更新日: 2020.01.20 インタビュー

AIとビッグデータで、信用スコアビジネスの未来を切り開く!

AIとビッグデータで、信用スコアビジネスの未来を切り開く! J.Score大森社長にインタビュー

Interview Guest : 大森 隆一郎

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

AIとビッグデータで、信用スコアビジネスの未来を切り開く! J.Score大森社長にインタビュー
2017年9月より、ビッグデータとAIを活用した個人向け融資サービスとして日本初となる「AIスコア・レンディング」を開始したJ.Score。申込者の将来の可能性を診断する新しいサービスは、現在100万人もの登録者を集めています。
 
個人向け融資サービスにいち早く最先端の技術を取り入れた大森社長ですが、いったいどのような思いから「AIスコア・レンディング」を始めたのでしょうか。また信用スコア、すなわちAIスコアを活用し、どのようなビジネスを思い描いているのでしょうか。
 
AIとビッグデータで切り開く信用スコアサービスの未来と、これからのデータ社会について大森社長に伺いました。
 

Interview Guest

大森 隆一郎

大森 隆一郎(おおもり りゅういちろう)

大阪大学法学部卒業後、旧富⼠銀⾏(現みずほ銀⾏)⼊⾏。本部リテール部門の経験が長く、さまざまな新商品サービスを開発し、みずほ銀行のリテールビジネスのインフラを築く。また支店長や支店部長を務めるなど営業の現場でも活躍。2015年、みずほ銀⾏執⾏役員に就任。当社のビジネスモデル構築を主導し、2016年11⽉より、みずほ銀行とソフトバンクによって共同設立された株式会社J.Score 代表取締役社長CEO。

FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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現在ではなく「将来の可能性」に光をあてた、 AIによる新しいレンディングサービス

まずはAIを使った個人向け融資サービス「AIスコア・レンディング」について教えてください。従来のサービスとどう異なるのですか?
一番大きく異なる点は、AIとビッグデータによってお客さまの信用力と可能性をスコア化し、そのスコアによって融資の可否や融資額や金利を判断するという点です。
 
生年月日や仕事、住まいなど、18項目の質問に答えていただくと、その情報をもとにAIがお客さまの信用力と可能性をスコア化します。このスコアが600点以上なら借り入れの申し込みが可能です。
 
従来の個人ローンサービスでは、借り入れの審査に落ちたとしてもなぜ落ちたのかわかりませんでした。しかし、AIスコアは借り入れの基準が数値として明確になっています。また融資可能額や金利も、申し込み前に目安を知ることができます。そういう意味では、透明性が高いサービスといえます。
 
AIスコアで高く評価されるのは、どのような人ですか?
一言で表すのは難しいですが、将来性があるかどうかという点を重視しています。例えば従来のサービスの場合、若い人は現在の年収が低かったり、勤続年数が短かったりするので、借入条件が不利になってしまいがちです。
 
しかし、AIスコアは現在の年収だけではなく業界や職種などから将来性を判断し、将来の年収ベースで融資可能かどうかを診断しますので、若い方でも良い条件で借り入れできる場合があります。
 
自分の可能性や信用力が数値として出るというのは、ある意味こわいですね。一度出たスコアは変えられないのですか?
いえ、一度診断されても、多くの情報を入力することでスコアアップが可能です。
 
最低限18項目を入力するだけでスコアは出ますが、任意で性格やライフスタイルなどに関する150項目の質問に答えたり、運動や学習の週間を記録したり、みずほ銀行やソフトバンク、ヤフーと当社のデータ連携をお客さまが了承することで、スコアアップを目指すことができます。
 

向上心を持つ人に手を差し伸べる。 「未来への投資」という選択

なぜ「現在」ではなく、「将来」を重視したサービスを始めたのですか?
それは会社設立時に策定した当社のビジョンとして、「より自分を高めたいという気持ちを持った全ての人が、安心して挑戦できる新しい日本をつくる」というものがあるからです。借り入れには、どうしても悪いイメージがつきまといますが、「未来への投資」というポジティブな考え方をぜひ持ってほしいと思います。
 
例えば英会話ができるようになりたいと考えている人がいるとして、もし一年間お金を貯めるとなると、その分時間がかかってしまいます。しかし借り入れをすれば一年間という貴重な時間を買える。つまり時間を節約できるのです。
 
どんな人にも融資を行っているのですか? 例えば、主婦の方や学生、外国籍の方でも……?
自己啓発など前向きな目的の資金に利用し、一定の収入があり賃金業法の範囲で当社の申込条件に適合する方であれば、お借り入れが可能です。また留学生や外国籍の方も同様です。
 
外国籍の方は永住権がないと融資を受けられないケースが多いのですが、先ほども申し上げました通り、私たちはより自分を高めたいと思っている全ての人に利用していただきたいと思っています。そのためにできる限り多くのお客さまに門戸を開いていきたいと考えています。
 
最低金利0.8%と日本で最も低い金利ですが、なぜこのようなことが実現できたのですか?
やはりAIを使うことでデフォルトの判別精度が高められたという点が挙げられます。
 
また弊社の場合、店舗やATMを持っていませんし、それにともなう人件費も発生しません。カードも発行しません、お客さまが利用したいメインバンクの口座を指定していただければ、そこに資金をお振り込みします。こうしたさまざまなコストを削減している分、金利を低く抑えることができています。
 

