「業務上の事故を補償する保険」にはどんなものがあるの? それぞれの特徴を解説
配信日: 2022.07.05
業務上の事故には、従業員が巻き込まれるケースと、第三者が巻き込まれるケースがあり、会社の事業が負っているリスクに応じて加入する保険を選ぶことが大切です。本記事では、業務上で起きた事故を補償する保険の種類とそれぞれポイントについて解説します。
執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)
二級ファイナンシャルプランニング技能士
会社の従業員の事故を補償する保険
従業員がいる会社には、強制加入の労働者災害補償保険があるため、業務上で起きた事故や通勤途上の事故などは補償されます。しかし、業務上で起きた事故で、病気やけががひどく後遺症を負うような事態になった場合、従業員の家族から損害賠償請求を受ける可能性があります。
損害賠償請求を受けた場合、強制加入の労働者災害補償保険では対応できません。業務上で起きた事故を補償する以下のような損害保険に別途、加入することで、万が一の事態に備えることができます。
労働災害総合保険
労働災害総合保険は、強制加入の労働者災害補償保険の給付対象者であることを前提に、給付対象になる労働災害が起きたとき、上乗せした補償や、損害賠償金の負担による損害を補償します。
「損害賠償金の負担」とは、従業員の家族から会社に対して損害賠償を請求されたときに会社が支払う損害賠償金の負担額を保険会社が補償することをいいます。
業務災害補償保険
業務災害補償保険は、強制加入の労働災害補償保険の認定とは別に保険金が支払われる保険です。「死亡補償保険金」や「後遺障害補償保険金」「入院補償保険金」などが基本補償として対応しており、特約として、従業員の管理責任を遺族から問われた場合の「使用者賠償責任補償」を付けることもできます。
第三者に事故を起こした場合に補償する保険
業務上の事故によって第三者が巻き込まれた場合、会社が賠償責任を負うことがあります。業種によって賠償リスクが発生するものとしないものがあるため、賠償リスクを補償する保険を紹介します。
施設賠償責任保険
施設賠償責任保険は、会社で保有している事業用施設や建物の不備などによって第三者をけがさせてしまった場合や、他人の物に損害を与えてしまった場合に補償される保険です。
補償内容としては、法律上の損害賠償金や賠償責任に関する裁判などの費用、事故発生時の応急手当の費用などがあります。
請負業者賠償責任保険
請負業者賠償責任保険は、建設工事中に第三者にけがをさせたり、他人の物に損害を与えたりした場合に補償される保険です。
もし建設工事中に事故が起こった場合、軽微なけがで済まないこともあるため、工事業者や建設業者などは加入しておく必要性が高いといえます。
対象となる主な工事は、道路建設工事や舗装工事、ビル建設工事、解体工事などです。
生産物賠償責任保険
生産物賠償責任保険は、通称「PL保険」と呼ばれ、製造や販売された物に欠陥があったことで第三者に損害を与えた場合に補償される保険です。主に製造業や食品販売や加工する業者が対象となります。
補償内容は、法律上の損害賠償や生産物の使用不能によって生じた費用などです。ただし、起きた事故について会社側の重大な過失があった場合、補償されないことがあるため注意が必要です。
業務上に起きるリスクに備える
ここまでご紹介したように、業務で生じるリスクには、従業員が巻き込まれる事故と、第三者が巻き込まれる事故があり、事業によってさまざまなリスクを負うことになります。
会社の従業員の事故を補償するものとして、国の労働者災害補償保険に加入していることを前提に、「労働災害総合保険」、「業務災害補償保険」などがあります。
第三者が巻き込まれる事故を起こした場合に補償する保険として、「施設賠償責任保険」や「請負業者賠償責任保険」、「生産物賠償責任保険」などがあり、その他にも個人情報の漏えいに対するリスクを補償する保険などもあります。
会社によって加入するべき損害保険は異なり、優先順位の考え方も異なります。会社が手掛ける事業が負っているリスクについてしっかり把握した上で、最適な損害保険を準備するよう心がけましょう。
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士