更新日: 2019.08.20 その他暮らし

2020年4月実施「高等教育の無償化」と「私立高校の実質無償化」は実現できるのか?

執筆者 : 新美昌也

2020年4月実施「高等教育の無償化」と「私立高校の実質無償化」は実現できるのか?
平成29年12月19日、「人生100年時代構想会議」の中間報告案が公表されました。

中間報告案では、「幼児教育の無償化」、「待機児童の解消」、「高等教育の無償化」、「私立高校の実質無償化」、「介護人材の処遇改善」についてとりまとめられています。

来年夏に向けての検討継続事項として、「リカレント教育(学び直し)」「大学改革や大学教育の質の向上」などがあります。中間報告案の中の、「高等教育の無償化」と「私立高校の実質無償化」についてポイントをお伝えします。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

私立高校の授業料の実質無償化

平成29年度予算ベースで住民税非課税世帯は実質無償化、年収約350万円未満世帯は最大35万円支給、年収約590万円未満世帯は最大25万円支給できる財源を確保。
消費税使途変更後の2020年度までに、年収590万円未満世帯を対象に私立高校授業料の実質無料化を実現するとしました。
 
私立高校の授業料の無償化については、現在、国の「高等学校等就学支援金」により、生活保護世帯・住民税が非課税の世帯・住民税が均等割のみの世帯は、年額297,000円の支援金が国から高校に支払われ、授業料と相殺されています。
 
さらに、自治体独自の助成として「私立高等学校等授業料軽減助成金」があります。平成29年度から、東京都では、年収目安約760万円未満の世帯に対し、国の「就学支援金」と合わせて、442,000円(都内私立高校平均授業料相当)まで、助成しています。
 
私立高校では、授業料以外にも多くの費用が必要です。たとえば、東京都の私立高校の平成30年度の初年度納付金(授業料、入学金、施設費およびその他毎年度納付する金額)は、平均で、918,794円。授業料は平均で、455,345円です。
 
初年度納付金がもっとも高い学校は、1,889,000円の玉川学園高等部(普通・IBクラス)、もっとも低い学校は590,000円の東洋女子となっています。
 
進学する私立高校によっては、私立高校の授業料の実質無償化でも、授業料をすべて賄うことができない点、授業料以外にかかる費用も大きいことに注意する必要があります。

高等教育の無償化

高等教育は、大学、短大、高等専門学校及び専門学校(以下「大学等」)で受ける教育です。2020年4月から実施される高等教育の無償化に関して、低所得世帯に限定して、授業料減免措置と給付型奨学金が拡充されます。
 
授業料の減免措置については、学生が大学等に対して授業料の支払を行う必要がないようにします。住民税非課税世帯の学生に対しては国立大学の授業料が免除されます。
 
私立大学の場合には、国立大学の授業料(標準額535,800円)に加え、私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応が図られます。また、1年生に対しては国立大学の入学金(標準額282,000円)を上限に免除されます。
 
なお、文部科学省「平成27年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果」によると、私立大学の授業料平均は年額868,447円となっています。
 
日本学生支援機構は今年度から給付型奨学金を開始しました。対象は、住民税非課税世帯、生活保護世帯等です。現状においては約2800人が受給していて、給付額は月額2万円から4万円と十分ではありません。
このため、先の授業料の減免措置の拡充と併せ、給付型奨学金の支給額が大幅に増えます。
 
給付型奨学金については、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置が講じられます。具体的には、日本学生支援機構「平成24年、26年学生生活調査」の経費区分に従い、修学費、課外活動費、通学費、食費(自宅外生に限る)、住居・光熱費(自宅外生に限る)、保健衛生費、授業料以外の学校納付金等を計上、娯楽・嗜好品は除きます。
 
併せて大学等の受験料が計上されます。報道によると、政府は、生活費として、下宿している場合で年間100万円程度、自宅から通学する場合で、年間65万円程度給付する案を軸に調整を進めています。
 
支給対象に関しても、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生についても、住民税非課税世帯の学生に対する措置に準じた支援が段階的に行われます。
 
また、支援対象となる大学等は、その特色や強みを活かしながら、急速に変わりゆく社会で活躍できる人材を育成するため、社会のニーズ、産業界のニーズも踏まえ、学問追求と実践的教育のバランスが取れている大学等と限定されています。
 
具体的には、実務経験のある教員による科目の配置及び外部人材の理事への任命が一定割合を超えていること、成績基準を定めるなど厳格な成績管理を実施・公表していること、法令に則り財務・経営情報を開示していることが、支援措置の対象となる大学等の満たす要件となっています。
 
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。