高額医療費の「自己負担額の上限」は年齢や所得によって違う!?「限度額適用認定証」とは?
配信日: 2022.12.24
しかし、手術や入院など高額の医療費がかかる場合は3割でも金額が大きくなり、負担を感じる人がいるでしょう。そのため、高額の医療費がかかったときに自己負担を抑える制度があります。
今回は、高額療養費制度について紹介します。
執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。
親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、病院などの医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1ヶ月での上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度です。上限額は、年齢や所得に応じて決められています。
対象となるのは保険適用される診療の自己負担額で、医療にかからない場合でも必要となる「食費」、「居住費」、希望してサービスを受ける「差額ベッド代」、「先進医療にかかる費用」などは対象となりません。
高額療養費の支給を受けるには、加入している公的医療保険に申請をする必要があり、一般的に支給まで3ヶ月程度を要します。なお、加入先によっては自動で高額療養費の支給をする場合があります。
高額療養費は申請後に支給されるので、原則として、窓口で決まった割合の自己負担額をいったん支払わなければならない点に注意しましょう。
自己負担の上限額は年齢や所得により異なる
高額療養費制度では、年齢や所得に応じて自己負担の上限額が決められています。
自己負担額は条件を満たす場合、1つの医療機関だけでなく、同じ月の別の医療機関での自己負担額と合算できます。
また、1人では上限額を超えない場合でも、同じ世帯にいる他の人(ただし、同じ公的医療保険に加入している場合に限る)の分も合算できる「世帯合算」を適用できます。
そのほかにも過去12ヶ月に3回以上、上限額に達した場合、4回目以降は「多数回該当」として上限額が引き下げられるなど、高額療養費制度には医療費の自己負担が抑えられる複数の仕組みがあります。
69歳以下の自己負担上限額
所得に応じた69歳以下の1ヶ月の自己負担上限額、および計算方法は次のようになっており、この上限額を超えた分が高額療養費として支給されます。
・年収約1160万円~:25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%(多数回該当:14万100円)
・年収約770万円~約1160万円:16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%(多数回該当:9万3000円)
・年収約370万円~約770万円:8万100円+(医療費-26万7000円)×1%(多数回該当:4万4400円)
・年収約370万円まで:5万7600円(多数回該当:4万4400円)
・住民税非課税者:3万5400円(多数回該当:2万4600円)
なお、異なる医療機関の自己負担を合算できるのは、1ヶ月の自己負担額が2万1000円以上のものに限られます。
70歳以上の自己負担上限額
70歳以上の自己負担上限額、および計算方法は次のとおりですが、所得によっては外来(個人ごと)の上限が別途設けられています。また、69歳以下と違って異なる医療機関での合算に当たって最低額はありません。
・年収約1160万円~:25万2600円+(医療費-84万2000円)×1%(多数回該当:14万100円)
・年収約770万円~約1160万円:16万7400円+(医療費-55万8000円)×1%(多数回該当:9万3000円)
・年収約370万円~約770万円:8万100円+(医療費-26万7000円)×1%(多数回該当:4万4400円)
・年収156万円~約370万円:5万7600円(多数回該当:4万4400円)、外来1万8000円(年間上限14万4000円)
・住民税非課税世帯:2万4600円、外来8000円
・住民税非課税世帯(年金収入80万円以下など):1万5000円、外来8000円
なお、70歳以上の住民税非課税世帯は、多数回該当の適用がありません。
窓口での負担を抑える限度額適用認定証
高額療養費制度により、医療費の自己負担上限額を超えた分が後日支給されますが、いったん窓口で負担する金額が多くなる場合もあります。
こうしたケースでは限度額適用認定証を利用すると、窓口での支払いが1ヶ月の自己負担上限額までになりますので、後から支給を受けるという手間を省けます。あらかじめ医療費が多くかかることが予想される場合に利用するといいでしょう。
利用に当たっては、加入している公的医療保険に申請を行い、交付された限度額適用認定証を受診する医療機関などの窓口で提示します。なお、限度額適用認定証には有効期限が設定されているので、利用時に確認しましょう。
まとめ
高額療養費は医療費の自己負担を抑えるための制度で、年齢や所得に応じて自己負担の上限額が決められています。支給を受けるためには申請が必要ですので、窓口での負担額が多くなった場合は忘れずに申請しましょう。
また、手術や入院などで医療費が多くなることが見込まれる場合は、限度額適用認定証の交付を受けると窓口負担についても上限額までに抑えられるため、制度の内容を知っておくといいでしょう。
出典
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)
厚生労働省 医療費の一部負担(自己負担)割合について
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員