更新日: 2021.06.28 暮らし

「将来、奨学金を借りよう」と思うなら見落としてはいけないこと

執筆者 : 當舎緑

「将来、奨学金を借りよう」と思うなら見落としてはいけないこと
このコロナ禍がいつ終わるのか見通せない中、収入がこれまでどおりの方もいる一方、グンと収入が下がり、今後のめどが立たないという方もいらっしゃいます。節約しようとしても、節約できる費用と節約できない費用があります。
 
子どもにかかる費用は、節約のしにくい費用の1つですが、就学援助などの新制度が始まったことで、教育費を貯めなくても「奨学金がある」と思い始めた方もいるかもしれません。ただ、この考え方には落とし穴があります。将来、奨学金を借りる可能性が少しでも考えられるのであれば、知っておくべき注意点があります。
 
當舎緑

執筆者:

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

當舎緑

執筆者:

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

奨学金の保証人が裁判で主張したこととは何か

2021年5月。「札幌地裁で保証人が勝訴」というニュースが流れました(※)。親が準備しても教育費が不足する場合、利用をまず勧められるのは、日本学生支援機構の貸与型奨学金ですが、この奨学金の保証人ら2人の方が、「過払い金返還と慰謝料」を請求したという裁判です。
 
慰謝料の請求は退けられましたが、過払い金に関しては、約140万円の返還が命じられました。日本学生支援機構側は訴訟で、自ら適用を主張しなければ「分別の利益は受けられない」と主張していました。では、「分別の利益」とは何のことでしょうか。
 
奨学金は、借りた本人、もしくは連帯保証人が返済すれば何も問題ありませんが、返済できない場合、保証人が返済しなければなりません。ただ、全額を返済する必要はなく、保証人が返済すべき金額を、申し立てにより請求額の2分の1にできます。これが「分別の利益」といい、保証人の権利です。
 
ただ、保証人に許されたこの権利をしっかり説明したうえで保証人を頼むというケースは、少ないかもしれません。
 

奨学金を借りるためには、「人的保証」か「機関保証」を選ばなくてはならない

奨学金は学生が借りるということから、借金というよりも福祉的なお金と考え、借りるための精神的なハードルが下がりがちです。ただ、借金であることは変わりありませんので、奨学金を借りるために、「連帯保証人」と「保証人」という人的保証、もしくは機関保証のどちらかを選ぶ必要があります。
 
機関保証は、いわば保証人をだれにも頼めない場合に、お金で解決するという方法で、人的保証は、父母などの連帯保証人と、4親等以内の親族で別生計の保証人をたてる方法です。将来奨学金を借りるときに頼める人が周囲にいるのかどうか、考えておく必要はあるでしょう。
 
保証人がいないのであれば、機関保証を選べば良いと安易に考えるのも困りものです。教育費が不足している中、機関保証を選択して、返済するお金が増えると将来のライフプランに影響が出てくることもあります。
 
万が一、滞納した場合には、ブラックリストに載ってしまったり、住宅ローンを自分が思った金額ほどの融資が受けられなかったりと、長い人生で、「ちゃんと返済しておけばよかった」と後悔する場面は多々あることでしょう。
 

返さなくても良い奨学金の条件は厳しい

当初から、新制度の就学援助や給付型奨学金を利用するつもりで、教育費の準備をしないのは、子育て家庭が絶対してはいけないことです。これまでも子どもへの助成制度は変遷を続けてきました。たとえ今の制度で対象になるからと分かっても、実際の助成が受け取れるかどうかは別問題です。
 
日本学生支援機構のホームページに掲載している「進学資金シミュレーター」で計算してみると、支援対象だったのにいざ申請してみると、「支援対象外」(または支援区分が別の区分)ということも起きているようです。ホームページ上に注意事項として記載しているとおり、「給付奨学金シミュレーション」 は入力された情報を基に試算します。
 
一方、実際の判定は、マイナンバーを利用して取得した課税標準額等の情報に基づいて行いますから、双方で異なる結果になることも当然あります。成績も判定基準になりますし、大学生となりアルバイトをし始めると、学生本人の所得も判定に影響します。当初から給付型をあてにした教育費の準備方法はとても危険です。
 
今回の裁判で、保証人となったのは、「元高校教諭」と「遺族が保証人の主婦」です。保証人を依頼した当人にとっては、迷惑をかける気もなく、当初は本当に自分で返済できると思っていたのでしょう。
 
保証人側も、本当に返済までする気はなく、本人がきちんと返済してくれると思って依頼を受けたのでしょう。このような善意のやり取りを踏みにじるような行為にもなりえる奨学金は、「借金」であることをしっかりと覚えておいていただきたいものです。
 
出典
(※)日本経済新聞「奨学金過払い返還命じる 保証人ら勝訴、札幌地裁」
 
(参考)
日本学生支援機構「人的保証」
日本学生支援機構「Q.「進学資金シミュレーター(給付奨学金シミュレーション)」では支援対象だったのに、今回、「家計基準を満たしていないため」で「不採用」だった(又は、シミュレーションでは「第1区分」だったのに、今回対象になったのは別の区分だった)」
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

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