私立高校の無償化のおさらい。どんな家庭が対象?
配信日: 2021.04.27
しかし、すべての家庭が対象となるわけではありません。それでは、どのような要件を満たせば対象となるのでしょうか? 本記事で解説します。
執筆者:酒井 乙(さかい きのと)
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。
長期に渡り離婚問題に苦しんだ経験から、財産に関する問題は、感情に惑わされず冷静な判断が必要なことを実感。
人生の転機にある方へのサービス開発、提供を行うため、Z FinancialandAssociatesを設立。
目次
国と地方自治体がそれぞれ支援制度を用意している
要件を理解するために、まずは無償化の元になる制度の全体像をおさらいしましょう。
高校に通う場合、いろいろな費用がかかります。入学金から授業料、施設の設備費に加え、教科書代や教材費、生徒会・PTA会費、そして修学旅行費などさまざまなものがあります。
実は、これらの費用がどこまで無償化されるかは、どの高校に通うかだけでなく、高校がどこにあるかによっても変わります。その理由は、これらの費用を支援する制度が国と地方自治体(都道府県または市区町村)とで別々に用意されているからです。
私立高校の教育費支援は、まず国の制度がベースとなっています。国は、全国一律の基準と内容で、要件を満たした生徒を対象に支援金を支給します。
しかし、例えば費用が高い学校が多い、または家計所得が比較的低い都道府県では、それだけでは十分ではありません。そこで、都道府県が独自に国の支援金制度に上乗せする形で支援を行います。また、都道府県に加えて市区町村で独自の給付を行っているケースもあります(※1)。
国の支援が受けられるかを調べるのはもちろんのこと、通う高校がある都道府県にどんな支援が用意されているのかを、しっかり調べておくことが大切です。
最大で年間39万6000円が国から支給される
国の制度における支給額は、私立高校の全日制や定時制であれば最大で年39万6000円、通信制であれば最大で年29万7000円です(※2)。以前より無償化されている国公立高校の支援金(年11万8800円)に加算される形で支給されます。
それでは、どのような要件を満たせば給付を受けることができるのでしょうか? 国の制度に沿ってご説明します(地方自治体は独自の基準によるため、本記事では省略しています)。
最大39万6000円の支給を受けるためには、住民税の「課税標準額」から算出した判定基準額が一定以下でなければなりません。この判定基準額によって、以下のとおり支援額が変わります。
つまり、判定基準額が15万4500円を超えると、給付額が国公立高校の限度額以下になり、30万4200円を超えるとゼロになります。しかし、判定基準額ではいったいどんな家庭が対象になるのかをすぐには理解できません。そこで、代わりに年収の目安で見てみましょう。
子2人で家庭の税込み年収が約740万円以下なら、無償化になる可能性あり
以下の表は、文部科学省が公表している支援対象となる年収の目安です。
表によれば、最大39万6000円の支給が受けられる家庭の年収目安は、子ども2人の場合で約640万~740万円までであることが分かります。
ただし、この年収目安だけでは、自身が支援対象になるかを正確に判断できないことに注意が必要です。その理由は、支援金の給付判定に使われる前述の判定基準額が、年収だけでなく家庭の働き方や子どもの年齢の違いなどによって変わってしまうからです。
例えば、表において高校生の子どもが2人いる家庭でも、両親のうち一方が働いている場合は年収目安が『~約640万円』であるのに対し、共働きの場合は『~約720万円』となっており、違いが出ています。
自分で調べることも、市区町村に相談して調べることもできる
それでは、支援金の対象となるかを正確に知るための判定基準額をどのように調べればよいのでしょうか?
自身で調べる場合は、「住民税決定通知書」(毎年5~6月頃にお住まいの市区町村から送付される)や「課税証明書」(市区町村に請求すれば入手できる)から、「市町村民税の課税標準額」と「市町村民税の調整控除の額」を見つけて、上図の式にあてはめます。
しかし、課税標準や調整控除は慣れていないと理解が難しく、また計算を間違えてしまう可能性があります。自信のない方は、市区町村の担当課に直接たずねて、自分が無償化に該当するかを調べたほうがよいでしょう。
(出典および注釈)
(※1)
例えば横浜市は、家計の厳しい方を主な対象に、前年度の成績が5段階評価で3.7以上であれば年額6万円の高等学校奨学金を独自に支給している。
横浜市「補助金などの支援」
(※2)
文部科学省「令和2年4月から私立高校授業料実質無償化がスタート!」
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。