生命保険の解約返戻金は、いつ、いくら戻ってくるの?
配信日: 2019.08.21 更新日: 2021.10.08
生命保険に入る目的は、いつどんなことが起きるか分からないけれども、予期しないできごとが起きたときに備えておくためです。専門用語も多く理解しにくい生命保険ですが、今回は解約返戻金(かいやくへんれいきん)について考えてみましょう。
目次
日本人の生命保険の特徴は?
日本人は保険好きで生命保険の加入者は80%を超え、一世帯当たりで年間約40万円の保険料の支払いをしていると言われています。また、掛け捨てよりも、貯蓄性の高い保険を好む傾向があるとも言われています。
生命保険の三利源とは?
生命保険会社の収益は、次の「死差益」・「利差益」・「費差益」の3つの柱で成り立っています。
「死差益」とは、予定死亡率によって見込まれた死亡者数よりも、実際の死亡者数が少ない場合に生じる利益です。
「利差益」とは、予定利率によって見込まれた運用収入よりも、実際の運用収入が多い場合に生じる利益です。
「費差益」とは、予定事業率によって見込まれた事業費よりも、実際の事業費が少なかった場合に生じる利益です。
この3つが生命保険会社の収益の源泉で、保険金・給付金の支払いなどに充当されます。また余剰金が出たら、配当金が出る場合もあります。
生命保険の種類は?
生命保険の種類は、基本的には「終身保険」・「定期保険」・「養老保険」の3種類です。
「終身保険」とは、満期がなく保障が一生続きます。長生きに対応した保険ですが保険料は高くなります。
「定期保険」とは、満期があり基本的には掛け捨ての保険です。そのため保険料は終身保険に比べ安くなります。
「養老保険」とは、満期があり貯蓄性の高い保険です。
新しい商品の開発や、主契約の特約(主契約に対するオプション)の部分の独立により、保険の種類もずいぶんと増えてきました。
責任準備金とは?
責任準備金とは、生命保険会社が将来の保険金や給付金を確実に支払うため、保険料の中から積み立てているお金で、保険業法で積み立てを義務づけられているものです。保険会社は必ず一定額以上の責任準備金を積み立てておかなければいけないことになっています。
解約返戻金とは?
それでは、今回のテーマである解約返戻金についてみていきましょう。解約返戻金とは、生命保険の契約者が保険を中途で解約したときに払い戻されるお金です。主に終身保険や養老保険などのように、貯蓄性のある保険を解約したときに戻ってくるお金です。
解約返戻金は、責任準備金の中から、
返戻率(%)=受け取る解約返戻金÷払い込んだ保険料総額×100
に応じて戻ってきます。
解約返戻金と満期保険金の違い
解約返戻金とは、解約手続きを行った場合や保険会社から保険契約を解除された場合などに、保険契約者に対して払い戻されるお金をいいます。
一方、満期保険金とは、被保険者が保険契約の満期時を生存して迎えた場合に支払われる保険金をいいます。養老保険や学資保険などの有期タイプの貯蓄型保険で支払われます。
解約返戻金の特徴と種類
生命保険の解約返戻金は、商品によって以下のタイプのものがあります。
(1)解約返戻金がまったくないか、あってもごくわずかな保険
定期保険や医療保険など、いわゆる掛け捨て型保険が該当します。解約した場合、解約返戻金がまったくないか、あってもごくわずかです。
(2)払込み保険料と解約返戻金が同額程度となる保険
学資保険や個人年金保険など、有期型の貯蓄型保険が該当します。満期の直前で解約した場合、払込み保険料と同額程度の解約返戻金が支払われます。
(3)払込み保険料を解約返戻金が上回る保険
終身保険などが該当します。契約から一定期間を経過すると、解約返戻金が払込み保険料より多くなります。
いつ解約返戻金が払込み保険料より多くなるかについては、契約時に渡された保険設計書や年に一度送られてくる契約内容の案などの書類で確認することができます。
(4)一定期間解約返戻金が低く抑えられている保険
商品の名称に「低解約返戻金型」とついている保険などが該当します。低解約返戻金型の保険では、保険料を払っている期間の解約返戻金が低く抑えられています。そして、保険料の払い込みが完了すると、解約返戻金の返戻率が上がるようになっています。
低解約返戻金型の保険は、保険料を払っている期間の解約返戻金が低く抑えることで、保険料が割安に設定されるというメリットがあります。
解約した際のデメリットとは?
