最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.11.15
暮らし

奨学金を保護者が使い込みでまさかの高校除籍処分 悲劇をなくすには

会計検査院の検査で、低所得世帯の高校生を対象とする都道府県の「奨学給付金」について保護者らが受給した給付金を教育費以外に充てていたとみられ、その結果、子どもが除籍処分など学業上の不利益を受けているケースがあることがわかりました。
 
保護者が受給する現行のシステムを見直すべきではないでしょうか。
 
新美昌也

執筆者:

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

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新美昌也

執筆者:

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
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高校生等奨学給付金とは

高校では授業料以外にも、教育に必要な経費がかかります。
 
たとえば、修学旅行費、校外活動費、生徒会費、PTA会費、教材費、学用品・通学用品費等です。
授業料に関しては、高等学校等就学支援金制度があり、国が学校に支援金を支払い、学校が生徒の授業料と相殺することで、教育費負担を軽減しています。
 
対象は、市町村民税所得割額と道府県民税所得割額の合算額が50万7,000円未満(モデル世帯で年収約910万円未満)世帯の生徒で、公立高校の授業料相当額の就学支援金が支給されます。私立高校生には最大2.5倍の加算があります。
 
これに対し、授業料以外の経費を支給するのが高校生等奨学給付金です。対象は生活保護世帯と非課税世帯です。
 
就学支援金と異なり奨学給付金は、都道府県知事又は都道府県教育委員会が生徒の保護者等に支給することとされています。
 
なお、保護者等から奨学給付金の受給等を高校等に委任する旨の委任状の提出のあった場合には、高校等は、保護者に代わって奨学給付金を受領できます(代理受領)。
 
高校等の生徒に該当するかどうかは、原則として7月1日現在の財政状況によって判断されます。給付額(年額)は、非課税世帯(第1子)の場合、国公立が80,800円、私立が89,000円となっています。振込は12月頃です。
 

 

会計検査院による検査結果の概要

9府県に対して、代理受領による充当が行われているか検査したところ、まず、平成29年度において、代理受領による充当を認める規定が制定されているかなどの制度化については、国公立高校等は9府県、私立高校等は9府県が制度化されていませんでした。
 
これら制度化未実施府県では、国公立高校等について8府県、私立高校等については9府県において、代理受領による充当が行われていませんでした。
 
制度化実施府県(国公立高校等12府県、私立高校等10県)においては1県を除く全ての府県で代理受領による充当が行われていました。
 
制度化未実施府県における各年度の奨学給付金受給者のうち、高校生等奨学給付金制度が開始された26年度以降の年度の授業料以外の教育費が当該奨学給付金受給年度末において未納となっている保護者等の状況をみたところ、制度化未実施府県全体で26年度受給者27,059人中293人(未納者発生率1.08%)、27年度受給者51,677人中532人(同1.02%)、28年度受給者73,278人中667人(同0.91%)、29年度受給者86,094人中959人(同1.11%)となっていました。
 
また、制度化未実施府県において、授業料以外の教育費の未納が生じている場合に、一定月数以上の未納を理由とする出席停止等の生徒への不利益を定めた規則等がある高校等が10府県286校(国公立高校等3県28校、私立高校等9府県2、58校(一つの高校等に全日制、通信制等の課程が複数ある場合、課程ごとに1校としている。以下、同じ。))あり、生徒に学業上の不利益を生じ得る状態がありました。
 
そして、未納者に係る生徒について、授業料以外の学校徴収教育費の未納を理由に、当該未納額が支払われるまでの間、出席停止や仮進級となっていたり、卒業証書の授与を保留されたり、高校等から除籍処分を受けたりなどして、現に学業上の不利益が生じている者が、26年度5県11校31人、27年度5県12校43人、28年度6県14校50人、29年度8府県23校69人となっていた一方、制度化実施府県においては、26年度2県2校3人、27年度4県5校6人、28年度1県2校4人、29年度2県2校2人となっていました。
 
引用
会計検査院法第36条の規定による意見表示「高校生等奨学給付金における学校の代理受領による授業料以外の教育費への充当について」(全文)
 

代理受領を制度化せよ

低所得世帯の高校生が安心して学業を続けられるように、授業料以外の教育費負担を軽減するための奨学給付金が、一部の保護者により他の使途に流用され、その結果、子どもに出席停止や除籍などの学業上の不利益が及ぶのは許せないことです。
 
奨学金を生活費などに費消する保護者に、子どもの教育以外に使わないことを期待するのは難しい面があります。中には奨学金を借りている大学生が親に仕送りをしているケースもあります。これら保護者には罪の意識がありません。
 
都道府県は、奨学給付金を支給するために定めている要綱等において代理受領による充当を認める規定を制定し、早急に代理受領を実施すべきではないでしょうか。
 

奨学給付金の周知徹底も

周知不足で、奨学給付金の制度自体を知らない低所得者も多く、報道によると、奨学給付金の申請漏れは私立高校生だけでも約2万人いるようです。また、国公立高校生の対象者数はわからず、申請漏れはさらに多いとみられています。
 
本来、受給できる低所得世帯が奨学給付金をもらえることを知らず、子どもが学業上の不利益を被るのは避けなければなりません。低所得世帯に対する各種制度の周知徹底不足は小中学校での修学援助についても指摘されています。
 
生活保護世帯のケースワーカーや児童扶養手当の担当者が案内するなど他の行政とも連携して周知徹底を図ってもらいたいと思います。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
 

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