更新日: 2022.04.12 自動車保険
まさか自分が加害者に⁉ 確認しておきたい自賠責保険の補償内容
では、自賠責保険はどうでしょうか? そこで本稿では、自賠責保険の補償、中でも「傷害に対する補償」について考えてみたいと思います。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
傷害に対する補償の限度額
傷害に対する補償とは、交通事故を起こし、被害者にけがを負わせた場合の、被害者に対する補償のことです。その限度額は120万円ですが、120万円までなら何でも補償されるというわけではありません。
まず、補償される対象が決められています。そして、補償される対象ごとに支払い基準が決まっています。では、自賠責保険の傷害に対する補償の対象のうち、いくつかの項目をみていくことにしましょう。
治療費の支払い基準
この120万円の中には、まず、応急手当や診察、入院等の治療費が含まれます。入院については、普通病室への入院に必要かつ妥当な実費とすると定められているので、いわゆる大部屋への入院が補償の原則です。
しかし、傷害の態様などから医師が必要と認めた場合には、差額ベッド代が必要な病室への入院も補償の対象になります。加えて、入院中の諸雑費として、入院1日あたり1100円が補償されます。
また、通院や転院のための交通費も補償の対象です。ちなみに治療のための交通費は、所得税の医療控除にも含まれます。眼鏡やコンタクトレンズも、5万円を上限に補償されます。
交通事故でケガを負い、仕事を休んだら?
自賠責保険の傷害の補償項目には休業損害があります。交通事故の負傷に対する治療のために仕事を休んだ(=休業した)場合にはもちろん、休業にあたり有給休暇を取得したときも、休業損害の対象です。
また、専業主婦(専業主夫)の場合には、休業により収入の減少があったものとみなして、休業損害の対象となります。休業損害の額は、休業1日につき6100円ですが、6100円を超えることが証明できれば、その金額となります(限度があります)。
慰謝料の額は?
労災保険や社会保険等の社会保障制度には、慰謝料という保障項目はありません。慰謝料は、被害者救済を目的する自賠責保険だからこそ、独特の補償項目ですね。
入院期間と通院期間を足した治療期間と、入院期間と実通院日数を足して2倍した日数を比較し、少ない方に1日あたり4300円を加算して、慰謝料の額を計算します。
まとめに代えて
被害者救済を目的とした、自賠責保険の傷害に対する補償対象の支払い基準について、いくつかみてきました。もしかしたら、「思っていたよりも少ない」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
自賠責保険の支払い基準を超えた補償を行う場合には、任意保険で対応するということになります。例えば、前述した自賠責保険での眼鏡の補償は5万円が上限ですが、眼鏡で7万円を補償したいというときは任意保険による補償を検討することになるのです。
自賠責保険の補償の限度額が120万円でも、その限度額までいくらでも補償されるということではありませんのでご注意ください。
出典
国土交通省 自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役