【ポイント解説】がん保険の選び方で押さえておきたい部分
配信日: 2019.09.23 更新日: 2021.09.20
また、治療の長期化や再発による費用の増加、働けなくなった場合の収入減少などのリスクを考えると、がん保険は選び方次第で自分や家族の不安を解消する役割を担えるでしょう。
執筆者:青沼英明(あおぬま ひであき)
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員
国内外の証券会社で証券アナリスト業務に従事。2012年3月より、資産運用・財産管理コンサルティング・サービスのほか、生命保険代理店、証券仲介業、不動産・老人ホーム紹介業等を兼業。
がん保険の基礎
日本で2016年に新たに診断されたがんは約99.5万例、2017年にがんで死亡した人は約37.3万人にも上りました(※1)。ただ、罹患率は高齢者人口の増加などで上昇しているものの、医療技術の進歩や検診受診率の上昇に伴う早期発見・早期治療によって、死亡率は2000年以降大きく減少してきています(※2)。
5年相対生存率を見ても62%(男性59%、女性66%)に上昇するなど、がんが治るようになってきたため、金銭面の備えとしてのがん保険への需要も高まってきていますが、ここでがん保険の基礎を確認しておきましょう。
がん保険の保障対象は文字通りがんのみで、がんを含む病気やケガを幅広く保障する医療保険とは異なります。このため、どうしても医療保険の優先順位が高い傾向にあり、加入率は医療保険の約9割に対し、がん保険は約6割にとどまっています(※3)。
しかし、がん保険は保障をがんに特化しているため、医療保険に比べて保険料が安く、また、冒頭で述べたようにがんは罹患率が高く、経済的負担が増すケースも少なくないため、万一のリスクに対する費用対効果は相対的に大きいと言えます。
がん保険の保障内容について
日々、目覚ましい進歩をとげるがん医療に合わせて、がん保険の保障内容も大きく変化しています。
がんの治療費や治療期間は、罹患したがんの部位やステージによってさまざまですが、全体的には入院日数が短期化し、抗がん剤や放射線などは通院での治療が増えています。
こうした中では、がん保険も従来の入院を主契約とするタイプから、一時金に重点を置き、入院や手術、通院などの保障を柔軟に選べるオーダーメードタイプへの変化が見られます。
具体的な保障内容としては、 (1)診断・治療一時給付金、(2)入院給付金、(3)手術給付金、(4)通院給付金、(5)先進医療給付金、(6)放射線治療給付金、(7)抗がん剤・ホルモン剤治療給付金、などですが、現在は(1)をメインの保障とし、(2)~(7)をオプションとするがん保険が主流になってきています。
がん治療でかかる主な費用について
がん治療では、公的医療保険制度の対象となる一般的な入院や手術にかかる費用のほか、自由診療(保険外診療)や先進医療を受けた場合には自己負担の大きい費用がかかります。
状況によっては差額ベッド代やサプリメント、医療用かつら(1~30万円程度)などの費用のほか、女性の生涯罹患リスクが11人に1人と高い乳がんの場合、乳房再建手術(高額療養費還付後の実質負担額9~14万円)などの費用が発生する場合もあります。
がんと最新医療について
がんの最新医療の多くは、「厚生労働大臣が定める高度な医療技術を用いた療養である先進医療」が当てはまります。
ただ、先進医療は新しい医療技術ではあるものの、まだ裏付けデータに乏しく、全ての人に最善の治療とは言い切れないほか、公的医療保険対象外の重粒子線や陽子線などの技術料は全額自己負担で、1治療(照射1回も複数回も同額)当たり約250~350万円と高額になります。
こうした中で、上記(5)のがん先進医療特約(支払限度2000万円)に月額保険料約100円で加入していれば、自己負担の約250~350万円全額を保険給付金で賄えます。
がん保険を選ぶ際の重要なポイント
がん保険を選ぶ際の重要なポイントは、(1)最新のがんの医療状況を把握し、それに合ったタイプのがん保険を見極めることと、(2)ライフステージに応じて見直しを行いながら、保障とトータルコストのバランスを図っていくことです。
オーダーメードタイプが主流となってきたがん保険を選ぶ際には、保障内容に加えて、保障期間や支払期間、費用対効果などを勘案した下記6点を頭に入れておくと良いでしょう。
(1)主契約は「入院給付金タイプ」でなく、「診断・治療一時給付金タイプ」の選択が必須
(2) 「診断・治療一時給付金」は、受取が「1回」でなく、「無制限」を選択して金額で調整
(3)がん先進医療特約 (支払限度2000万円) は月額保険料約100円と安いので付加する
(4)費用対効果の点から、入院給付金や通院給付金の必要性は相対的に低い
(5)保障期間は「定期」でなく「終身」、払込期間は「終身払い」でなく「短期払い」がベター
(6)医療保険にがん特約として付加するか否かは、保険料や見直しのしやすさで個別に判断
まとめ
がんに罹患するか否かは不確実性が高い一方、累計支払保険料であるトータルコストは、上記6点をどのように選択するかで明確になると同時に、大きな差を生む要因にもなります。
こうした中での保険に対する考え方は、まず毎月の収入から保険料に回せる金額を決め、その範囲内で自分の不安をカバーできる保障に優先順位をつけて選ぶことを考えてみましょう。
出典
(※1)国立がん研究センター 最新がん統計
(※2)国立がん研究センター がん情報サービス 年次推移
(※3)生命保険文化センター 平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)
執筆者:青沼英明
ハッピーライフ・未来ラボ代表、CFP(R)、日本証券アナリスト協会検定会員、 宅地建物取引士、 トータル・ライフコンサルタント(生命保険協会認定FP)、第1種証券外務員