更新日: 2021.06.08 その他暮らし

ひとり暮らしがスタート! 固定電話って必要?

執筆者 : 黒澤佳子

ひとり暮らしがスタート! 固定電話って必要?
春を迎え、新生活とともにひとり暮らしがスタートしたという方もいらっしゃるでしょう。何をそろえたらよいか悩みますが、「最初は必要最小限でスタートし、必要であれば用意しよう!」と考えるかもしれません。
 
そんなときに、昔ならひとり暮らしのスターターズキッド(※実際には存在しません)に電話(固定電話)が含まれていましたが、最近では、特に学生のひとり暮らしでは、固定電話を持たず携帯電話だけで生活するケースが多くなっています。
 
総務省「令和2年版情報通信白書」(※)によると、世帯の情報通信機器の保有状況は、「スマートフォン」が83.4%と初めて8割を超える一方で、「固定電話」は69.0%と年々減少傾向にあります。さまざまな生活の場面において、固定電話以外の通信手段がいくつも存在しており、固定電話を必要としない文化および環境ができつつあります。
 
黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

変化する固定電話市場:若者には家電(いえでん)の概念はない?!

携帯電話の普及に伴い、誰かに連絡をする際に固定電話(家電)にかけることがなくなってきています。取り次ぎという概念がなく、用があれば直接本人に連絡しようとします。
 
学校などでも、以前は連絡網に載せる番号は固定電話でしたが、最近では共働き家庭が増え、携帯電話を掲載することが多くなっています。そもそも連絡網を廃止する学校も多く、緊急時には事前に登録しておいた一斉メール配信システムなどが用いられています。
 
冒頭で紹介した同白書によると、固定電話市場の全契約数が全体として減少傾向にある一方、IP電話の契約数は増加傾向にあります。固定電話市場の回線内訳を見ると、2009年には約66%がNTT東西加入電話でしたが、2019年には約32%にまで減少し、代わってIP電話が約66%となっています。
 
固定電話があるといっても、インターネット回線を使う際に併せて利用できる音声サービスとの認識が強くなってきました。IP電話の導入当初こそ緊急通報(110番や119番)やフリーダイヤルが使えないプランもあったものの、今では利用枠が拡大してきています。
 
以前は、携帯電話は通話料が高い、機種やプランによっては緊急通報ができない、信用力がない(住所を持たないと判断される)といった面がありましたが、今では緊急通報はできますし、プランによっては無料通話分があったり、無料通話アプリがあったりと、トータルで見ると、費用面でも固定電話のメリットがなくなりつつあります。
 
「県外の通話は夜が安い」というかつての定説も、携帯電話にはその概念がないため、その制度そのものを知る若者はごくわずかなのが現状です。固定電話番号がないと社会的信用が得られないという考え方も、実用的に薄れつつあります。
 

大学生のひとり暮らしでは、固定電話よりもネット環境のほうがニーズが高い

ひとり暮らしの大学生の場合、スマートフォンがあれば固定電話がなくても生活に困ることはないといえるでしょう。むしろ、通信手段としてインターネット環境を整えることのほうが、重要度が高くなってきています。
 
現在も続くコロナ禍で、オンライン授業も多く実施されています。オンライン授業はスマホで受講できなくはないのですが、課題やレポート作成となると、パソコンのほうが格段に使い勝手がよく、将来仕事でパソコンを使うことを考えると、早くから慣れておくためにもパソコンでの受講が推奨されます。
 
物件選びの際には、ネット環境があるかが重視され、家賃にネットの利用料金が含まれる(無料でネットが利用できる)ケースもあり、ネット利用の追加負担があるかなどを確認するとよいでしょう。
 
ネット環境を整える際に、ついでにIP電話が利用できるといったケースであれば、安い料金または定額で固定電話が使えるようになりますが、単独で固定電話を引くことは、手続きの面でも費用の面でも負担になる可能性があります。
 
最近では、就活やアルバイトの面接の際にも、本人への連絡は携帯電話となっており、銀行口座も携帯電話番号で作れますので、固定電話がないといけない状況はほぼないといえるでしょう。
 
固定電話の留守電機能は便利ではありますが、携帯電話にも追加料金を払えば留守電機能はあり、就活のときにだけ利用するというような使い方も可能です。離れて暮らす親たちが子の無事を確認するための手段であれば、固定電話ではむしろ電話に出てもらえず、メールも返信がなく、心配は募るばかり、という状況もあるかもしれません。
 
LINEやMessenger等の既読機能で生存確認をして安心するほうが、今のやり方なのかもしれません。就職したら会社の寮に入るにせよ、実家に戻るにせよ、大学生のときの住居にそのまま住み続ける可能性は低く、固定電話の番号も機器も処分することを考えると、大学生が固定電話を持つ必要性は極めて低いといえます。
 

固定電話は必ずしも「不要」ではない。ただし利用には注意を

現在、携帯電話は自宅のみならず、携帯ショップや充電サービス行っている店舗などで充電ができます。充電の残りを気にしてこまめに充電しておけば、もし停電が起こっても利用できます。しかし、停電の際には固定電話は使えません。停電時においては、携帯電話のほうが使える場面が多いかもしれません。
 
また、高齢者のひとり暮らしになると話は別です。携帯電話やスマホの操作に不慣れであったり、アプリは使えないけどファクスなら使える、(有線のため)音が安定してよく聞こえる、など固定電話ならではの安心感を求める人も少なくありません。
 
一方で、固定電話があることで詐欺に狙われたり、留守がわかってしまったりするリスクもありますが、ナンバーディスプレイを活用して家族からの電話とそれ以外を判別したり、怪しいと思ったときには以前からの電話番号にかけてみる、などルールを決めておくことが大事です。
 
少しでも多くのコミュニケーションをとることが大事である高齢者にとって、固定電話が生活必需品であることは盤石なのです。
 
(※)総務省「令和2年版情報通信白書/第2節 ICTサービスの利用動向」
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士
 

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