更新日: 2022.05.03 その他保険

意外と知らない労災保険の補償内容! どんな給付金を受け取れるの?

意外と知らない労災保険の補償内容! どんな給付金を受け取れるの?
労災保険(労働者災害補償保険)とは、働く人が業務中に負傷したり、業務中の傷病が原因で障害が残ったりしたときに、給付金を受け取れる制度です。
 
しかし、労災という言葉はよく耳にするけれども、実際にどんな給付があるのか知らないという人が意外と多いのではないでしょうか。今回は、労災保険における5つの補償制度について解説します。
棚田将史

執筆者:棚田将史(たなだ まさふみ)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員1種

労災保険の5つの補償制度

労災保険による補償制度は、主に次の5種類が挙げられます。


・療養(補償)等給付
・休業(補償)等給付
・傷病(補償)等年金
・障害(補償)等給付
・遺族(補償)等給付

※(補償)等の表記は、一般的な業務災害の補償、複数の事業所に勤めている方が適用される複数業務要因災害の補償、通勤中に発生する通勤災害の補償などをまとめて表しています。原因にかかわらず、原則としてそれぞれの補償内容は同じです。
 

療養(補償)等給付

療養(補償)等給付とは、業務上の事由など(業務災害や通勤災害など)で負った傷病に関して療養が必要な場合に、その療養についての給付を受けられる制度です。療養の給付には次のものが当てはまります。


・診察
・薬剤または治療材料の支給
・手術、処置、その他の治療
・居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護
・病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護
・災害現場から医療機関への移送など

指定病院等(労働基準監督署長の指定を受けている医療機関)での療養の場合は、治療や薬剤支給などが無料になる「療養の給付」が適用されます。一方で、指定医療機関等以外で療養する場合に適用されるのは「療養の費用」の支給です。
 
いったんは被保険者が費用を負担し、その後に所轄労働基準監督署長へ請求して現金を受け取ります。
 

休業(補償)等給付

休業(補償)等給付とは、業務上の事由等で負った傷病のせいで仕事ができず、賃金が受け取れない労働者の生活を補償する制度です。
 
継続や断続は問わず、休業日の4日目からが給付の対象になります。給付金額は原則として、給付基礎日額(過去3ヶ月の1日当たりの給与額のイメージ)の60%に相当する額です。休業(補償)等給付は、次の状態になると終了します。


・当該傷病が治ゆ状態(治療してもそれ以上の回復・改善が見込めない状態)になった
・療養開始後1年6ヶ月が経過した
・休業が終了し働けるようになった

 

傷病(補償)等年金

傷病(補償)等年金とは、1年6ヶ月経過した日以後も傷病の治療が終わらない場合に、傷病の等級(傷病の大きさ)に応じて給付を行う制度です。給付金額は図表1のとおりです。
 
図表1

等級 給付金額
第1級 給付基礎日額の313日分
第2級 給付基礎日額の277日分
第3級 給付基礎日額の245日分

※厚生労働省 傷病(補償)等年金についてを基に筆者作成
 
給付は、毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月にそれぞれ前の2ヶ月分が支払われる年金形式になります。傷病等級に該当しなくなった場合は、受給権が消滅します。
 

障害(補償)等給付

障害(補償)等給付とは、業務上の事由等が原因で身体に障害が残った場合に、障害等級に応じて給付を行う制度です。等級が1~7級の場合は年金形式、等級が8~14級の場合は一時金として給付されます。給付金額は、図表2でご確認ください。
 
図表2


出典 厚生労働省 障害(補償)等給付の請求手続
 
複数の障害を負った場合は「併合」、すでに存在した障害が悪化した場合は「加重障害」による調整が行われます。
 

遺族(補償)等給付

遺族(補償)等給付とは、業務上の事由等で労働者が亡くなった場合に、死亡当時に生計を維持されていた労働者の遺族へ給付を行う制度です。遺族(補償)等年金は、該当する遺族の数に応じて、図表3の金額が年金形式で給付されます。
 
図表3


※出典 厚生労働省 遺族(補償)等年金
 
給付は、遺族のうち、受給順位が高い人からとなります。順位および支給制限(厚生労働省令で定める障害の状態にある場合は制限なし)は図表4のとおりです。
 
図表4

順位 死亡した労働者との続柄 支給制限
1位 配偶者 妻は制限なし、夫は60歳以上から
2位 18歳に達する日以後の最初の3月31日まで
3位 父母 60歳以上から
4位 18歳に達する日以後の最初の3月31日まで
5位 祖父母 60歳以上から
6位 兄弟姉妹 18歳に達する日以後の最初の3月31日
まで、または60歳以上から

※厚生労働省 遺族(補償)等給付 葬祭料等(葬祭給付)の請求手続を基に筆者作成
 
55歳以上60歳未満の夫、父母、祖父母、兄弟姉妹は、60歳になるまで支給が停止される若年停止の対象になります。
 
また、労働者の死亡時に受給権を持つ遺族がいないときは、代わりに遺族(補償)等一時金が支給される可能性があります。年金のほかにも、葬祭に関する費用を給付する「葬祭料等(葬祭給付)」の請求が可能です。
 

いざというときには労災保険の補償制度を利用しよう

今回紹介した以外にも、二次健康診断等給付や介護(補償)等給付、特別支給金による上乗せ支給もあります。いざというときには手厚い補償があると覚えておけば、より安心して仕事に励めるでしょう。
 

出典

厚生労働省 労災補償
厚生労働省 労災保険給付等一覧
公益財団法人 労災保険情報センター 労災給付の内容
e-Gov法令検索 労働者災害補償保険法
 
執筆者:棚田将史
2級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員1種

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