2022年10月から「雇用保険料」の負担が増える! 月給30万なら「900円→1500円」で600円の増!?
配信日: 2022.06.21
保険料は給料から天引きされるため、気づかないうちに負担が大きくなり家計を圧迫しているということのないよう、制度改正についてよく理解しておくことが大切です。
本記事では、雇用保険の基本的な制度概要や、2022年の法改正で労働者の負担がどれくらい変わるのかについて解説します。
執筆者:勝川みゆき(かつかわ みゆき)
ファイナンシャルプランナー2級・AFP
雇用保険制度の概要
雇用保険は、適用要件を満たす人が全員加入する強制保険の1つです。従業員を1人でも雇っている事業者は、業種や規模を問わず雇用保険が適用されます(農林水産業の一部事業を除く)。
雇用される労働者(高校および大学等に通う昼間学生を除く)は雇用形態に関わらず、31日以上雇用される見込みがあり、かつ1週間の所定労働時間が20時間を超える場合、雇用保険に加入することになります。
雇用保険の保険料は、事業主と労働者のそれぞれが、国によって定められた保険料率を負担します。雇用保険の財源は、事業主負担の保険料と労働者負担の保険料、そして国費から成り立っています。
雇用保険によって受けることができる支援には、失業等給付(求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付など)や育児休業給付、雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)があります。
このうち失業給付と育児休業給付は、事業主と労働者が支払う保険料と国庫負担で支えられています。雇用保険二事業は、事業主の負担で成り立っています。
労働者の負担増は10月から
制度見直しの背景には新型コロナウイルスの感染拡大の影響があります。雇用環境の悪化などにより雇用保険の支出が増大し、財政が悪化したためです。
雇用保険料率の変更
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が2022年3月30日に国会で成立しました。2022年4月から、雇用保険二事業に対する事業主負担分の保険料率が引き上げられています。
そして同年10月からは、失業等給付や育児休業給付に対する保険料率が、労働者の負担分、事業主の負担分ともに引き上げられます。つまり、雇用される労働者の負担が増えるのは、10月からになります。
どれくらい変わるのか
それでは、労働者の負担する金額は保険料率の引き上げ前後でどの程度変わるのでしょうか。一般の事業の保険料率は9月まで0.3%でしたが、10月からは0.5%となります。農林水産・清酒製造の事業および建設の事業では0.4%から0.6%に引き上げられます。
雇用保険の保険料は、「賃金の総額(控除前の金額)×雇用保険料率」で求めることができます。この際、賃金総額には、通勤手当、家族手当、残業手当、休業手当、住宅手当などが含まれます。
例えば一般の事業で考えますと、賃金の総額(月額)が15万円の人は、2022年9月までは450円ですが、10月からは750円を納めることになります。賃金総額30万円の人は、2022年9月までは900円ですが、10月からは1500円になります。
賃金総額が50万円の人なら、2022年9月までは1500円ですが、10月からは2500円と、負担が1000円増えることになります。年換算ではさらに大きな額となります。(※実際の負担額は状況に応じて変わります)
さらに、賞与を受け取っている労働者の場合は、賞与からも雇用保険料が引かれることにも注意しましょう。
保険料の使い道にも注目を
「新型コロナウイルス感染拡大の影響であれば料率改訂は仕方がない」という考え方もあります。ただ、強制保険である雇用保険での保険料率引き上げは労働者にとって逃げ道のない家計の圧迫に直結するため、納得できないと感じる人もいるかもしれません。
雇用保険制度は失業した時や、ケガや病気、育児、介護などで働き続けることができなくなった場合などに、私たちを助けてくれる大切なセーフティーネットです。
負担している保険料がどの程度かを把握するとともに、保険料の使い道を含めた雇用保険の仕組み自体についても理解を深め、いざという時に役立てられるようにしましょう。
出典
厚生労働省 令和4年度雇用保険料率のご案内
日本労働組合連合会 わたしたちの雇用保険制度を守ろう!
執筆者:勝川みゆき
ファイナンシャルプランナー2級・AFP