複雑に見えがちな医療保険。入院給付金と手術給付金のチェックポイントを解説

配信日: 2019.08.14 更新日: 2021.09.20

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複雑に見えがちな医療保険。入院給付金と手術給付金のチェックポイントを解説
公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度生活保障に関する調査」(令和元年12月発行)によると、89.6%の方が、自分自身が病気やケガをすることに対して不安を感じています。
 
不安の内容としては、「家族に肉体的・精神的負担をかける」が最も多く、次に「長期の入院で医療費がかさむ」となっています。
 
医療費に備える方法として医療保険への加入があります。保険会社にとっても主力商品ですので、新商品が続々開発、販売されています。一般の方にはどの商品を選べば良いのかわからず、営業職員に勧められるままに医療保険に加入しているケースが少なくありません。
 
一見、複雑そうに見える医療保険ですが、基本はシンプルです。まずは、基本を知ることから始めましょう。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

医療保険に加入する前に

病気やケガで入院や手術をしたきに多額の医療費がかかるのではないかと不安に思い、医療保険への加入を検討する方が少なくありません。しかし、健康保険などの公的医療保険には、1ヶ月の自己負担の上限額が決まっている「高額療養費制度」がありますので、過度の心配はいりません。
 
例えば、治療費が100万円で窓口負担(3割)が30万円かかる場合でも、月収28万円~53万円(70歳未満)の方の自己負担の上限額は8万7430円ですので、申請により差額の21万2570円を後日払い戻してもらえます。
 
したがって、十分な貯蓄がある方には医療保険への加入の必要性は低いといえます。医療費への備えは貯蓄を基本として、貯蓄ができるまでのつなぎとして医療保険への加入を考えたらいかがでしょうか?
 

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医療保険の主な給付金は「入院給付金」と「手術給付金」

病気やケガで入院や手術を受けたとき等に、給付金が受け取れるのが医療保険です。医療に対する保障を主な目的にしていますので、死亡保障のないタイプが多く、あっても一般的に少額です。
 
主な給付内容は入院給付金と手術給付金です。ただし、入院給付金の対象となる日数や1回の入院の支払い限度日数、通算支払い限度日数、手術給付金の対象となる手術の種類や倍率など商品により異なりますので、支払い条件を十分確認することが大切です。
 

入院給付金のチェックポイント

入院給付金には、災害入院給付金と疾病入院給付金があります。災害入院給付金は、災害や事故によるケガで180日以内に入院したときに受け取れ、疾病入院給付金は病気で入院したときに受け取れます。
 
ただし、入院1日目から受け取れるもの(日帰り入院型)もあれば、災害入院給付金は通算で5日以上、疾病入院給付金は継続して8日以上入院したときに1日目から受け取れる(8日型)などさまざまです。
 
なお、日帰り入院とは入院日と退院日が同じ日の入院をいいます。病院が発行する領収証に「入院料等」の診療報酬点数等があるかどうかで確認できます。
 
1回の入院の支払い限度日数は、30日、60日、120日などさまざまです。730日というものもあります。また、通算支払限度日数も1095日などさまざまです。
 
なお、同じ病気で180日以内に再入院した場合、一般的に前回の入院と合わせて『1入院』として扱われますので知っておきましょう。商品によっては「異なる病気」で再入院しても『1入院』として取り扱われるものもありますのでよく確認しましょう。
 

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入院給付金日額などの目安

厚生労働省「平成29年患者調査」によると、平均在院日数は、「病院」30.6日、「一般診療所」12.9 日となっており、病院、診療所ともに平均在院日数が短くなる傾向にあります。
 
また、年齢階級別にみると、35歳~64歳は23.1日、65歳以上は38.5日と、年齢階級が上がるに従い退院患者の平均在院日数は長くなっています。
 
次に、「平成28年度生活保障に関する調査」(生命保険文化センター)によると、入院時の自己負担費用の平均は22.1万円となっており、自己負担費用の総額を入院日数で除した1日あたりの自己負担費用の平均は1万9800円となっています。
 
費用の分布を見ると「1万~1万5000円未満」が24.5%と最も高くなっています。1回の入院の支払い限度日数や入院給付金日額等を決めるのに参考になると思います。
 
保障内容が厚いほど保険料も高くなります。保険料の支払いが多く、貯蓄ができないのでは本末転倒です。保険料の負担が適切かもチェックしましょう。
 

手術給付金のチェックポイント

病気やケガで所定の手術を受けたとき、入院の有無や手術の種類によって、入院給付金日額の10倍、20倍、40倍などの手術給付金を受け取れます。給付対象となる手術には、大きく「公的医療保険の対象となる手術を保障するタイプ」と「88種類の所定の手術を対象とするタイプ」があります。
 
「公的医療保険の対象となる手術を保障するタイプ」では、入院を伴う場合は入院給付金日額の10倍または20倍、入院を伴わない場合は5倍となっています。「88種類の所定の手術を対象とするタイプ」では、手術の種類に応じて、入院給付金日額の10倍、20倍、40倍となっています。
 

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その他のチェックポイント

その他のチェックポイントは医療保険特有のものではなく、保険商品共通のチェックポイントですので、項目の指摘にとどめます。医療保険に加入するには、「主契約」として加入する方法と、終身保険などの主契約に「特約」として加入する方法があります。
 
保障期間は、一定期間を保障する「定期タイプ」と、一生涯保障する「終身タイプ」があります。「定期タイプ」は更新ごとに保険料が高くなりますが、加入当初の保険料を抑えることができます。
 
保険料の払い込み期間も60歳までといった「有期払い込みタイプ」と、一生涯保険料を払い込む「終身払いタイプ」があります。
 
解約返戻金がない「掛け捨てタイプ」が主流ですが、「貯蓄型」もあります。医療関係の特約には「先進医療特約」や「通院特約」、「三大疾病保障特約」などさまざまなものがあります。
 
出典
公益財団法人生命保険文化センター 「平成28年度生活保障に関する調査」
厚生労働省 平成29年患者調査
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
 

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