雇用保険ではどのような手当が受けられる? 内容を知って有効に利用しよう

配信日: 2022.06.01

この記事は約 6 分で読めます。
雇用保険ではどのような手当が受けられる? 内容を知って有効に利用しよう
雇用保険は労働者を雇用する事業に対して、原則として強制的に適用される保険です。雇用保険に加入していることにより、さまざまな給付を受けることができます。
 
雇用保険で受けられる給付の内容を知り、必要となった際には有効に活用するようにしましょう。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

雇用保険とは

雇用保険とは、政府が管掌する強制保険制度で、原則として労働者を雇用する事業主に対して適用されます。保険料率(※1)は事業の種類によって異なり、また労働者そして事業主の負担分については、表1のとおりとなっています。
 
【表1】


 
また、この保険料率は2022年10月1日より、表2のとおり変更となる点に注意が必要です。
 
【表2】

(出典:ハローワーク インターネットサービス 雇用保険制度の概要(※2))
 

雇用保険によって受けられる給付とは

雇用保険で受けられる給付については、以下のものがあります。
 

■育児休業給付

雇用保険の被保険者で、1歳に満たない子ども(要件を満たす場合は1歳2ヶ月もしくは、1歳6ヶ月、2歳)を育てるために育児休業を取得し、その育児休業中の賃金が育児休業開始時の賃金に比べて80%未満に減少したなど、一定の要件を満たした場合に支給されるものです。
 
給付を受けるためにはハローワークへの申請が必要で、支給額については、以下のとおりとなっています。
 

1.休業期間中、賃金の支払いがない場合

・支給単位期間が1ヶ月ある場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×50%

・最後の支給単位期間の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×50%

 
支給日数については、休業終了日を含まない支給単位期間の場合は30日、含む場合は暦日数となります。また。給付率については、育児休業開始後通算180日に達するまでは67%が適用されます。
 

2.休業期間中、賃金の支払いがある場合

・支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の30%以下の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×50%

・支払われた賃金が休業開始時賃金月額の30%超~80%未満の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金との差額

 
支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%以上の場合には支給されません。また、休業開始前の賃金月額には上限および下限額が設けられています。
 
(出典:厚生労働省 第11章 育児休業給付について(※3))
 

■介護休業給付

配偶者や父母、子どもなどの家族を介護するために介護休業を取得した場合で、介護休業中の賃金が休業前と比べて80%未満に減少した場合に支給されます。
 
また、要件を満たすことにより、同じ介護について93日を限度に3回までの分割取得ができるようになりました。こちらも、支給を受けるためにはハローワークへの申請が必要で、支給額については以下のとおりです。
 

1.休業期間中、賃金の支払いがない場合

・支給単位期間が1ヶ月ある場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%>
・最後の支給単位期間の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%

 
支給日数については、休業終了日を含まない支給単位期間の場合は30日、含む場合は暦日数となります。
 

2.休業期間中、賃金の支払いがある場合

・支払われた賃金が休業開始時の賃金月額の13%以下の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%

・支払われた賃金が休業開始時賃金月額の13%超~80%未満の場合:休業開始時の賃金日額×支給日数の80%相当額と賃金との差額

 
支払われた賃金が、休業開始時賃金月額の80%以上の場合には支給されません。また、育児休業給付と同様に、休業開始前の賃金月額には上限および下限額が設けられているほか、支給額についても上限が設定されています。
 
(出典:厚生労働省 第12章 介護休業給付について(※4))
 

■一般教育訓練給付

雇用保険の被保険者(離職者も含む)が、厚生労働大臣の指定する一般の教育訓練を受講し、それを修了した場合に、本人が支払った受講料の一定割合相当額が支給されます。また、特定一般教育訓練を受けた場合も対象です。支給額は以下のとおりです。


・一般の教育訓練:本人が支払った受講料の20%相当額
・特定一般教育訓練:本人が支払った受講料の40%相当額

いずれもの支給額についても、上限額および下限額が設定されています。
 
(出典:厚生労働省 一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続きについて(※5)、厚生労働省 特定一般教育訓練の「教育訓練給付金」に関する支給申請手続きのご案内(※6))
 

■専門実践教育訓練給付

雇用保険の被保険者(離職者も含む)が、厚生労働大臣の指定する専門実践教育訓練を受講し、修了した場合に、本人が支払う受講料の一定割合相当額が支給されます。支給額は以下のとおりです。


・訓練受講中:本人が支払った受講料や経費の50%
・訓練終了後:本人の支払った受講料や経費の20%

ただし、修了後の支給については、資格を取得し、かつ訓練を修了した日の翌日から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合に支給されます。
 

■高齢者雇用継続給付

「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」が用意されており、雇用保険の被保険者だった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の人が、原則として60歳以降の賃金が60歳時点と比べ75%以下に減少した状態で働き続ける際に支給されます。
 
支給額は、賃金の減少割合に応じた支給率を乗じて計算します。
 
(出典:ハローワーク インターネットサービス 雇用継続給付(※7))
 

マルチジョブホルダー制度って?

雇用保険において2022年1月1日より新設されたもので、複数の事務所に勤務する65歳以上の労働者が、そのうちの2つの事業所における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であり、かつ、2つの事業所それぞれの雇用見込み日数が31日以上ある場合に雇用保険の保険者になれる制度です。
 
通常の雇用保険加入手続きは事業主が行いますが、このマルチジョブホルダー制度においては、本人がハローワークに申請し、手続きを行う必要があります。この制度により、被保険者となった後に失業した場合に、一定の要件を満たせば高年齢求職者給付金を受給できます。
 
(出典:厚生労働省 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します 2022年1月1日スタート(※8))
 

まとめ

雇用保険制度により、休業や失業、さらに資格取得などの勉強の際にさまざまな給付を受けることができます。各給付に共通していることは、ハローワークへの申請が必要ということです。
 
ハローワークへの申請の際には、会社が発行する書類が必要なことや、それぞれの給付によって支給要件が異なるため、申請前に要件や必要書類を必ず確認しておくようにしましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 令和4年度雇用保険料率のご案内
(※2)ハローワーク インターネットサービス 雇用保険制度の概要
(※3)厚生労働省 第11章 育児休業給付について
(※4)厚生労働省 第12章 介護休業給付について
(※5)厚生労働省 一般教育訓練の教育訓練給付金の支給申請手続きについて
(※6)厚生労働省 特定一般教育訓練の「教育訓練給付金」に関する支給申請手続きのご案内
(※7)ハローワーク インターネットサービス 雇用継続給付
(※8)厚生労働省 「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します 2022年1月1日スタート
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

PR
FF_お金にまつわる悩み・疑問 ライターさん募集