月収24万円ですが、4月から6月は残業が多く月収「26万円」ほどでした。社会保険料で損をすると聞いたのですが、どのくらいでしょうか?
配信日: 2023.10.21
本記事では、例えばいつもは月収が24万円で、4月から6月にかけて残業が多く平均26万円の収入になった場合、社会保険料の負担はどう変化するのかを解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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4月から6月に働きすぎると損といわれる理由
結論からいえば、たとえ一時的でも残業が多く時間外手当が支給されることで収入が増えると、厚生年金保険の保険料負担が増えることで手取り金額が減少し、損をしたと感じる可能性があります。
厚生年金保険の保険料は、毎月の給与金額とボーナスに共通の保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者(会社であれば従業員)が半分ずつ負担しています。
しかし毎月それぞれの従業員の収入金額をもとに保険料を計算するのは膨大な時間や手間が発生するため、事業主から受け取る給料などの報酬月額を一定の幅で区分した「標準報酬月額」が保険料の計算に使用されています。
標準報酬月額の対象となるのは基本給だけではありません。通勤手当や住居手当、残業代(時間外手当)や役職手当など、事業所から現金または現物で支給されるものが含まれます。
標準報酬月額は4月から6月の報酬月額をもとに、毎年9月に改定が行われます。固定賃金が変更となったときや2等級以上の大幅な変動があった場合は随時改定されますが、基本的には年1回の定時改定をもとに保険料が決まります。
「4月から6月に働きすぎると損する」と言われることが多いのはこのためです。残業が増えて給料が増えると、以降は改定されるまで4月から6月の報酬月額をもとに社会保険料が決定され、たとえ6月以降に残業がゼロになって標準報酬月額を下回る収入になったとしても厚生年金保険料は変わりません。
月収24万円から26万円になるとどう変わる?
具体的に4月から6月に収入が増えると、どのくらい影響があるのでしょうか。いつもは月収24万円の人が、残業代などがプラスされて26万円に上がったケースをもとに説明します。
協会けんぽが公表している東京都の「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」によると、標準報酬月額が24万円の場合の厚生年金保険料は全体で4万3920円、従業員負担分は2万1960円です。標準報酬月額が26万円に上がると、厚生年金保険料は全体で4万7580円、従業員負担分は2万3790円となります。
また厚生年金保険料だけではなく、健康保険料の負担割合も変化します。健康保険料額は介護保険第2号被保険者に該当するかどうかで分かれますが、今回は40歳から64歳までの加入者である介護保険第2号被保険者に当てはまる場合をもとに説明します。
さきほどの協会けんぽの資料によると、標準報酬月額が24万円の場合は全体で2万8368円、従業員負担分は1万4184円です。標準報酬月額が26万円に上がると全体で3万732円、従業員負担分は1万5366円となり、厚生年金保険料と健康保険料を合わせると単純計算で月額約3000円の負担増となることが分かります。
4月から6月に収入が増えると損する?
4月から6月に残業が増えると損した気分になるかもしれませんが、保険料を多く納付する分、老後受け取る年金額が増えるため支払っても意味がないわけではありません。
4月から6月までの時期以外では標準報酬月額よりも実際の収入が少なく、厚生年金保険料や健康保険料の負担が増えたとしても、その分将来受け取れる年金額が上がります。短期視点では保険料負担が増えますが、長期視点では年金額アップにつながるため、一方的に「損する」と考えるのは誤りだといえます。
まとめ
本記事では、4月から6月に残業が多かった影響で給料が増えた場合、10月から手取り額が減って損するのかを解説しました。
短期的に負担が増えて損した気分になったとしても、長期的に考えればそうとは限りません。毎月数千円程度の負担が増えても将来の年金額に反映されると考えると、「4月から6月に残業すると損だからやめたほうがいい」とは言い切れないでしょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 厚生年金保険の保険料
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京都)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー