更新日: 2020.04.03 医療保険
「医療保険を更新型から終身型に切り替えるべき」これって本当?
1980年代に販売されていた医療保障は、生命保険の特約として付加されていたこともありました。
こうした生命保険は、終身部分と定期部分の死亡保障がセットで、特約で医療もカバーするというパターンが多く、終身部分はお宝保険と呼ばれるように今では考えられない予定利率(5~6%程度)で運用を確定されていることもありました。
今では少数派かもしれませんが、こうした保険を現在も持ち続けているかたは、特約の医療保障が更新型のケースが多く、保険料が更新の都度上がるだけでなく、更新も最長80歳までなど、終身でないことも多いかもしれません。
今や人生100歳の時代に、最新の医療保険に切り替えるべきなのか、そうだとすれば、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
お宝保険の医療保障とは? 古い保険の魅力とは?
いわゆる掛け捨てではない「貯蓄性のある保険」は固定金利商品なので、契約当時に決められた予定利率は、契約を終了するまで変動することはありません。
従って、運用環境が悪化しても、解約しない限り保険会社は契約時に決められた予定利率を支払ってくれますので、予定利率の高い保険はお宝なのです。
イメージとしては、終身保険の上に定期保険がついていて特約として医療保険があるものです。
このタイプの医療保障のデメリットは、古い保険なので、今時の潮流に適合していない、ということです。例えば、1.入院5日目以降でないと入院給付金がでない、2.先進医療特約がつけられない、などです。
ただし、デメリットばかりではありません。
特約を辞めると解約返戻金があるものもあります。これらの特約には医療保障だけでなく、災害死亡保障なども合わせて解約返戻金が計算されている場合がありますので、医療保障部分のみの解約返戻金は少ない可能性もあります。
また、一つの入院とみなす期間は、今どきでは長めの120日ある、重篤な手術の場合には、入院の日額保障が5千円でも20万円(40倍)出る場合があるなど、治療が今より長くかかる時代の恩恵はあるようです。また、日帰り手術は手術給付金の対象になるものもあります。
古い保険の最大の魅力は、加入年齢が若いので、保険料が相対的に安いということです。全く同じ保障を今ふたたび買うことはできませんが、条件が同程度の違う保険へ現在の年齢で新たに加入しようとすれば、保険料は当時のものと比較すると高めになるでしょう。
今どきの医療保険、違いは何か?
<入院期間の短縮によるもの>
医療技術の進歩や政府の医療費削減の方針もあり、入院日数は年々短くなる傾向があります。
厚生労働省の「平成26年 患者調査」によると、退院患者の平均在院日数は31.9日となっています。三大疾病については、がんと心疾患は20日程度、脳血管疾患は89.5日です。ただし、認知症については、266日~377日と長期になる傾向はあります。
こうした結果を踏まえて、一つの入院とみなす期間は、60日か120日か選択できる保険商品が増えています。保険会社によっては、30日型のものもあります。入院給付金は入院1日目から支給され、日帰り入院も対象になるものがほとんどです。
<先進医療>
先進医療とは、平成16年12月の厚生労働大臣と内閣府特命担当大臣ほかの合意に基づき、国民の安全性を確保しつつ、選択肢を拡げるなどの観点から、保険診療との併用を認めることとしたものです。
そのため、平成16年以前に加入された医療保険には、先進医療特約は存在しないと考えられます。
先進医療の治療費については、全額自己負担で健康保険診療の対象外ですので、高額になりがちです。がんの治療のほかにも白内障治療で利用する人も増えているようです。公的な保険では適用外であり、保険料が比較的安いことから、医療保険で保障するのに向くでしょう。
どこを切り捨てたらよいのか?
加入年齢が上がると、病気のリスクも高まるため、当然医療保険の保険料は高くなります。昔の保険だと侮ると、必要かどうかは別として、同じ程度の保障を買おうとすると意外にも保険料が高くなる場合があります。
すべて保険で賄おうとするとキリがありませんし、必ず病気にならなければ、結果的には保険料は無駄ということになってしまいます。保険は損得ではなく、万一の備えという位置づけで考えて必要最小限にし、万一の時に効力を発揮してもらうことを目指すのが理想でしょう。
そのためには、何を切り捨てていくのか、が肝要です。
<今どきの医療事情から外れるもの>
入院期間が短くなる傾向は今後も続くと思われます。一方で認知症など、まだ解明が進んでいない病気に対しては、入院も長期化する傾向はしばらく続くかもしれません。
ただし、認知症については、高額療養費制度(ひと月の医療費が一定以上かかると医療費が割安になる制度)という公的な保障があること、公的な介護保険とセットで考える方がよいと思われること等から、医療保障からはいったんはずして考えてもよいかもしれません。
純粋に医療という観点から、一つの入院の制限日数を60日型、あるいは30日型にするのは合理的でしょう。
それでも心配な場合は、一入院30日型、入院一日あたりの保障を5千円など安く設定して基本の保険料を抑え、入院の長期化には、入院すると必ずもらえる「入院一時金」をもらう特約をつける、という選択肢もあります。ただし、保険料はその分高くなります。
<不確定要素にはお金をかけない>
老後は年金生活で保険料が払えるか心配だからと、65歳や60歳払い済みに設定するかたもいらっしゃいます。
保険料の安い20代などで加入するなら、70歳前半で亡くなれば、保険料相当分に見合うかもしれませんが、40代、50代になると80歳を越えるまで存命していないと、終身払いよりも多くの保険料を納める結果となることが多いようです。
人の人生はいつ何時何があるかわからないですので、〇歳まで生きないと支払い損になると考えるのもストレスですし、そうならないために、終身払いで細く長い支払いを選択し、長生きしたら天命に感謝するくらいでもよいかもしれません。
そのために、年金でも支払える程度の保険料にとどめて加入することが大切でしょう。
三大疾病払い込み免除、三大疾病入院期限無制限などの特約も同様です。三大疾病にかかれば結果的にお得にはなるかもしれませんが、その分割り増し保険料を支払うことになりますので、慎重に検討したいところです。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士