「お金を借りる」ことを、 もっと前向きなイメージに

アメリカでも新しい個人向け融資サービスが登場していますが、日本の個人向け融資サービスは、今後どのように発展していくと思いますか?
日本ではネガティブなイメージがありますが、全ての借り入れが悪いわけではありません。生活資金やギャンブルなどのための借り入れはあまり望ましくありませんが、未来のための前向きな借り入れは返済が可能な範囲であれば積極的に活用していくべきだと私は思います。
 
私たちが目指しているのは自己投資のためのポジティブな借り入れです。
 
例えば、アメリカには日本よりも借り入れに前向きな意識、文化があります。学生たちは何百万も借りて大学を卒業し、起業や就職によって、キャリアアップすることでお金を返していきます。そうやってきちんと返済したというクレジットヒストリーをつくりながら、自分の信用力を高めていく文化があります。
 
透明性を確保し、暗いイメージを払拭することで、日本における個人ローンマーケットも広がっていくと思いますし、われわれがその先駆者として意識や文化を変えていきたいと思っています。
 

どんな情報をどんな企業に提供するのか、 個人個人が判断していく時代

2019年12月末に、情報銀行の認定を受けたというニュースを拝見しました。現段階でどのようなことを考えていますか?
われわれのことを貸金業者だと思われている方も多いかもしれませんが、AIスコアサービスをプラットホームにするFinTech企業であると位置づけています。確かに最初はレンディングからサービスインしましたが、これからAIスコアをベースにさまざまなサービスを展開していく計画です。
 
その一つとして次に情報銀行、すなわちデータビジネスを考えています。現在、登録者数は100万人を超えていますので、ここで集めた情報をお客さまの同意を前提に活用して、新たなビジネスを行っていきたいと考えています。
 
情報を提供するユーザー側には、どんなメリットがあるのでしょうか?
金銭的な報酬が動機になる場合もあれば、この企業を応援したいなどの動機があってもよいと思います。例えば株を思い浮かべてみるとわかりやすいかもしれません。
 
もうけようと思っている人もいるけど、会社に投資することでサービスの開発やマーケティングに役立ててほしいと思っている人もいます。金銭的対価だけでなく、社会貢献を目的とした情報提供の考え方もあっていいのではないでしょうか。
 
最近、データ使用の停止を個人が要請できる「使わせない権利」が話題になっています。このような中、データビジネスについてどうお考えですか?
許可なく情報を抜き取られ、ビジネスに活用されるというような状況は絶対に避けるべきだと思います。そのために、情報銀行サービスは透明性が高く消費者にとって良い仕組みだと思います。
 
現在、情報銀行サービスを始めるには許認可は必要ありませんが、消費者の個人情報に対するセキュリティー意識を踏まえれば、当社のようにIT連盟の認定を取得することの価値は大きいと考えます。
 
どの企業にどんな情報を提供し、企業はどのような対価を支払うのか、全て明確にする必要があります。個人はどの企業に情報を提供するのかを自分で判断して、いつでも提供をやめられる。こういう透明性の高いデータビジネスをわれわれが先駆者として日本で構築し、ぜひ日本から海外に発信していきたいと考えています。
 

30代、40代は自分を見極める時期。 今のうちから能力を高める努力を

弊社のメディアの読者は、30代、40代の働く人々がターゲットです。これからの時代を踏まえ、何かアドバイスはありますか?
やはり自分の立ち位置や能力を客観視することが大切です。足りないものが見えてくると、そこを補うことができます。30、40代のうちに見極めておかないと、年をとってからでは取り返しがつかなくなります。
 
日々、ルーティーンで仕事をこなすのではなく、今のうちから自己実現や夢をかなえるために自分に必要な能力を身に着ける努力をしておいた方がよいと思います。
 
老後の資金不足についてメディアで日々取り上げられているかと思います。近年、高齢者向けの個人向け融資サービスも見られるかと思いますが、老後における個人向け融資サービスの活用について、ご意見などありましたらお願いします。
今の個人向け融資サービスは、70歳くらいを過ぎると借り入れが難しくなります。人生100年時代といわれているのに、退職金などの資産運用が十分であればいいのですが、そうでない場合はどうすればいのかと不安に思う方も多いと思います。
 
私は、自宅を担保にしてお金を借りるリバースモゲージローンが日本にもっと広まればいいと思っています。アメリカでは老後資金の調達方法として当たり前の方法ですが、日本ではあまり広まっていません。
 
それはなぜかというとアメリカではリバースモーゲージローンは、ある程度、国家レベルで制度保障をしていますが、日本では民間金融機関のリスクで対応しているために、どうしても融資条件が厳しくなってしまうからです。もちろん、日本における借り入れに対するネガティブな意識も影響していると思います。
 
老後の資産活用の一つの在り方として、国がある程度支援するかたちでリバースモゲージローンの活用をもっと広めることができれば、定年後のセカンドライフはもっと充実したものになる可能性があると思っています。
 

取材を終えて

自分の夢や目標に向かって、安心して挑戦できる社会をつくる。そんな大森社長の姿勢から、来るべきデータ社会に明るい未来を感じられたインタビューでした。
 
また、情報は守るだけでなく、自らの判断で提供していくものだという新たな視点を得ることができました。AIとビッグデータがますます活用され始める時代。今後のビジネスの参考になれば幸いです。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 

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