更新日: 2019.01.10 その他保険

私に万が一のことがあった時に、社会保険から子どもに何かありますか?

私に万が一のことがあった時に、社会保険から子どもに何かありますか?
母子家庭で、女手ひとつで2人のお子さんを育てられたA子さん。この春、下のお子さんも大学を卒業し、社会人になりました。
 
でも、自分に万が一の時に、2人の子どもに少しでも何か残したいと思っているA子さん。公的保険からは何かもらえるのでしょうか。

林智慮

Text:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

遺族年金を受給できる「子」は、18歳になった年度の3月31日までの間であること

遺族基礎年金を受け取れるのは、死亡した人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。子のない配偶者は受け取ることができません。
 
一方、遺族厚生年金の遺族とは、死亡した人によって生計を維持されていた、
「子のある妻・子のある55歳以上の夫」
「子」
「子のない妻または55歳以上の夫」(30歳未満の子のない妻は、5年間の有期年金となります)
「55歳以上の父母」
「孫」
「55歳以上の祖父母」
であり、この順番で優先されます。
 
生計維持されていた人とは、死亡した人と生計を1にしていて、年収850万円未満、またはおおむね5年以内に退職や廃業等で850万円未満になると認められる事由がある人をいいます。
 
遺族基礎年金を受け取れる「子」・遺族厚生年金を受け取れる「子」「孫」とは、次の状態が条件になります。
 
・18歳になった年度の3月31日までの間にあること(死亡した当時、胎児であっても出生以降に対象)。
・20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にあること。
・婚姻してないこと。
 
A子さんのお子さんの場合、下のお子さんがこの春大学を卒業されたので、受け取る時期は過ぎています。お子さんはA子さんの遺族年金を受け取れません。
 

国民年金独自の給付金

A子さんは個人事業主で、国民年金第1号被保険者です。開業してかれこれ15年になります。
 
もし、A子さんが老齢基礎年金も障害基礎年金も受け取らずに亡くなった場合、保険料納付期間が36月(3年)以上あるので、『死亡一時金』を遺族が受け取れます。
 
保険料納付月36月以上(12万円)から420月以上 32万円)が上限ですが、15年の場合、14万5000円です。さらに、付加保険料も払っていたので、8500円加えた15万3500円を受け取れます。
 
受け取れる優先順位は、生計を同一にしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順です。
 
2年を経過したら請求できなくなりますので、ご注意ください。
 
(そのほかの国民年金独自の給付金に、『寡婦年金』があります。国民年金第1号被保険者の保険料納付済み期間(免除期間含む)が10年以上ある夫に生計を維持され、夫との婚姻関係が10年以上継続している妻(事実婚も含む)が、60歳から65歳になるまでの間、受け取ることができます。第1号被保険者であった期間から算出した基礎年金額の4分の3の金額になります。死亡一時金も受け取れる場合はどちらか一方になります)
 

労災保険からの給付

仮にA子さんが従業員で、業務・通勤が原因で亡くなった時は、労災保険からの給付があります。
 
遺族(補償)年金の受給資格者となるのは、被災労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫祖父母、兄弟姉妹です。
 
妻以外の遺族については一定の高齢や年少(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間)であるか、一定の障害状態にあることが条件となっています。
 
遺族数などに応じて、遺族(補償)年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が受給できます。
 
そして、労災における生計を維持していたというのは、生計を維持していただけでなく、共稼ぎの場合も含まれます。
 
しかし、遺族(補償)年金を受け取れる遺族がいない時は、遺族(補償)一時金、遺族特別支給金、遺族特別一時金を、または受給権者が最後順位者まですべて失権し給付基礎日額の1000日分に満たないときに、遺族(補償)一時金、遺族特別一時金が支給されます。
 
受給順位は、
1.配偶者
2.労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
3.その他の子・父母・孫・祖父母
4.兄弟姉妹
となります。
 
※遺族給付は通勤災害の場合、遺族補償給付は業務災害の場合。
 

公的年金の上乗せ、iDeCoの制度を利用する

社会保険ではありませんが、公的年金の上乗せとして、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。
 
賦課方式の公的年金とは違って、個人が掛けた分は個人固有の財産になります。
 
掛金全額所得控除で所得税・住民税の減税メリットを受けられます。最長70歳まで、運用益非課税で運用できます。
 
引き出すときも、一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除が適用されます。
 
万が一、自己破産することがあっても差し押さえられません(税金の滞納分など除く)。そして、金融機関が破綻することがあっても、iDeCoの財産は守られる仕組みになっています。
 
原則60歳まで(掛金拠出期間が10年未満の場合は、年数に応じて最良65歳まで)引き出せませんが、万が一の場合は、60歳前でも障害給付金、死亡一時金が受給できます。配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹の中から死亡一時金の受取人を指定することもできます(死亡一時金はみなし相続財産として、相続税の課税対象となります)。
 
ほかに、埋葬料や葬祭費(5万円)、未受給の年金・失業手当等がある場合も、請求しなければもらえません。
 
万が一の時の保障は生命保険で考えますが、その前に、社会保険からもらえるものを知っておきましょう。
 
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者
相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP

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