更新日: 2020.06.11 その他保険
失業してしまったら、年金や健康保険はどうなるの?知っておきたい減免・猶予制度
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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失業後の公的医療保険
健康保険組合、協会けんぽ、共済組合に加入していた人が退職する場合、退職の日までは元の健康保険等を使うことができますが、退職の翌日には被保険者の資格を失ってしまいます。あらかじめ次に加入する医療保険について考えておく必要があります。
選択肢としては、大きく、(1)配偶者や子どもの扶養家族になる、(2)それまで加入していた健康保険等に引き続き加入する(任意継続被保険者)、(3)国民健康保険に加入する、の方法があります。
このほか、特定健康保険組合に20年以上加入していた人は、引き続きその組合に特例退職被保険者として加入する方法もあります。
(1)扶養家族になれば保険料は不要です。最初に検討しましょう。扶養家族になるには一定の収入要件を満たす必要があります。扶養に入るには、5日以内に保険加入者の勤務先に申請します。
(2)任意継続被保険者になるには、退職後20日以内に任意継続を申し出ます。最長2年間加入できます。退職前は事業主が保険料の半分を負担してくれていましたが、任意継続になると保険料は全額自己負担になります。
ただし、保険料には上限があり、退職時の標準報酬月額が30万円(平成31年4月分以降。協会けんぽの場合)を超えていた場合は、30万円の標準報酬月額により算出した保険料です。毎月の保険料はいくらになるのか、保険者に確認しておくとよいでしょう。
(3)国民健康保険の被保険者になるには退職後14日以内に市区町村の窓口に申請します。
国民健康保険の減免制度
災害、失業等特別な事情により収入が著しく減少したとき、保険料の減免を受けられる場合があります(特別な事情による減免)。また、非自発的失業(離職)者の方について、国民健康保険料が軽減される制度があります(非自発的失業者軽減制度)。
国民健康保険税は、前年の所得などにより算定されます。軽減制度は、国民健康保険税を計算する際に、該当者本人の前年の給与所得を一定期間30/100とみなして計算します。
さらに、失業等によって収入が著しく減少したとき、保険料ではなく、医療費の自己負担(1割~3割)についても、減免や徴収猶予が認められる可能性があります。基本的に減免等は申請しないと受けられませんので、市区町村の窓口に相談しましょう。
なお、介護保険料や後期高齢者医療保険料にも同様の減免制度があります。
年金の種別変更・減免・猶予制度
公的年金は2階建てです。1階部分は「国民年金」、2階部分は「厚生年金保険」です。国民年金のうち自営業者、学生、専業主婦などは「第1号被保険者」、会社員、公務員などは「第2号被保険者」、第2号被保険者に扶養されている配偶者などは「第3号被保険者」といいます。
勤務先で厚生年金保険に加入していた人(第2号被保険者)は、退職により、第1号または第3号に種別を変更する必要があります。速やかに手続きを行いましょう。
国民年金保険料についても、保険料の減免や猶予の制度があります。一定の所得以下の20歳以上の学生は、申請により学生期間の国民年金保険料の納付が猶予されます(学生納付特例制度)。
また、20歳以上50歳未満の方で、本人および配偶者の所得が一定以下の場合、保険料の支払いが申請により猶予されます(納付猶予制度)。ただし、追納しない限り、年金額には反映しません。
前年の所得が一定以下の人や失業などで保険料の納付が困難な人などは、所得や本人の選択により保険料に関し「4分の1免除」「半額免除」「4分の3免除」「全額免除」が受けられます(申請免除)。これら申請免除は、年金額に一定の割合で反映されます。
意外と知られていませんが、免除の所得基準を超えていても、失業などの一定の事由に該当したとき、事由に該当した年の翌々年の6月(学生納付特例制度は翌々年の3月)までの期間について、特例として保険料納付が免除される制度があります(特例免除)。失業・事業廃止した方の審査対象所得をゼロとして審査する点が特徴です。
免除や学生納付特例、納付猶予の分の保険料は10年までさかのぼって追納できます。減免等の申請を行わず、未納のまま放置しておくと万一のとき、障害年金などを受け取れなくなる可能性があります。必ず、減免等の申請を行いましょう。
なお、生活保護の生活扶助や障害年金を受けている方は、届出により保険料が免除されます(法定免除)。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー