不妊治療にも適用されることになった先進医療とは?
配信日: 2022.09.26
今年の4月から不妊治療に健康保険が適用されることになりましたが、先進医療保険との併用になっている場合もあるのです。今回は先進医療と先進医療保険について学んでみましょう。
ファイナンシャルプランナー CFP
家電メーカーに37年間勤務後、MBA・CFPファイナンシャルプランナー・福祉住環境コーディネーター等の資格を取得。大阪府立職業訓練校で非常勤講師(2018/3まで)、2014年ウエダFPオフィスを設立し、事業継続中。NPO法人の事務局長として介護施設でのボランティア活動のコーディネートを担当。日本FP協会兵庫支部幹事として活動中。
先進医療とは
先進医療とは、「厚生労働大臣が認めた高度な医療技術を用いた療養等のうち、保険給付の対象とすべきかどうか検討中の療養」とされています(※1)。
実際には2022年8月現在で82種類(※2)ありますが、比較的よく知られている医療技術としては、「重粒子線治療」「陽子線治療」などがあります。さらに、2022年4月から「不妊治療」の一部が該当することになりました。
先進医療については、健康保険は適用されませんので、がん治療の「重粒子線治療」などは治療費負担が約300万円となっています。このような高額の患者負担の軽減を目指すことが、先進医療保険ができた背景と思われます。
一般的に、先進医療は高額な医療費と思われがちですが、すべてが300万円程度の高額なのではなく、少額の治療も多くあり、判断は指定された医療機関に委ねられますが、適用された例について見てみましょう。
表は厚生労働省作成の2021年度実績表(※3)に基づき筆者が作成
この表では先進医療A(他にBあり)だけで、昨年度は4918件、1件当たり118.8万円となっています。これは2021年度の実績ですが、今年度については、不妊治療の一部が先進医療に指定されており、適用されるケースが増えるのではと思われます。
先進医療の保険と患者の負担のイメージ
保険診療を含めた先進医療の負担のイメージを図示すると以下のようになります。
表は筆者が作成
先進医療と保険診療の併用は、上図のように、指定された先進医療に限って保険との併用が認められています。
先進医療以外の治療を含めて治療する場合は自由診療となり、保険適用はされなくなります。この場合は、先進医療保険に加入していれば、先進医療分については保険適用になります。
不妊治療の保険適用について
2022年4月から、長年の課題であった対外受精などの不妊症の基本治療がすべて保険診療になりましたが、さらに不妊治療の一部について先進医療に指定されました。
従来は、自治体の不妊治療への助成金によって対応されていましたが、正式に保険治療が認められることになりました。さらに先進医療に指定された治療項目は、基本治療で及ばない不妊で困っている人への対応を強化したものと言えるでしょう。
先進医療はがん治療の際に適用されることが多いのは事実ですが、不妊治療を含めたその他の治療にも適用されます。このような先進医療の一端を知った上で、先進医療保険への加入を検討してみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
先進医療イコールがん治療と思われがちですが、今年度から見直された適用範囲と保険診療との併用や自由診療について見てみました。先進医療は、思ったよりも少額の医療にも適用されており、適用の判断は病院・医師になりますが、先進医療保険の加入と合わせて、知っておくべき情報とも言えるでしょう。
出典
(※1)厚生労働省 先進医療の概要について
(※2)厚生労働省 先進医療の各技術の概要
(※3)厚生労働省 【先進医療A】令和3年6月30日時点における先進医療に係る費用
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP