社会保険料を払い過ぎて「得する人」がいるって本当!?「約13万円」も受給額が増える? 内訳を解説
配信日: 2023.10.12
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
社会保険料は標準報酬月額から計算される
給与から天引きされている社会保険料は、所得税のように毎月の給与支給額から計算されているのではありません。実際に受け取る給与額ではなく、従業員ごとに年1回決定されている「標準報酬月額」をもとに算定されています。
この標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月に受け取った給与額の平均で決められており、毎年9月に改定されます。つまり、この3ヶ月間の給与が高ければ社会保険料が高くなるということですね。
社会保険料が高いと得をする手当
「社会保険料が高い=標準報酬月額が高い」ということなので、標準報酬月額をベースに算定される出産手当金や傷病手当金は、給与から引かれる社会保険料が高いほど、支給額も高くなります。
ただし、標準報酬月額は支給開始日の以前12ヶ月間の金額を使って計算されるため、支給開始日が11月であれば9月改定分の9、10月と8月以前に適用されていた分の11月から8月で計算される点に注意しましょう。
出産手当金
出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、その期間に給与の支払いを受けられなかった場合に支給される手当です。
対象となる期間は、出産の日以前42日から出産の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間となっており、最大で98日間分(多胎妊娠や、出産予定日より遅れての出産については別途算定)を受給することができます。
支給額は、「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)」で計算します。
例えば、支給開始日の以前12ヶ月間の標準報酬月額が30万円の場合における98日分の受給額は、30万円÷30日×(2/3)×98日=約65万円となります。標準報酬月額28万円の場合は、28万円÷30日×(2/3)×98日=約61万円なので差額は約4万円です。
もちろん、標準報酬月額が28万円の人よりも、30万円の人のほうが社会保険料を多く支払っています。その差額は年間で3万円ほど(東京都在住、介護保険第2号被保険者に該当しない場合)なので、実質的には約1万円ですがお得に受給できる計算になります。
傷病手当金
病気やけがで会社を休んだ場合には、傷病手当金を受給できます。対象となる期間は、会社を休んだ日から連続して3日間の後4日目以降となっており、通算して最大1年6ヶ月間です。
支給額の計算方法は出産手当金と同様で、「支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)」となっており、支給開始日の以前12ヶ月間の標準報酬月額30万円の人が1年間(365日と仮定)受給した場合、30万円÷30日×(2/3)×365日=約243万円を受け取ることができます。
標準報酬月額28万円の人であれば、28万円÷30日×(2/3)×365日=約227万円なので、差額は約16万円にもなります。
標準報酬月額30万円と28万円の社会保険料の差額については前述のとおり年間約3万円なので、お得になった金額は約13万円です。
まとめ
標準報酬月額が1等級でも上がると、社会保険料が増えるため損をした気持ちになるかもしれません。ただ、社会保険料を多く支払っている人は、出産を予定している人であれば出産手当金が多くなります。
傷病手当金も、標準報酬月額が高い時に受け取るとその分受給額も多くなります。社会保険料が高くなれば、その分、万一に備えた保険も手厚くなるという考え方を持ってみてはいかがでしょうか。
出典
全国健康保険協会 出産手当金について
全国健康保険協会 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士