【がん保険加入者必見!】4月に先進医療から除外された「重粒子線治療」を解説

配信日: 2022.07.10

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【がん保険加入者必見!】4月に先進医療から除外された「重粒子線治療」を解説
がん保険の世界で最近、注目を集めるできごとがありました。放射線治療の1つで、がんの治療効果が高いとされる重粒子線治療の一部が、患者の負担が大きい「先進医療」の区分から除外されたのです。
 
本記事では、2022年4月から新たに全額保険適用の対象となった重粒子線治療について解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

重粒子線治療とは

放射線治療では、エックス線を使ってがん細胞を照射する治療が一般的です。重粒子線治療では、エックス線より重い「炭素粒子」を使ってがん細胞を照射します。
 
図表1


出典:群馬大学 重粒子線医学研究センター がん治療における重粒子線
 
ひとくちに重粒子線治療と言っても、その具体的な治療方法は身体のどの部分をターゲットとするかによって異なります。ただ、さまざまな種類の重粒子線治療に共通しているメリットが3つあります。


・周辺の細胞は傷つけず副作用が少ない
・エックス線の2倍から3倍の治療効果が見込める
・治療期間が短い

放射線治療は6~8週間、30~40回ほどにわたる治療が一般的です。しかし、重粒子線治療は4週間16回を目安に治療が終わります。
 
患者の身体的負担が少なく、がん治療に高い効果が期待できる重粒子線治療は、2003年に保険適用の治療と併用できる「先進医療」として承認を受けました。ただ、1回の診療で300万円ほど費用が必要となることから、経済的なハードルの高さが普及のネックとなっていました。
 

2022年4月から一部が保険適用となる

2022年4月から、一部の重粒子線治療が先進医療から外れ、保険診療の対象となります。今回の改定で、保険適用となった対象は図表2にある通りです。
 
図表2

疾患 照射時間の目安
2016年 骨・軟部肉腫(手術困難) 4週間
2018年 頭頸部がん(鼻・副鼻腔等) 4週間
2018年 頭頸部がん(涙腺がん) 3週間
2018年 前立腺がん 3週間
2018年 眼腫瘍(悪性黒色腫) 1週間
2022年 膵臓がん 3週間
2022年 大型の肝臓がん 2日~3週間
2022年 肝内胆管がん 2日~3週間
2022年 大腸がん(術後再発) 4週間
2022年 子宮頸がん 5週間

出典:国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 QST病院より筆者が作成
 
保険適用となり、治療費の全額負担の必要はなくなりました。たくさんの人が重粒子線治療を受けられる環境が整いつつあると言えるでしょう。一方、現在も先進医療として認可されている、つまり全額保険適用とならない重粒子線治療もあります。


・肺 縦隔腫瘍肝胆膵腫瘍
・乳腺・婦人科腫瘍または転移性腫瘍(いずれも根治的な治療法が可能なものに限る)
・消化管腫瘍
・泌尿器腫瘍
・肝細胞がん
・非小細胞肺がん
・直腸がん

これらの疾患を治療する目的で重粒子線治療を行う場合、全額保険適用の対象とならないので注意しましょう。
 

がん保険にはどのように影響したのか?

重粒子線治療の先進医療除外は、先進医療特約のついた保険商品に影響することにも注意が必要です。一般的に先進医療特約は、治療を受けた時点で先進医療から外れている治療については支払いの対象になりません。
 
したがって、保険に加入した時点で支払い対象だった重粒子線治療も、保険適用の対象となるかわりに、支払い対象から除外される場合があります。
 

定期的に加入している契約内容は確認しておきましょう

重粒子線治療の先進医療除外、そして保険金支払いにもたらす影響について紹介しました。
 
このように、既に加入している保険商品であっても支払い対象が変更になる場合があるため、医療技術の進歩に伴う国の制度変更についてもしっかり把握しておきましょう。
 

出典

群馬大学 重粒子線医学研究センター がん治療における重粒子線
原子力産業新聞 重粒子線 がん治療最前線
一般社団法人 粒子線治療推進研究会 重粒子線治療の歴史
大阪重粒子線センター 治療費について
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 QST病院 重粒子線治療とは
住友生命 お知らせ一覧
第一生命 「先進医療」に関するお知らせ
厚生労働省 先進医療の核技術の概要
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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