更新日: 2022.06.01 その他保険

失業給付を受けるためにはどうすればいい?【雇用保険制度をおトクに利用して働く‐前編】

執筆者 : 當舎緑

失業給付を受けるためにはどうすればいい?【雇用保険制度をおトクに利用して働く‐前編】
3年ぶりに制限がないゴールデンウイークとなりましたが、連休が明けてみると、新年度にはあったやる気が下がってしまったという方もいるでしょう。チラっと「仕事を辞めたい」という気持ちが芽生えた方もいるかもしれません。
 
ただ、辞めるにはまだ早い! ということで、今回は働く方が加入している「雇用保険制度」を2回にわたってご紹介します。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

新しいことを始めるときに知っておきたい雇用保険制度とは?

雇用保険は、「失業したときにお金がもらえる制度」としての役割として有名だと思いますが、そのほかにも、60歳以降に給料が75%未満に減額したときの補てんである高年齢雇用継続給付、育児休業を取得した場合の育児休業給付、再就職した場合の就職促進給付、そして教育訓練給付など、働いている場合に直面するさまざまな事態に備えた給付が盛りだくさんです。
 
ただし、それぞれ給付のための条件が厳しく定められています。例えば、失業が「働く意思と能力を有し、求職活動を行っている」という状態を示していることからも、不正を行えば2倍返しの返還義務がある厳しい制度でもあります。
 
週20時間・31日以上の雇用見込みという加入要件から考えると、加入しやすい制度といえるでしょう。
 
ただ、2022年1月から新設された、複数の事業所で勤務した場合の「マルチジョブホルダー制度(※1)」は、65歳以上の方が自分で手続きをしなければいけないことなど、まだ解決すべき課題が多いことから、加入が広まるまで時間はかかるのではないかと推察されます。
 

雇用保険のキホンの基本。失業したときの給付を受け取るには?

前段のように、雇用保険には加入するときの条件はありますが、加入していたからといって、すぐに給付などを受け取れるわけではありません。退職したときには、原則として被保険者期間が12ヶ月以上必要です。
 
ただし、倒産・解雇等の理由により離職した場合、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと、そのほかやむを得ない理由により離職した場合には、本来必要な12ヶ月は、通算して6ヶ月と読み替えられます。
 
次に、給付の対象となる「失業」には定義があります。
 
もともと、転職先が決まっていたり、雇用の予約があったりする場合は除外されます。さらに、単に「職のない」状態ではなく、積極的に就職しようとする意思があることや、いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があることなどいくつかの条件もあります。
 
つまり、結婚後や出産後は専業主婦になるよう予定していたり、再就職する気がなかったり、体調が悪く療養するための期間は、「求職している」とみなされないことから、給付の対象外となります。
 

基本手当を受け取る複雑な仕組みとは?

新型コロナ禍以降は、失業したときの給付である基本手当は複雑化しています。基本手当は退職したときだけではなく、勤務先が休業になった場合にも対象となりました。さらに、倒産や解雇、再就職することが困難な方には「個別延長給付」として、個別に60日給付日数が延長されることもありました。
 
そして、これは令和4年5月1日以降に取り扱いとなりましたが、シフト勤務などの労働者が、おおむね1ヶ月に20時間未満になって離職したときに「特定理由離職者」として、基本手当が受給できることとなりました。
 
特定理由離職者となることで給付制限がなくなり、図表1~3のように、普通の労働者よりも給付日数も多くなります。
 
【図表1. 特定受給資格者および一部の特定理由離職者(3. 就職困難者を除く)】

図表1

 
【図表2. 1および3以外の離職者】
図表2

 
【図表3. 就職困難者】
図表3

 
(出典:厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当の所定給付日数:※2)
 
求職期間中に再就職し、基本手当の所定給付日数に3分の1以上の残日数があった場合の「再就職手当」についても触れておきます。
 
最近、副業解禁や週休3日制など、企業はさまざまな労働者の雇用形態を認めるようになってきています。副業をしながら起業をするという選択肢も今後増えてくる可能性があります。失業の「基本手当」としては受け取れませんが、事業主となって、雇用保険の被保険者を雇用する場合など、原則もあれば例外もあります。
 
図表4は、離職票と一緒に配布されるリーフレットの抜粋です。
 
【図表4】
図表4

 
(出典:厚生労働省 離職されたみなさまへ:※3)
 
このような条件の方は、原則として「基本手当」は支給されないのですが、リーフレットなどには「支給されることもありますのでハローワークに相談ください」ということが書かれています。
 
今はウェブなどでさまざまな情報が入手できますが、個別の事情によって、実際に確認しないと分からないこともあるでしょう。「無理だろうな」と思うことでも、ぜひ自分の目と耳で確認しておきましょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 【重要】雇用保険マルチジョブホルダー制度について ~令和4年1月1日から65歳以上の労働者を対象に「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設します~
(※2)厚生労働省 ハローワーク インターネットサービス 基本手当の所定給付日数
(※3)厚生労働省 離職されたみなさまへ
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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