更新日: 2023.08.29 その他保険
【社会保険】パートやアルバイトが加入できる条件とメリット・デメリットは?
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
短時間労働者が社会保険に加入できる条件
適用事業所(以下、会社)は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上のパートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者に対して、健康保険や厚生労働保険に加入させなければいけません(4分の3基準)(※1)。これは会社の義務であり、任意に加入させたり、加入させなかったりはできません。
この4分の3基準に満たなくても、2016年10月から特定事業所で働く短時間労働者については、次の条件のすべてに当てはまる場合は、社会保険に加入できるようになりました。
1. 週の所定労働時間が、20時間以上であること。週の所定労働時間とは、就業規則、雇用契約書などにより、その人が通常の週に勤務すべき時間をさします。
2. 賃金の月額が、8万8000円以上であること。週休、日給、時間給を月額に換算したものに、諸手当などを含めた所定内賃金の額が、8万8000円以上である場合です。諸手当などには、残業代、通勤手当、家族手当、賞与は、含まれません。
3. 雇用期間が、1年を超えて見込まれること。
4.学生でないこと。高等学校、大学、専修学校、各種学校(修業年限が1年以上の限る)などに在学する生徒または学生は、適用対象外ですが、通信制過程や定時制課程に在学している人、夜間学部生、休学中の人は、加入の対象です。
なお、特定事業者は事業者が同一である1または2以上の(短時間労働者を除く)社会保険の加入者総数が、一定数を超える会社とされています。一定数の定義は、(2020年5月に法律が改定され、)2022年10月から常時100人超規模となり、2024年10月からは、常時50人超規模に改正されます。また、法改正により2022年10月からは雇用期間が「2ヶ月を超えて」見込まれることに改定されました(※2)。
社会保険に加入するメリット
今まで国民健康保険、国民年金に加入していた人が、社会保険に加入するメリットとして次のことが挙げられます。
1.厚生年金保険料と健康保険料は、雇用主と雇用者が折半して支払うため、(国民年金や国民健康保険と比べて)自己負担分が少なくなる可能性があります。
2. 健康保険に加入することにより、病気や出産などで仕事を休み報酬が得られなくなった場合、傷病手当金は、支給を始めた日から起算して1年6月を超えない期間(※3)、出産手当金は、産前・産後休業の期間中(※4)、賃金の3分の2程度が支給されます。
3. 厚生年金保険に加入することで、障害年金、遺族年金、老齢年金の3つの保険が充実します。厚生年金加入中に初診日のある障害については、障害等級1・2級の場合、障害基礎年金に加えて障害厚生年の上乗せがあり、加入期間が短くても一定(300月分)の給付が確保されます。
また、障害基礎年金の支給対象とならない障害等級3級やそれより軽い一定の障害については、障害厚生年金または障害手当金(一時金)の給付を受けることができます(※5)。
遺族年金については、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金の上乗せがあり、老齢年金については、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金の上乗せがあります。
社会保険に加入するデメリット
社会保険に加入するデメリットとしては、社会保険の加入により毎月の給料から自己負担分が引かれるため手取りでもらえる収入が少なくなります。
特に配偶者の扶養内で働いている人は、社会保険を支払う必要がないため、お給料はほぼ差し引かれることなく働いた分だけ支払われるため、社会保険に加入することにより手取り額が減り、損をしたように感じるかもしれません。
社会保険に加入をしたくなければ会社に扶養内で働きたいことを明確に伝え、社会保険の加入条件に当てはまらないような労働条件にしてもらうとよいでしょう。また、総収入を減らしたくないと思う人は、パートタイマーやアルバイトを掛け持ちすることにより、一つひとつの勤務先で社会保険の加入条件に該当しないようにすることも一案です。
まとめ
手取り額を減らしくないという人にとっては、パートタイマーやアルバイトで社会保険に加入することはデメリットに感じるかもしれませんが、病気やけがをしたときに手厚い保障を受けられたり、老後にもらえる年金額が増えたりと社会保険に加入して得られるメリットもあります。社会保険に加入するメリット・デメリットをよく検討したうえで、働く会社を選ぶようにしましょう。
出典
(※1)日本年金機構 適用事業所と被保険者
(※2)厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
(※3)厚生労働省保健局 傷病手当金について(令和2年3月26日)
(※4)厚生労働省 産前・産後休業中、育児休業中の経済的支援
(※5)日本年金機構 障害年金/障害厚生年金・障害手当金
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者