医療保険の先進医療特約は過度の期待は禁物!適用される医療技術は?
配信日: 2019.01.05 更新日: 2020.09.07
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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先進医療とは
先進医療は、厚生労働省が承認した先進性の高い医療技術です。公的医療保険の対象にするのかを評価する段階にある治療・手術などです。
一定の基準を満たす大学病院などで研究・開発された新しい治療や手術などが、ある程度実績を積んで確立されると、厚生労働省に「先進医療」として認められます。審査期間は3~6か月です。先進医療は固定的なものではなく、先進医療の内容は時とともに変化します。
なお、先進医療のリストは厚生労働省のホームページで公表されています。
先進医療の技術料は全額自己負担
病院等で保険証を提示して診療を受けると、窓口で支払う金額は、かかった医療費の1~3割ですみます。負担割合は、小学校入学前の未就学児は2割、小学校~69歳は3割、70歳以上は年齢と収入により1~3割です。
しかし、厚生労働大臣が定める先進医療の技術料は医療保険の対象外ですので、全額自己負担になります。高額療養費の対象にもなりません。
その他の診察料、検査料、投薬料、入院料などの費用は、一般の保険診療と同様に扱われ、医療保険が適用されます。なお、厚生労働省に届け出た医療機関以外で先進医療と同様の治療・手術などを受けても先進医療とは認められませんので留意しましょう。
先進医療特約
先進医療にかかる費用は全額自己負担です。先進医療の中では、がん治療の重粒子線や陽子線治療が高額です。治療費用は平均300万円程度です。実施件数が多いのが、白内障の治療に用いられる、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術で、費用は平均55万円程度です。
これら費用に備えるために、保険会社で販売されているのが、先進医療特約です。最近では、主契約タイプも販売されています。
先進医療給付金は500万円~2,000万円、月額保険料は100円~500円程度です。先進医療の実施医療機関は多くないので、通院のための交通費や宿泊費がかかるケースもあり、これらの費用も給付するタイプもあります。
先進医療給付金は必要?
先進医療というと、高額のイメージがあるかもしれませんが、費用が高額なのは「粒子線治療」くらいです。平成28年6月30日時点で、約3,800件しか実施されていません。新規がん患者の1%にもなりません。
実施件数が多くないのは、費用が高額ということもあるかもしれませんが、「粒子線治療」を、がん患者が望んでも、適用条件が厳しいので、適用外になる可能性が高いからです。保険料が安いのも、給付金の支払総額が少ないからともいえるでしょう。
保険料が安いので、安心のために加入するのは良いかもしれませんが、期待はしないほうがいいかもしれません。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー