更新日: 2020.09.04 生命保険

一見似ているようだけど全く違う!積立利率変動型終身保険と利率変動型積立終身保険

一見似ているようだけど全く違う!積立利率変動型終身保険と利率変動型積立終身保険
積立利率変動型終身保険と利率変動型積立終身保険は「利率変動型」の位置が違うだけで、一見すると同じ種類の保険のようですが、仕組みはまったく異なる保険です。利率変動型積立終身保険を、積立利率変動型終身保険のことだと勘違いするなど両者を混同している人が意外と多く見受けられます。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生命保険の基本

生命保険には(1)定期保険、(2)終身保険、(3)養老保険があります。複雑に見えるその他の生命保険も、これら保険の組み合わせか応用にすぎません。まずは、この3種類の保険を理解しましょう。
 
(1)定期保険は、保険期間を定めて(60歳、70歳までや5年、10年、30年など)契約します。この期間に死亡・高度障害状態になった場合に保険金が支払われます。終身保険や養老保険に比べ、割安な保険料で高額な死亡保障を得ることができるメリットがあります。養老保険と異なり、満期保険金はありません。保険期間が短期の定期保険は、解約返戻金がわずかかまったくありません。長期の定期保険は貯蓄性があります。
 
(2)終身保険は定期保険と同様に死亡・高度障害状態の場合に保険金が支払われますが、定期保険と異なり、保険期間は一生涯続きますので相続対策として活用できます。定期保険と同様、満期保険金はありません。解約返戻金は所定の範囲内で徐々に増えていきます。
 
(3)養老保険は、定期保険と同じく10年、20年など保険期間を定めて契約し、その間に死亡・高度障害状態になった場合に死亡(高度障害)保険金が支払われます。満期時に生存していた場合には、死亡保険金と同額の満期保険金が支払われます(生死混合保険)。満期保険金があるのが特徴です。解約返戻金は所定の範囲内で増えていきます。
 

積立利率変動型終身保険

積立利率変動型終身保険の大まかな仕組みは、終身保険と同様です。すなわち、死亡すれば死亡保険金が支払われ、解約すれば解約返戻金が支払われます。保障は一生涯続きます。
 
普通の終身保険との違いは何でしょうか。
 
普通の終身保険の保険金や解約返戻金は、契約時の予定利率等により確定し定額が支払われる仕組みです。したがって、予定利率が低い時に契約すると、将来のインフレ(貨幣価値の下落)に弱いといった問題点があります。
 
一方、積立利率変動型終身保険は、積立利率が定期的に見直され(最低保証あり)、利率が高くなると解約返戻金や死亡保険金が増加する可能性がありますので、ある程度インフレに対応できます。また、契約時の保障額が同じであれば、普通の終身保険よりも保険料は割高です。現在は、外貨建てや一時払い商品が主流です。

利率変動型積立終身保険

従来の主力商品だった定期付終身保険は、終身保険に定期保険を組み合わせたものです。定期保険部分を厚くすれば、保険料を低く抑え保障額を大きく設計できます。
 
この場合、大きな保障を得られるのは一定期間だけですが、保険外交員の説明不足から契約者は一生涯大きな保障が得られると思い込むなどトラブルなどが多かったので、定期付終身保険に代わって、2000年から利率変動型積立終身保険が販売されるようになりました。
 
利率変動型積立終身保険は、積立金と保障を組み合わせた保険です。
 
保険料払込期間中、(1)保険料の一部で積立金を蓄積し、保険料払込期間満了後はその時の積立金をもとにして、一定の金額までの範囲で、その時の健康状態にかかわらず終身の死亡・高度障害保障を確保することができ、(2)残りの保険料を、死亡保障や医療保障などの保障機能に重点を置いた貯蓄性のない保険に充当します。
 
積立金と保障を、どのように組み合わせるかは自由に設定・変更できます。この点から、利率変動型積立終身保険は自由設計保険ともいわれます。また、銀行における預金口座(アカウント)に似た積立金部分があることから、アカウント保険ともいわれます。
 
積立金が少なければ終身保険への移行ができませんので、「終身保険」というのは誤解を与える商品といえるでしょう。なお、適用される予定利率は、利率変動型という名称のとおり、市場の金利動向に応じて一定期間ごとに見直され、変動します。
 
積立金が柔軟に活用できまる点が特徴です。一時金を投入することによって積立金を積み増すことも、必要に応じて引き出して使用することもできます。
 
また、積立金から保障部分の保険料へ充当することも可能になっています。保障部分は更新のたびに保険料負担が増大しますが、その増大分を積立金によってまかなう場合、保険料の負担は抑えられます。しかし、積立金は減っていきますので、最終的に終身保険や年金に移行するための原資がなくなってしまう問題があります。

まとめ

両者とも保険の名称からだけでは違いがよくわかりません。積立利率変動型終身保険は終身保険といえますが、利率変動型積立終身保険は終身保険とはいい難い保険です。仕組みも複雑です。
 
複雑だと感じる場合は、保険外交員の説明だけではなく、パンフレットなどをよく読み、理解した上で契約をすることを心がけましょう。パンフレットなどを読んでもわからない点は利害関係のない第三者のアドバイスを受けると良いでしょう。
 
また、生命保険は長期におよびます。数十年後に保険の内容を勘違いしていたことに気付くことも少なくありません。定期的に見直すことが大切です。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。


 

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