【FPが教える】生命保険を解約したいと思ったときに知っておきたいこと
配信日: 2019.09.11 更新日: 2021.10.08
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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目次
生命保険を解約する際の注意点
1-1解約すると保障がなくなる
現在、加入している保険をやめることを解約(かいやく)といいます。解約すると、解約した時点で、以後の保障が消滅します。がんで入院している方が医療費の支払いのため終身保険を解約し、死亡保険金を受け取れなかったというケースもあります。
1-2新しい保険に加入できない、保険料が高くなる場合がある
新たに保険に加入する場合、健康状態などによって加入できなかったり、年齢が上がっているとその分保険料が高くなったりする可能性があります。解約には、このようなデメリットがありますので、他の方法で目的が達成できないか検討しましょう。
「まとまったお金がほしいから解約したい」場合の注意点
2-1解約返戻金とは
保険を解約した場合、保険の種類などによっては、保険料の一部が戻ってくる場合があります。これを解約返戻金(かいやくへんれいきん)といいます。
解約返戻金はある保険とない保険とがありますが、解約返戻金がある保険でも、その金額は商品や契約したプラン、加入期間によって異なるので、よく確認することが大事です。
解約返戻金の金額は、保険会社に直接問い合わせる、加入時にもらう「保険設計書」を見る、年に一度保険会社から送られてくる「契約内容のお知らせ」を見る、などの方法で確認することができます。
2-2解約返戻金が多い保険の注意点と解約のタイミング
終身保険などの解約返戻金が多い(貯蓄性が高い)保険は、定期保険などの解約返戻金がわずかな保険に比べ、同じ保障額であれば保険料が割高です。つまり、貯蓄部分が保険料に上乗せされているわけです。
また、解約返戻金が多い保険でも、多くの場合、解約返戻金は払込保険料の合計額より少ない金額となります。特に、加入後、短期間で解約した場合には、解約返戻金はわずかしかありません。解約のタイミングが大切です。
「まとまったお金がほしいから解約したい」という場合は、解約する前に解約返戻金の金額を確認することが大切です。
「保険料の支払いが厳しいから解約したい」場合の対処法4つ
「保険料の支払いが厳しいから解約したい」と思ったときの主な対処法について見てみましょう。
1.一部解約(減額)する
一部解約(減額)することで保険料を抑えることができます。例えば、死亡保険金額2000万円を1000万円に減額すれば、保険料が半分になります。また、減額部分の解約返戻金を受け取ることが可能です。
2.払済保険へ変更する
保険料の支払いを中止して保障を継続するしくみとして、払済保険への変更があります。払済保険とは、以後の保険料の払込みを中止し、変更時の解約払戻金を一時払いの保険料に充当して、今までの契約の保険期間を変えずに保障額の少ない保険に変更できるしくみです。
払済後の保障額には最低保障額が設定されていますので、変更時の解約返戻金が少ないと、払済保険へ変更できない場合があります。
3.契約者貸付を利用する
解約返戻金がある保険に加入している場合、解約返戻金の一定の範囲内で保険会社からお金を借りるしくみ(契約貸付制度)があります。
借入金には保険会社所定の利息がかかります。いつ、いくら返済するかは契約者の自由ですが、長期間返済しないでいると、保険契約が失効または解除となる場合もありますので留意しましょう。
4.自動振替貸付を利用する
契約が失効してしまうのを防ぐため、解約返戻金がある生命保険の場合に、保険会社が自動的に保険料を立て替えてくれるしくみがあります。
貸し付けられた保険料には所定の利息がつきます。また、貸付金は全額または一部をいつでも返済することができます。なお、解約返戻金が少ないときや、保険種類によっては、利用できない場合があります。
5.延長保険に変更する
「延長保険に変更する」とは、現時点での解約返戻金を一時払いの定期保険に充当し、保険金額を今までと同様に保障期間を変更することを指します。通常、保障期間は元の契約よりも短くなります。保険料の払込みの停止と共に、特約部分が消滅する点には注意が必要です。
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「他社の保険を検討する」場合の留意点
昔の医療保険には8日以上入院しないと入院給付金が支払われないものもあります。最近では、日帰り入院から保障する医療保険もあり、現在加入している医療保険を解約して、新しい医療保険への加入を検討している方もいるかもしれません。
前述のとおり、新たに保険に加入する場合は、健康状態等によって加入ができない、年齢が上がっていると保険料が高くなる、などの可能性があります。新しい保険に乗り換える場合は、新しい保険の契約が成立したあとに古い保険を解約するという順番が大切です。
解約の具体的な方法
生命保険を解約する場合、生命保険会社や保険代理店の営業担当者へ問い合わせる、保険会社のコールセンターに問い合わせる、直接生命保険会社の窓口に行く、などの方法があります。
生命保険会社や保険会社のコールセンターに問い合わせた場合、解約の旨を伝えれば解約書類が送られてきます。それに記入し、返送すれば、そのまま解約に向けて保険会社が手続きを進めてくれます。
生命保険会社の窓口に直接行った場合は、その場で解約の手続きができるので、急ぎの方は窓口に足を運ぶのがよいでしょう。
解約時には解約書類のほかに保険証券もしくは本人確認の公的書類などが必要になります。また、捺印のための契約印が必要な場合もあります。保険会社によって違いがありますので、スムーズに解約手続きを進めたいなら、事前に必要なものを確認しておきましょう。
まとめ・生命保険の解約は慎重に
保険を解約することでまとまったお金が入ったり、より自分に適した保険に入り直すことができます。しかし、解約すると契約時のすべての保障は消滅してしまいます。新しい保険に入ろうと思っても、健康状態や年齢の問題で保険料が高額になることも少なくありません。
今回ご紹介したように、保険料の支払いが厳しい場合には、解約をせずとも契約を続ける方法がいくつかあります。このような選択肢があることを念頭に置いてください。それでも解約を検討するなら、新しい保険の契約が成立したあとに古い保険を解約するという順番を守ることが大事です。
生命保険の解約は総合的な判断を忘れず、慎重に行いましょう。
※2020/8/20 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー