もうじき解禁される「給与デジタル払い」とは?
配信日: 2021.08.08
しかし、依然として給与の受け取りは口座振込か、現金の2択となっています。場合によっては、キャッシュレスサービスを利用するために、ATMでいったん現金を引き出し、個々のサービスにチャージするなどの手間が掛かります。
このような状況を踏まえ、近い将来に「給与デジタル払い」の解禁が予定されています。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
そもそも給与支払いのルールとは?
労働条件の最低基準などを定める労働基準法において、賃金について以下のように定められています。
(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならない(賃金支払の五原則)。
つまり、原則は労働者に対して直接現金を手渡しすることとされていますが、その後の施行規則の改正で、労働者との合意により銀行口座等への振り込みによる支払いが認められています。
そして、いわば3つ目の賃金の支払い方法として「給与デジタル払い」の導入が具体的に検討されているということです。
給与デジタル払いとは?
給与デジタル払いの給与の受取先に想定されるのは、キャッシュレス化の担い手として銀行以外で送金サービスを提供する資金移動業者といわれる企業です。
いわゆる「〇〇Pay」などのサービスを提供する企業で、代表的なものとしては「PayPay」「LINE Pay」「メルペイ」などがあります(令和3年6月30日現在、資金移動業者として81社が登録)。
このような選択肢が増えることで、銀行口座を介することなく、給与を直接「〇〇Pay」などのキャッシュレスサービスでのお買い物や支払いなどの決済に利用することが可能となります。
給与デジタル払いのメリット
まず、給与デジタル払いのメリットとして、銀行口座を介さないため、ATMなどの利用機会を軽減できる点が挙げられます。
前述のとおり、利用するキャッシュレスサービスへのチャージのため、いったんATMから現金を引き出すなどの手間が省かれます。同時にATMからの引き出しや送金の際に発生する手数料の軽減にもつながり、土日祝日などを意識することなく24時間いつでも利用しやすくなります。
既にアメリカなど海外では企業が従業員のプリペイドカードに直接給与を振り込む、いわゆる「ペイロールカード」が普及しているとのことですが、日本でもキャッシュレス化をさらに推し進める策として、ペイロールカードの導入が検討されています。
ペイロールカードの普及により、アメリカでは労働者が賃金を受け取る頻度に変化が生じており、週1回や2週間に1回など、月1回ではない柔軟かつスピーディーな対応が一部で主流となり始めているようです。
日本においても給与デジタル払いの普及によって、給与の受け取り頻度に対する柔軟な対応が可能となることが想定されます。
まとめ
給与デジタル払いの解禁に向けては、資金移動業者が経営破綻した場合のセーフティーネットの整備などの課題もあります。
私個人的に、お買い物や公共料金、税金の支払いのほぼ全てをキャッシュレスで済ませています。銀行口座も全てインターネットバンキングを利用しています。
「〇〇Pay」などのキャッシュレスサービスを利用する直接的なメリットは、ポイント還元や値引きなど業者ごとのサービスの恩恵が最も直接的なメリットといえるでしょう。
仮に、1年間で同じ金額を全て現金で支払った場合とキャッシュレスサービスで支払った場合とでは、どれほど恩恵の違いがあるのでしょうか? 相当の金額であることは確かです。あとは、より安心、安全な利用環境の整備ということでしょう。
出典
金融庁 資金移動業者登録一覧
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー