更新日: 2021.07.07 子育て

大学に行かせてあげたいけど学費が払えない……。そんなときに知っておきたい制度とは?

大学に行かせてあげたいけど学費が払えない……。そんなときに知っておきたい制度とは?
教育資金は、人生の3大資金のうちの1つです。特に大学の費用は家計にとって大きな負担ともなります。
 
しかし、学費が払えないからといって子どもの進学を諦めたくはないものです。そんな方が知っておきたい制度があります。それが「奨学金」「教育ローン」「教育資金の一括贈与」です。
中村将士

執筆者:中村将士(なかむら まさし)

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

奨学金制度の概要

奨学金は、学生・生徒本人がお金を借りる制度です。代表的なのは日本学生支援機構の奨学金です。奨学金には返済を必要とする貸与型奨学金と返済を必要としない給付型奨学金があります。
 
貸与型であれ給付型であれ、奨学金は入学(進学)後にお金が振り込まれます。
 

貸与型奨学金

貸与型の奨学金には、利子の付かない第一種奨学金と、利子の付く第二種奨学金とがあります。それぞれの概要は下表のとおりです。
 
第一種奨学金と第二種奨学金の概要(2021年6月時点)
 

第一種奨学金 第二種奨学金
対象 国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校・専修学校(専門課程)に在学する学生・生徒 国内の大学院・大学・短期大学・高等専門学校(4・5年生)・専修学校(専門課程)の学生・生徒
利子 無利子 年(365日当たり)3%を上限
在学中は無利子
選考 特に優れた学生・生徒で経済的理由により著しく修学困難な人 第一種奨学金よりゆるやかな基準
貸与月額 2万円~12万2000円 2万円~15万円

出典:独立行政法人 日本学生支援機構のHPを参考に筆者が作成

返還(返済)方式は、第一種奨学金の場合は定額返還方式か所得連動返還方式かのいずれかを選択、第二種奨学金の場合は定額返還方式となります。定額返還方式は貸与総額に応じて一定の返還金額(月額)が決定される方式です。所得連動返還方式は前年の所得(課税総所得金額)に応じて返還金額(月額)が決定される方式です。
 

給付型奨学金

給付型奨学金の概要は、下表のとおりです。
 
給付型奨学金の概要(2021年6月時点)
 

対象 大学等へ進学する希望を持っていて、以下のいずれかに該当する人
・翌年3月に初めて高等学校等(本科)を卒業予定の人
・初めて高等学校等(本科)を卒業した年度の末日から申し込みを行う日までの期間が2年以内の人
調査対象数 2000名
調査対象地域 全国
調査対応年齢 20~51歳

出典:独立行政法人 日本学生支援機構のHPを参考に筆者が作成
 

教育ローンの概要

教育ローンは、学生・生徒の保護者がお金を借りる制度です。代表的なのは日本政策金融公庫の教育ローン(教育一般貸付、国の教育ローン)です。国の教育ローンの概要は、下表のとおりです。
 
国の教育ローンの概要(2021年6月時点)
 

対象 融資の対象となる学校に入学・在学する人の保護者で、世帯年収が一定金額以下の人
利子 年1.66%(固定)
貸与額 上限350万円(一定の要件を満たす場合は450万円)まで

出典:日本政策金融公庫のHPを参考に筆者が作成
 
返済方法は元利均等返済です。利子も固定のため、毎月の返済額は一定です。なお、返済期間は15年(一定の要件の場合は18年)以内です。
 
教育ローンは学校納付金(入学金、授業料、施設設備費など)以外にも、受験にかかった費用、在学のため必要となる住居費用、その他必要な費用の支払いのためにも利用することができます。
 

教育資金の一括贈与の概要

直系尊属(父母、祖父母)から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度も利用できます。通常、贈与を受けた場合には贈与税が課税されます。しかし、この制度を利用することにより贈与税が非課税となります。制度の概要は下表のとおりです。
 
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度の概要(2021年6月時点)
 

贈与をする人 直系尊属(父母、祖父母)
贈与を受ける人 30歳未満の方(子、孫)
手続き (1)金融機関等との一定の契約に基づき以下のいずれかの行為をする
・信託受益権を取得する
・書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預け入れをする
・書面による贈与により取得した金銭等で、証券会社等で有価証券を購入する
(2)取扱金融機関の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出する
非課税枠 上記信託受益権、金銭等の価額のうち1500万円まで

出典:国税庁のHPを参考に筆者が作成
 
ここでいう「教育資金」とは、入学金、授業料、入園料、保育料、施設設備費などの費用だけでなく、学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費、習い事の費用や交通費なども含みます。
 

まとめ

子どもにしっかりと教育を受けさせたいというのが親心というものです。その思いをお金が原因で諦めてしまうのは悔しいことです。そのために、国も上記のような制度を用意しています。子どもの教育を諦める前に、制度の利用をぜひ検討してみてください。
 
まずは教育資金の一括贈与を検討したいところですが、家庭によっては難しいところです。その場合、奨学金か教育ローンを検討することになります。
 
検討する順序としては、(1)奨学金、(2)教育ローンが望ましいですが、それも家庭の状況により異なってきます。奨学金と教育ローンは併用可能ですので、利用に際しては親子でしっかりと話し合いをし、無理のないように制度を利用するようにしてください。
 
出典
独立行政法人 日本学生支援機構 「奨学金の制度(貸与型)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「第一種(無利子)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「平成30年度以降入学者の貸与月額」
独立行政法人 日本学生支援機構 「第二種(利子が付くタイプ)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「第二種(利子が付くタイプ)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「奨学金の制度(給付型)」
独立行政法人 日本学生支援機構 「給付奨学金案内」
日本政策金融公庫 「教育一般貸付(国の教育ローン)」
日本政策金融公庫 「ご利用条件」
国税庁 「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
国税庁 「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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