更新日: 2019.01.10 その他暮らし

日本の企業や政府が外国人労働者の環境や仕組みを変える努力をしなければ、高度外国人材はどんどん日本から流出する。

日本の企業や政府が外国人労働者の環境や仕組みを変える努力をしなければ、高度外国人材はどんどん日本から流出する。
現在ではAI(人工知能)の開発者など、高度な技術をもつ外国人や専門的な職務に就く外国人の争奪戦が、世界中で繰り広げられています。
 
このような人材は世界的にみても引っ張りだこであり、研究所や一般企業はもちろんですが、各国がさまざまな施策を打ち出しています。
 
日本も在留資格「高度専門職」を創設し、該当する外国人には1年間の滞在で永住申請ができるようにしたり(通常は10年以上の滞在が必要)、親を呼び寄せる(現在の入管法では、通常できない)メリットを付与したりして、各国の優秀な外国人を日本に呼び寄せています。
佐野誠

Text:佐野誠(さの まこと)

ACROSEEDグループ 代表・行政書士

行政書士法人、社会保険労務士法人、税理士法人を併設したACROSEEDグループを設立し、外国人向け法務サービスを提供しています。
外国人やそれに関わる人々に”信頼と安心”のプロフェッショナルサービスを提供し、日本社会の調和と活力あるグローバル化に貢献しています。
http://www.acroseed.co.jp/

高度外国人を呼び寄せたい日本。しかし外国人は日本に魅力を感じていない?

優秀な外国人を確保したい日本ですが、そこで問題となっているのが、そのような外国人からみた日本の魅力度合いです。下の図は1999年~2013年における、各国の研究者の流出入数を示したものです。アメリカや中国では9000人以上の研究者が増加しているのに対し、日本は8700人のマイナス。つまり、日本から出国してしまっています。
 
また、このような外国人の卵でもある外国人留学生の日本での就職率は30%未満といわれ、年間で約1万人の留学生が日本で就職せずに他国に流出しています。この原因は何なのでしょうか。


 

留学生による日本の魅力

下記の表は、外国人留学生や元留学生に行ったアンケート調査の結果です。80%以上の人が日本に住むことは魅力的だと答えている半面、日本で働くことに関して、魅力的だと答えたのは20%強。残りの80%近くの人が、中立か魅力的ではないと回答しています。
 
日本の文化や生活習慣などは、外国人から高い評価を受けていますが、働き方に関しては否定的な見方です。これでは観光客が増えても、日本の労働市場において全く賑わいを見せていないという状態にも納得がいきますね。
 

海外と日本の働き方

日本企業の特徴として、新卒採用や年功序列などがあげられます。実は海外では基本的に通年採用で、新卒採用という制度がない国も多いようです。
 
通年採用では、条件さえ満たしていれば、企業の求人に誰でもいつでも自由に応募することができます。そのため、就職浪人などという考えもなく、学校卒業後に自分のやりたい活動を行い、30歳を過ぎてから初めて就職するといったケースも珍しくありません。
 
また、年功序列という考えもなく、すべては実力主義となります。仕事ができる人はお給料が高く、そうでない人は低くなります。このお給料の差は、日本よりも海外の方が顕著です。
 
悪く言えば弱肉強食、よく言えば頑張った人が報われる制度と言えます。
 
また、欧米ではまず仕事があり、それに見合った人材を募集します。そのため、職種や必要なスキル、資格、経験、売上など、求められるパフォーマンスが明確です。それがわかったうえで求職者は応募するので、入社後にどのような仕事に就くのか、会社が自分に何を求めているのかが理解しやすく、目標達成に向けて効率的に動くことができます。
 
一方、日本では新卒採用などでまず身内となり、そこから研修や教育を施し、適性によって人員を配置していきます。
 
そのため、とりあえず就職するという感覚が強く、採用後に仕事が決まることも珍しくありません。お給料も年功序列の傾向が強く、後から入った若い人がどんなによいパフォーマンスを出しても、年長者にはかなわないのが現実です。
 

問われる日本の働き方

下の図は、外国人留学生が日本の就職活動において感じた問題点です。
 


やはり日本特有の新卒採用の仕組みや、職務内容の不明確さなどが原因で、就職でつまずく人が多いようです。日本の企業や政府は、このあたりのやり方を改める、または仕組みをもっとわかりやすく伝える努力が求められています。
 
高度外国人材が海外に流出してしまうのは、「いくら頑張っても思うように給料が増えない。同じ努力をするのなら、海外で働いた方が収入も増える」と考える人が多いことが原因と言われています。
 
欧米の働き方は、一握りの勝者を作りますが、多くの敗者も生まれます。日本の働き方では、皆が平等ですが、生ぬるいとも言えます。
 
どちらもよい面と悪い面がありますが、世界全体の流れをみてみると欧米の働き方が主流となっています。日本独自のよい面は維持しながら、欧米流の働き方を取り入れていく必要があるのかもしれません。
 
Text:佐野 誠(さの まこと)
ACROSEEDグループ 代表・行政書士

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