「あおり運転」が厳罰化。罰則はどのように変わった?
配信日: 2021.08.03
「あおり運転の罰則が厳しくなったらしい」となんとなく理解しているけれど、日々安全運転を心がけている方のなかには、「私には関係ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかしドライバーとして、正しい知識を持ち自分を守る手段を知ること、最新の制度を知ることは重要です。詳しく見てみましょう。
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
あおり運転とは
「あおり運転」(妨害運転)は、重大な交通事故につながる極めて悪質・危険な行為です。具体的にいうと以下のような行為が、妨害運転(いわゆるあおり運転)になります。
(1)対向車線からの接近や逆走
(2)不要な急ブレーキ
(3)車間距離を詰めて接近
(4)急な進路変更や蛇行運転
(5)左車線からの追い越しや無理な追い越し
(6)不必要な継続したハイビーム
(7)不必要な反復したクラクション
(8)急な加減速や幅寄せ
(9)高速自動車国道等の本線車道での低速走行
(10)高速自動車国道等における駐停車
(出典:神奈川県警察「「妨害運転」は、犯罪です!!」(※1))
あおり運転厳罰化の背景
2017年6月に神奈川県の東名高速道路で、後続車にあおられるなどして無理やり停止させられた静岡市の夫婦のワゴン車に後ろからきたトラックが追突し、夫婦が死亡、同乗の娘2人が負傷したという痛ましい事件がありました(※2)。
事件が起こった時点では、あおり運転そのものを処罰する規定が、道路交通法にはありませんでした。そのため、それまで同様の運転に対しては、道路交通法の車間距離不保持や急ブレーキ禁止違反、または、刑法の暴行罪などが適用されてきました。
この事件が大きな社会問題になったことが、きっかけとなり、2020年6月に道路交通法を改正し、あおり運転そのものを取り締まる「妨害運転罪」が創設されました。(※3)
あおり運転がメディアに大きく取り上げられたことにより、その恐怖心から自家用車にドライブレコーダーを取り付ける人が急増しました(※4)。あおり運転の被害にあった時のために備え、自分の身を守るための手段として、ドライブレコーダーの購入を検討する人が増えたといえます。
違反による罰則
妨害運転(あおり運転)の罰則として、他の車両等の通行を妨害する目的で、急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等の違反を行った場合は、最大で懲役3年の刑に処せられることになりました。
また、妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合は、最大で懲役5年の刑に処せられることになりました。さらに、妨害運転をした者は、運転免許を取り消されることになります。(※3)
まとめ
あおり運転は車を運転していれば被害者にも加害者にもなり得ます。
<あおり運転の被害を受けた時>
落ち着いて、以下の行動をとりましょう。
(1)事故の危険を避けるため、道路上には停車しないようにして、人目のある駐車場やパーキングエリア(PA)等に車を移動させましょう。
(2)警察に110番通報をしましょう。同乗者がいる時は、同乗者が、110番通報しましょう。
(3)車を停車したら、ドアを必ずロックして、警察が到着するまでは車内に待機しましょう。相手が追ってきて、脅したり、挑発してきたりしても、不用意に車外に出ないようにしましょう。
(4)事前対策として、ドライブレコーダー等のカメラを活用することも有効です。
警察があおり運転を摘発するためには、車の一連の動きを確認する必要があり、ドライブレコーダーに残されている映像が重要な証拠となります。
ドライブレコーダーも進化をしおり、従来型の前方用カメラや後方用カメラ、社内用カメラの他に、価格は高くなりますが、360度全方位を映すことができる全天球レンズや、レーダー探知機と一体型のドライブレコーダーも売り出されています。
また、損害保険会社で発売されているドライブレコーダー付きの自動車保険を検討するのも一案でしょう。大手損保各社などでは、自動車保険の契約者向けに、特約保険料を支払えば通信機能のあるドライブレコーダーを貸し出し、安全運転をする支援をする商品を用意していることがあります。
例えば、ドライブレコーダーが大きな衝撃を検知したり、万が一の時にドライバーが手動で緊急ボタンを押したりした際に、事前に登録した家族、保険代理店に自動で通知がいくことに加えて、ドライブレコーダーに備えた音声通話機能を通じて、コールセンターと直接通話ができるといったサービスを提供しています。
(5)ハンズフリーキットが車載されていないのなら、購入を検討してもよいでしょう。
あおり運転の被害を受け、警察へ通報する時に、同乗者がいれば同乗者に通報してもらえますが、1人の場合は運転しながら携帯電話で通報することになってしまい、危険です。ハンズフリーキットがあれば、手を使わずに通報ができるので安心です。
(参考、一部引用・抜粋:政府広報オンライン「一発で免許取消し! 「あおり運転」が厳罰化!」(※3))
<自分が加害者になりそうな時の対策>
自分は、絶対に加害者にはならないと思っている人でも、急いでいたり、疲れていたりすると、前を走っている車に怒りやいら立ちを感じ、自分をコントロールできなくなることがあるかもしれません。そんな時に「あおり運転」の加害者になってしまうかもしれません。
自分がイライラしていると感じたら一度、路肩に車を止める等をして冷静になりましょう。あおり運転をしないということは大前提ではありますが、万が一の事故に備え、強制保険である自賠責保険の他に、補償の範囲が広く、事故対応(示談対応)の付加がある任意の自動車保険に加入することを検討してもよいでしょう。
(※1)神奈川県警察「「妨害運転」は、犯罪です!!」
(※2)東京新聞Web「東名高速夫婦死亡事項2年 あおり運転、遠い根絶」
(※3)政府広報オンライン「一発で免許取消し! 「あおり運転」が厳罰化!」
(※4)朝日新聞DIGITAL「あおり運転への恐怖心高まり・・・ドラレコ出荷、3年で3倍」
(参考・引用)
警視庁「危険! 「あおり運転」はやめましょう」
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、第一種証券外務員、内部管理責任者