生命保険料に影響する「予定利率」とは? 保険料の決め方と返戻率との違い
配信日: 2023.02.09
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「予定利率」は純保険料の運用利回りのこと
生命保険の「予定利率」とは、簡単にいうとその保険商品の運用利回りを示す数字です。
保険会社は、契約者から受け取った保険料を、保険金の支払いに備える「責任準備金」として蓄えています。保険料は単に積み立てられるだけではありません。
また、保険会社は保険料を債券や株式、不動産などで資産運用して増やし、責任準備金を効率的に蓄える工夫をしています。このとき保険会社が運用するのは、契約者が支払った保険料から人件費などの諸経費を除いた「純保険料」とよばれる部分です。
このような生命保険の仕組みにおいて、保険会社が契約者に約束する運用利回りが、予定利率です。予定利率の基準となるのは、金融庁が国債の利回りなどをもとに決める「標準利率」です。各保険会社は標準利率をもとに、自社の状況などに応じて独自に予定利率を決めています。
標準利率の引き下げや引き上げが発表されると、保険会社も予定利率の引き下げや引き上げを検討し、それに合わせて保険料の改定などが実施されます。
予定利率と保険料の関係
保険会社は、資産運用により見込まれる運用収益をあらかじめ割り引いて保険料を決めています。予定利率が高いほど見込まれる運用収益が大きいため、保険料は安くなる傾向にあります。逆に、予定利率が低いと運用収益の見込みが小さく、保険料は高くなります。
予定利率は金融庁が発表する標準利率をもとに決まるため、一般的に標準利率の引き下げ時には保険料が上がり、引き上げ時には保険料が下がることを覚えておくとよいでしょう。
ただし、保険料は予定利率だけで決まるのではなく「予定死亡率」「予定事業費率」という指標も用いて算出されます。そのため、予定利率だけをみて保険料の高低は判断できません。
■予定死亡率
過去の統計をもとに、性別、年齢別の一定期間内に亡くなる人の割合を予測した数値です。予定死亡率が下がると将来の保険金の支払いに必要な金額が少なくなるため、保険料は下がる傾向があります。
■予定事業費率
保険料に含まれる、事業運営における必要経費の割合です。事務所や店舗の管理、人件費、広告宣伝費、システム開発費など費用にはさまざまありますが、事業運営にコストをかける保険会社ほど予定事業費率が上がる傾向があり、保険料は高くなります。
なお、「予定利率」「予定死亡率」「予定事業費率」の3つの指標を合わせて「予定基礎率」とよびます。
「返戻率」は保険料総額に対する受取金の割合
「返戻率(へんれいりつ)」は、契約者が支払った保険料総額に対する、保険金などの受取総額の比率です。「受取率」「戻率」とよぶ場合もあります。
返戻率100%とは、支払った保険料と受け取れる保険金などの金額が同額だということです。返戻率120%であれば、支払った保険料に対して20%上乗せされた金額を受け取れます。反対に返戻率が100%を下回る場合は、受け取れる保険金などの金額が支払った保険料よりも少ない、いわゆる元本割れの状態です。
予定利率と返戻率は「保険料に対する利回り」という意味で似ているようにみえます。しかし、予定利率は支払った保険料から経費などを差し引いた純保険料をもとに算出するのに対し、返戻率は保険料総額が計算の基礎となる点で、両者は大きく異なります。
予定利率は保険料の一部だけの運用利回りでしかない
生命保険の予定利率は、保険料全体から経費を差し引いた純保険料をもとに、運用によって見込まれる利回りを示す指標です。予定利率が高いほど保険料が低い傾向があるため、保険商品を比較検討する際の参考になるでしょう。
似た言葉に返戻率がありますが、こちらは保険料の総額に対して契約者が受け取れる保険金などの割合をパーセンテージにしたものです。予定利率とは全く意味が異なるため、混同しないように注意しましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部