更新日: 2021.07.08 子育て
離婚したら養育費はいくらもらえる? 養育費はあてにできるの?
離婚が増えれば、それに伴い子どもを1人で育てる親が増える可能性が高くなるでしょう。1人で育てる精神的な負担に加え、経済的負担はどう分担していけばよいのでしょうか。
養育費はいくらもらえるのか、いくつかの事例で見ていきましょう。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
子どもの養育費用とは?
法務省2021年版パンフレット(※2)によると、「養育費」とは、一般に「経済的・社会的に自立していない子どもが自立するまでに必要な費用」です。具体的には、
・衣食住の費用
・教育費
・医療費
などが該当します。
子どもに対して親が養育費を支払う義務(扶養義務)は、自分と同じ水準の生活を保障する強い義務(生活保持義務)となっています。
離婚により養育費を支払う場合、親権者となる親がそうでない親へ支払う義務のようにとらえられがちですが、実際には、どちらの親も子どもに対して等しく生活保持の義務があるといえます。
養育費の金額は?
原則として当人同士の話し合いで合意すれば、いくらで決めても構わないはずですが、一般的な水準という意味では、裁判所が公表している「養育費算定表」が参考になります。
算定表は、子の人数(1~3人)と年齢(0~14歳・15歳以上の2区分)に応じて9種類に分かれています。それぞれの親の年収と子どもの人数によって、養育費の金額は変わってきます。
算定表にある年収とは、給与所得者の場合、源泉徴収票の支払金額(控除されてない金額)が該当し、自営業者の場合、確定申告書の「課税される所得金額」が該当します。
ただし、「課税される所得金額」は、さまざまな所得控除後の金額ですが、実際に支出していない費用(基礎控除、青色申告控除など)は「課税される所得金額」に加算して年収を定めます。では、事例ごとに見てみましょう。
(出典:最高裁判所「平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」(※3)より筆者作成)
実際に養育費をあてにできる?
上記の金額を、義務者が確実に支払ってくれると仮定しても、親権者の年収が少ないと経済的には離婚前より苦しくなる可能性があるといえます。
また、義務者も再婚して新しい家庭でも子どもが生まれた場合は、養育費の支払いが厳しくなることも考えられます。その場合は、一度取り決めた養育費に関して、減額の申し出を受けることもあるかもしれません。
あるいは、義務者が単純に支払ってくれないこともあり得るでしょう。そのため、一定の条件を満たす公正証書を作成しておくと、相手の財産を差し押さえるなどして、そこから養育費を回収する手続き(強制執行)を行うことができます。
支払いの期間については、「22歳に達した後の3月まで」などと具体的に定めておくとよいでしょう。
2022年4月1日より、民法上の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられますが、養育費の終期は、18歳にとらわれることなく実際に子どもが経済的に自立するまでとされています。
また、子どもが複数いると、すべての子どもを同じ親が全員育てる場合は算定表を使えますが、それぞれの親が子どもを引き取った場合や、再婚していて、前妻(前夫)との間に子どもがいる場合など、算定表を使えないケースもあります。
まとめ
離婚後にもらえる養育費は、子どもの人数とそれぞれの親の年収により異なります。また、養育費の支払いが滞る、あるいは減額されるなどの可能性もあり得ます。
離婚後の子どもの養育費に関しては、金額、支払期間、支払時期(毎月、毎年など)を具体的に決めておくのがよいでしょう。後々の紛争を防ぐために、できれば公正証書などの文書で残しておけば安心です。
ただし、自分が支払う側になる場合は、強制執行を受ける立場になり得ることも自覚しておかなければなりません。
出典
(※1)厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計(確定数)の概況」
(※2)法務省「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」
(※3)最高裁判所「平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士