更新日: 2023.04.13 損害保険
賃貸契約の際に加入する火災保険。チェックするべきところは? つけたほうがよい特約は?
執筆者:飯田道子(いいだ みちこ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっています。
どの金融機関にも属さない独立系FPです。
賃貸契約する対象物件の火災保険を知る
天災などが発生したとき、テレビや雑誌などのメディアで、火災保険に関するニュースをよく目にします。しかし、これらの保険のほとんどが持ち家の人を対象にした情報です。
持ち家と賃貸で火災保険の内容に大きな違いはないものの、賃貸物件の場合、賃貸入居者向けの火災保険に加入します。分かりやすい大きな違いは、加入する経緯です。
持ち家の場合には、複数の損害保険会社などのホームページなどを見ながら、補償内容や保険料を比べて、自分にあった保険会社を自由に選び申し込みます。
一方、賃貸の場合、自分の財産のための「家財」と大家さんに対する賠償の補償(借家人賠償責任)を主にした補償内容となっている、いわゆるパッケージタイプとよばれるものが主流です。
保険会社は自分で選ぶのではなく、仲介に入っている管理会社(不動産会社など)が指定してきた保険に加入するのが一般的です。プランの提示も1プランのみのところもありますが、2つのプランを提示するなど、管理会社によってまちまちです。
ただし、管理会社によっては、自分で保険を選ぶこともできます。自分で加入したい保険があるときには、新たな住まいに引っ越ししたときや契約更新のとき、管理会社やオーナーに相談してみましょう。
賃貸入居者向け火災保険の基本の補償内容とは
火災保険という名称の保険ですので、火災が発生したときに補償されます。また、これに限らずその他、いろいろな補償が受けられます。
<火災、落雷、破裂・爆発>
ベースとなる補償です。火災という名称の保険に加入したら、補償されます。
<風災・雹災(ひょうさい)・雪災>
台風や竜巻、大雪などに遭った場合、補償されます。
<水濡れ(水漏れ)>
給排水設備のつまりによる水漏れや、お風呂の水を洗濯用水にするときのホースが外れた場合などの水漏れが補償されます。最も身近なトラブル、事故に対応できる補償といえるでしょう。
<水災>
台風、暴風雨、豪雨等による洪水・融雪洪水・高潮・雨による土砂崩れや落石などが原因で発生した損害額、家財の損害が出たときに補償されます。ただし、被害の状況によって補償されないこともあります。加入条件次第の補償となります。
<盗難>
意外に思うかもしれませんが、盗難被害にあったときも補償されます。ただし、30万円を超える高価な宝石や骨董品は、「明記物件」となり、保険加入時に申告していない物件の補償は単なる「モノ」として算定されるため、思うような補償は得られません。
<外部からの物体の落下・衝突等>
サッカーボールが飛び込んできてガラスが割れたり、家財が壊れてしまったりした場合に、補償されます。
ここまでが基本の補償内容です。思っていたよりも、たくさんの補償が得られるので、ビックリしたのではありませんか?
また、基本の補償以外にも、補償されるものもあります。
<破損・汚損等(不測かつ突発的事故)>
偶然かつ突発的な事故で家財が破損、汚損してしまったときに、補償されます。ここで注意しなければならないのは、上記のような状態になったとしても、すべて補償されるわけではないということです。
例えば、保険金目当てにわざと壊した場合、法律に違反している場合や自然劣化などは補償されません。その他、戦争や内乱や暴動が原因の場合や地震、噴火またはこれらが原因の津波による損害、核燃料物質等が原因の事故による損害なども補償されません。
保険に加入するときには、補償されるものばかりに目が行きがちですが、補償されるケースについても、知っておくことが大切です。
押さえておくべきポイント
賃貸向けの火災保険の場合、パッケージングされていますので、特に特約をつけなければならないというものはありません。ただし、高価な品物を所有している場合には、「明記物件」の申告を忘れないことが大切です。
また賃貸向けゆえに、ある程度、間取りや世帯構成によって補償される金額はあらかじめ決まっています。決められている補償額では損害をカバーできないようなときには、保険契約前に申し出をし、補償額を変更してもらいましょう。その分、保険料は高くなってしまいますが、大切なことです。
また、複数の火災保険に加入している人がいますが、火災保険はモノに対する保険であり、複数の会社の保険に加入しても、加入しているすべての保険会社から満額の補償が得られるわけではありません。1つのモノに1つの保険が鉄則です。加入し過ぎているなら、解約しましょう。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト