「約40年ぶり」に学資保険の「予定利率」を引き上げる保険会社があるというニュースを見ました。予定利率が上がるとどんなメリット・デメリットがありますか?
配信日: 2025.01.21
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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3つの予定率と保険料への影響
生命保険の保険料は、契約時の予定利率、予定死亡率、予定事業費率という3つの予定率をもとに計算されます。将来の支払いに必要な保険金額は、過去の死亡統計をもとに、性別・年齢別の死亡者数を予測して計算します。この計算に用いる死亡率が予定死亡率です。
たとえば、若い人のほうが年配の人より死亡する確率は低いので、同じ保障内容だと若い人のほうが死亡保険の保険料が安くなります。男性より女性が長生きする人は多いので、女性のほうが死亡保険の保険料は安くなります。
保険事業を営むためには、さまざまな経費が必要です。この経費の予定額を計算する際に用いるのが予定事業費率です。これが高ければ保険料が高くなり、低ければ保険料は安くなります。
生命保険会社が契約者から受け取った保険料の一部を資産運用にあてますが、将来の資産運用による一定の運用収益をあらかじめ見込んで、その分の保険料を割り引きます。この割引率を予定利率といいます。通常、予定利率が上がると保険料は安くなり、下がると保険料は高くなります。
生命保険最大手の日本生命は、2025年1月2日以降に契約する一部の商品について、予定利率を引き上げました。当該企業によると、学資保険は現在の0.85%の利回りを1%に引き上げるほか、年金保険は0.6%から1%に、終身保険は0.25%から0.4%に、それぞれ引き上げます。
学資保険(契約者:父30歳、被保険者:子ども0歳、保険期間18年、受取総額300万円)の場合、改定前の月払い保険料は1万3350円から1万3130円と、220円安くなりました。
月単位で見れば大きな金額ではありませんが、年間では2640円、18年間では4万7520円の差になります。これにより、戻り率(受取総額÷総支払保険料)が、約104.04%から約105.78%に上昇します。
契約貸付利率も改定
日本生命では、予定利率の改定と併せて契約者貸付利率も現行の2.0%から改定後は2.40%になりました。
契約者貸付は、加入中の生命保険の解約返戻金を担保にして、解約返戻金の一定の範囲でお金を借りる制度です。この制度を利用する予定がある場合、予定利率が上がってからの契約はデメリットです。
なお、解約返戻金のない定期保険など保険種類等によっては、契約者貸付は利用できません。自分の解約返戻金を担保にするので審査なしで借入ができ、申請から遅くとも1週間程度で融資を受けられます。急にまとまったお金が必要なときに役立ちます。
貸付金には、企業所定の利息がかかります。予定利率が高い契約は貸付利率も高くなります。現在、利率は2~3%程度ですので、教育ローン程度です。解約するわけではないので保障内容はそのままです。
返済期限はなく自分のペースで返済できますが、返済がないまま一定期間が過ぎ、貸付元利合計額が解約払戻金を超える場合、保険契約が失効となりますのでご注意ください。
出典
日本生命保険相互会社 保険料率等の改定について
一般社団法人 生命保険協会 生命保険の基礎知識(保険料と配当金の仕組み)
公益財団法人 生命保険文化センター 知っておきたい生命保険の基礎知識(契約者貸付)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。