更新日: 2022.06.01 その他保険

教育訓練を受けてキャリアアップを目指そう!【雇用保険制度をおトクに利用して働く‐後編】

執筆者 : 當舎緑

教育訓練を受けてキャリアアップを目指そう!【雇用保険制度をおトクに利用して働く‐後編】
前編では、雇用保険制度の失業給付の受給について説明しましたが、後編では、教育訓練について説明します。
 
2022年10月に雇用保険料は値上げされます。社会保険料の負担に比べればまだまだ負担は少ないといえますが、せっかくですので、雇用保険料を支払った分はしっかりと活用したいものです。
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

教育訓練って何のこと?

教育訓練給付制度とは、働く人たちの能力開発・キャリア形成を支援するとともに、安定した雇用と就職を促進するために、厚生労働大臣が指定した教育訓練を終えたときに受講費用の一部が支給されるものです

上記は、厚生労働省のホームページ(※1)から抜粋した言葉です。
 
ここでポイントとなるのは、「厚生労働大臣が指定する教育訓練」に対して援助されるという点です。個々人で勝手に申し込んで、どんな勉強でも援助されるわけではありません。厚生労働省のホームページで「指定されている」教育訓練を受けて、修了することが大切なのです。
 
単に「申し込んだ」ことが条件でなく、最後まで「修了する」というのも大切な要件の1つです。訓練の流れとしては、図表1のようになります。
 
【図表1】

図表1

 
(出典:厚生労働省 教育訓練給付制度:※1)
 

「一般」か「専門」か? 真剣に考えたい

雇用保険から給付される対象となる教育訓練には、そのレベル等に応じて、「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類があります。ここでは、「専門」と「一般」の2つを説明します。
 
まず、「専門実践教育訓練」です。
 
その名のとおり、教育訓練の期間が比較的長期です。資格取得を主目的とし、実践的な再就職を目指すため、給付額も、受講費用の50%(年間上限40万円)です。資格取得等をし、かつ訓練修了後1年以内に雇用された場合は、追加で受講費用の20%(年間上限16万円)が支給されます。
 
なお、失業状態にある方が、初めて専門実践教育訓練を受講する場合、別途、雇用保険の基本手当の80%相当額となる教育訓練支援給付金が支給されることもあります。この場合、すでに給付された教育訓練経費の50%と追加給付20%を合わせた70%に相当する額が支給されます。
 
次に、「一般」です。
 
「専門」と同様に、厚生労働省から指定を受けている講座の中から、雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練が対象です。訓練修了後に受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
 
このように、「一般」か「専門」かということで、レベルも給付額も異なります。ただ、せっかく雇用保険に加入しているのであれば、支給要件期間の3年勤務をし続けて雇用保険制度を利用して勉強し、キャリアアップを目指してもよいのではないでしょうか。
 
ちなみに、参考までにどのような資格が取得できるのか、図表2ご紹介しておきましょう。
 
【図表2】

図表2

 
(出典:厚生労働省 教育訓練給付制度:※1)
 

再就職、転職、スキルアップを目指す皆さまへ!

「求職者支援制度」はハローワークで案内されています。雇用保険制度の給付ではありませんが、この制度は、「月10万円の給付」「無料の職業訓練」と「就職のサポート」の3本立てとなっており、令和5年3月末までの特例として、転職せずに働きながらスキルアップを目指す方も対象としているのが特徴的です。
 
親や配偶者と同居していることで給付金が支給されない方も、無料の訓練のみ受講できますし、フリーランスや自営業で雇用保険制度の対象外だった方、パートなど在職中でも正社員への転職を目指す方など、雇用保険制度でカバーできない範囲の方を広く対象とされています。
 
主な訓練期間は2ヶ月から6ヶ月程度ですが、ITや介護、医療事務などさまざまな求職者のための支援訓練が予定されています(※2)。
 
筆者は、社会保険労務士として社員の採用手続きなどのために履歴書などを拝見することがよくあるのですが、今の時代に1つの会社に終身勤めるということはあまりありません。自分に納得のいく転職を可能とし、給料を維持、もしくはアップしたいのであれば、何らかのスキルを持っておくことは、将来きっと役立つことでしょう。
 
以下、3種の教育訓練について簡単にまとめました。参考にしてください。

<専門実践教育訓練>

特に労働者の中期・長期的なキャリア形成に役立てる教育訓練が対象です。
受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6ヶ月ごとに支給されます。

<特定一般教育訓練>

特に労働者の速やかな再就職および早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となります。
受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。

<一般教育訓練>

そのほかの雇用の安定・就職の促進に役立てる教育訓練が対象です。
訓練修了後に受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。

 

出典

(※1)厚生労働省 教育訓練給付制度
(※2)厚生労働省 求職者支援制度のご案内
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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