生命保険を解約すると、次のデメリットがあります。
(1)保障がなくなる
保険契約を解約すると、解約した後の保障はなくなります。万一のことがあった場合など、経済的なリスクが他で賄えるのかを確認してから、解約手続きに踏み切るようにしましょう。
(2)新たに保険に加入できないことがある
「保険契約を解約して、他の保険に新たに加入したい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、生命保険の加入にあたっては査定があります。加入時の年齢や健康状態によっては、保険に加入できなかったり、加入時に条件がついて、保険料が上がることもあります。過去に病気をした方や持病がある方などは、特に注意が必要です。
(3)早期解約した場合、わずかな解約返戻金しか受け取れない
解約返戻金のあるタイプの保険(終身保険や養老保険など)を早期で解約した場合、解約返戻金は払い込んだ保険料よりもずっと少なくなります。
生命保険の仕組み上、契約から数年は、将来の支払いや経費などに保険料の多くが充てられることになります。そのため、解約返戻金として積み立てられる部分が少ないのです。生命保険の早期解約には特に注意が必要です。
特に、「(2)新たに保険に加入できないことがある」については注意が必要です。年齢が上がるだけで、生命保険の保険料は上がります。加入できたとしても、以前と同じ条件で生命保険に加入することは難しいといえます。
生命保険の解約は、「本当にこの保険は不要なのか?」ということを長期的な視点で見て判断するようにしましょう。
保険解約時の注意点は?
ただし、保険を解約する際は、以下の点に注意しましょう。
- ★1、生命保険会社に連絡、解約返戻金の金額を確認し、納めた保険料と比較する。(解約の申し込みではありません)
- ★2、貯蓄・保険などを含めメリット・デメリットを総合的に判断し、解約は見直し後に決定する。
- ★3、解約返戻金が納めた保険料を上回った場合は、一時所得として所得税がかかる場合があるので注意が必要。
解約返戻金の請求の仕方は?
請求の方法は簡単で、生命保険会社に連絡し、解約の請求をするだけでよいのです。解約請求書が送られてきますので、必要事項を記入・押印のうえ返送しましょう。内容に不備がなければ、1週間程度で指定の口座に振り込まれます。
解約返戻金を受け取る際に税金はかかる?
解約返戻金は、「一時所得」として所得税の対象となる場合があります。
一時所得は、[総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)]で計算します。
生命保険の解約返戻金の場合、[解約返戻金-払い込んだ保険料の総額-特別控除額(最高50万円)]となります。
したがって、払い込んだ保険料より受け取った解約返戻金の方が50万円を超えるときには、税金がかかる場合があります。
まとめ
生命保険(特に死亡保険)は、若いときの人的資本(労働で稼ぐ所得)がなくなったときに困らないために入り、若いときには厚く、年を重ねるに従い減らしていくのが基本です。
したがって、金融資産(預貯金等)のたくさんある方は、保険に入らなくてもいざというときに十分対応できるので生命保険は重要ではないでしょう。また、保険を払い込んだ金額(保険料)は流動性(自由に使える部分)がなくなりますので注意が必要です。
保険とは何かをよく考え、「心配だから入る」・「みんなが入っているから入る」ではなく、本当に自分にとって必要かどうか検討して入りましょう。あなたのことを本当に考え相談に乗ってくれる方が身近にいたらいいですね。
[出典]国税庁「No.1490 一時所得」
※2020/8/20 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表