【FP監修】公的介護保険の申請方法と注意点を解説
配信日: 2019.09.22 更新日: 2021.06.23
65歳以上の約5.5人に1人が要介護・要支援者で、介護原因のトップは認知症です。また、老老介護や介護離職などといった家族の負担を考えると、介護保険への理解は必須と言えます。
執筆者:青沼英明(あおぬま ひであき)
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員
国内外の証券会社で証券アナリスト業務に従事。2012年3月より、資産運用・財産管理コンサルティング・サービスのほか、生命保険代理店、証券仲介業、不動産・老人ホーム紹介業等を兼業。
まずは、介護保険についておさらい
厚生労働省の介護保険事業状況報告(※)によれば今年1月末現在、65歳以上の約5.5人に1人、85歳以上では約1.7人に1人が介護保険受給者であることを鑑みれば、介護の問題は本人だけでなく、介護する家族も対処すべき課題と言えます。
介護に対する経済面からの不安の多くは、必要となる費用や介護期間が明確でないことにありますが、こうしたなかで一助となる介護保険の概要をおさらいしてみましょう。
介護保険は40歳以上の国民が加入する強制保険で、65歳以上で介護や支援が必要となった場合に介護保険サービスを受けることができます。ただ、40~64歳でも、老化が原因とされる16種類の特定疾患で要介護・要支援になった場合は、介護保険サービスを受けられます。
介護保険サービスを利用するための手続き
介護保険サービスを利用するには、まず居住する市区町村に「要介護認定」を申請する必要があります。また、申請時には「要介護認定申請書」、「介護保険被保険者証」、「マイナンバーカード・身分証明書」が必要となります。
事前に要介護度の判断材料となる意見書を書いてくれる主治医を決めましょう。
その後の要介護認定調査の流れを大まかに示すと、
(1)居住する市区町村の介護保険窓口で、本人または家族が代行して「要介護認定」を申請
(2)申請後1~2週間のうちに、市区町村の調査員の訪問による一次判定
(3)訪問調査や主治医の意見書等に基づく介護認定調査会による二次判定
(4)原則申請から30日以内に、介護の要・不要や要介護度区分等の認定結果を通知
(5)原則3ヶ月~2年ごとに、身体状況の変化によって要介護度の区分変更等の見直し
介護認定の条件とは?
介護保険サービスを利用できるのは、(1)介護保険の被保険者で、(2)要介護度区分の要支援1~2または要介護1~5の認定を受ける、という2つの条件を満たす必要があります。
なお、(1)の介護保険の被保険者となる40歳からは、加入する医療保険の算定に基づいて介護保険料を納めるようになりますが、40~64歳までの第2号被保険者期間は、老化が原因とされる認知症や骨粗しょう症など16種類の特定疾病により、介護が必要と認定された場合に限定して介護保険サービスが適用されます。
一方、65歳以上の第1号被保険者は、居住する自治体ごとに決められる介護保険料を支払うことにより、原因を問わず、介護が必要であると認定された方には介護保険サービスが適用されるという、第2号被保険者との大きな違いがあります。
(2)の要介護度の区分では、介助が常に必要か否かは要介護1か2かが一応の目安となりますが、ここで重要なことは要介護2~5では介護費用や家族のサポートなどの負担が増す傾向にあることです。
このため、国の要介護認定に連動して受け取れる、一般的なタイプの民間の介護保険でも、要介護2以上での給付が主流となっています。
申請前に確認しておきたいポイント
認定調査の結果は、その後の適切な介護を行っていくうえで重要となるため、申請前に普段の症状や病気やケガの既往症、不便や不安に感じていること、家族のサポート状況などのメモを取っておき、認定調査の際の質問に対して自分なりの回答を整理しておきましょう。
認定結果に納得いかない場合の対処法
認定結果に納得いかない場合の対処法には、「不服申し立て」と「区分変更申請」があります。
「不服申し立て」は、各都道府県の介護保険審査会に不服を申し立て、認定が不当と判断された場合は市区町村の認定を取り消して改めて調査します。
「区分変更申請」は、要介護度が変化したと判断した段階で申請するものですが、希望する要介護度に認定されない可能性もあります。
まとめ
認定の要介護度の区分によって、介護費用や家族のサポートなどの負担が異なる現状を踏まえれば、さまざまな専門家に相談しながら要介護者の現状を常に正しく把握することが大事です。
特に、在宅介護か施設介護かの選択においては、要介護者本人の希望を尊重しながら、今後の回復のメドなど主治医からの情報を家族間で共有し、適切な判断を心がけましょう。
出典(※)厚生労働省 介護保険事業状況報告(暫定) 全国集計表
執筆者:青沼英明
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員