り扱いはどのようになるのでしょうか?
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
時短勤務のパートでも社会保険に加入する範囲は拡大されている!
社会保険に加入する場合の大前提として、正社員の4分の3勤務するという目安があります。つまり、正社員が1日8時間勤務であれば6時間以上、正社員が1ヶ月20日間勤務であれば15日間勤務すると社会保険に加入義務が発生するということです。
ただ、それ以外の時短勤務でも、以下のような4つの要件を満たせば加入義務が発生する適用範囲が拡大されています。
(1) 被保険者(短時間労働者を除く)が500人を超える特定適用事業所に雇用されている
(2) 週の所定労働時間が20時間以上であること
(3) 雇用期間が1年以上見込まれること
(4) 賃金の月額が8万8000円以上であること
この(1)の要件については、「常時500人を超える」が令和4年10月から「常時100人を超える」、さらに令和6年10月からは「常時50人を超える」というように改正されます。このように、社会保険に加入する範囲が徐々に拡大されてきています。
ただ、最初から「2ヶ月間」だけの雇用契約を結んでいるのであれば、加入義務はありません。一方、契約期間を「2ヶ月間」とした契約をしながら、実は2ヶ月間を経過後も継続して雇用されることが見込まれるなら、採用当初から社会保険に加入する義務があります。
社会保険のメリット・デメリットを確認しておこう
時短勤務の派遣社員ということですが、ただでさえ少ない給料から社会保険料が天引きされれば、手取りはさらに減ってしまいます。派遣社員という働き方が自分の求める働き方なのか迷うところかもしれません。
ただ、不安定な働き方だからこそ、ちゃんと社会保険に加入しておくという考え方もあるでしょう。
病気やけがで働けない時に給付される傷病手当金や、産休を取得した時の出産手当金は、社会保険にしかありません。国民健康保険や扶養家族では受け取れない給付です。
傷病手当金は、最大1年6ヶ月分の給付を受け取れますし、出産手当金も産前42日、産後56日の合計98日間の給付を受け取れます。また、厚生年金に加入することで、自分自身の年金を増やすことができます。
時短勤務の方は、雇用保険だけ加入し、社会保険(健康保険と厚生年金)に未加入という状態を当たり前に思っている方もいますが、必ずしも正社員よりも労働時間の少ない時短勤務=社会保険未加入が正しいとは限りません。
民間の生命保険などでリスクに備えるという考え方もあるかもしれませんが、社会保険料は「全額」が社会保険料控除されるのに対して、生命保険料の控除は「最大12万円」。
控除が多くなることで、徴収される税金も少なくなるという点でも、社会保険に加入する大きなメリットは大きいといえるでしょう。
派遣契約は通常の時短勤務と何が違う?
これまでの説明は通常の時短勤務の場合です。派遣労働者の場合、産休の労働者の代替だったり、5年を超えない契約期間を結ぶなど、派遣を受け入れる会社都合により契約期間があらかじめ定まっている場合もあるでしょう。
例えば「1年」のように期間が決められた労働契約を結んでいたとしても、更新を繰り返し、総期間が5年を超えると、期間の定めのない「無期雇用転換の申し出」が可能です(※)。
それを避けるために、会社側が、有期契約の満了前に更新年限や更新回数の上限などを一方的に設ける、もしくは待機期間を設けるなど、「5年」を超えない工夫をしてくることは珍しくありません。
採用当初から考えると5年を超えるから、クーリングオフとしていったん退職してもらい、一定の待機期間を経てから、新たに採用する形をとるのはよくあるケースです。
その場合の社会保険の加入義務ですが、派遣会社がルールを作って加入させるかどうかを明示しているはずです。例えば、「当初から2ヶ月を超える派遣契約を締結している場合には、社会保険に加入する」などのようにです。
会社から指示をされた「待機期間」が、今後の雇用継続を意味するのか、次の派遣先が決まっていない中での単なる登録期間なのか、しっかりと確認して、上記のような規定が明文化されているのかを見ておきましょう。
社会保険加入後の待機期間についても、派遣元で職業訓練をするなど、指示に基づいた拘束時間が決められているのであれば、そのまま加入し続けるというケースもあるでしょう。
出典
(※)厚生労働省 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。