更新日: 2021.08.17 その他暮らし

公正証書ってどんなもの? 作成すると何ができる? 〈離婚編〉

公正証書ってどんなもの? 作成すると何ができる? 〈離婚編〉
さまざまな事情から、離婚をすることになる夫婦がいらっしゃいます。離婚をするにあたって、家庭裁判所で調停や裁判をするケースもありますが、そうした手続きをせずに、話し合いで離婚(協議離婚)をするケースも数多く存在します。
 
その際に、「公正証書」を作りたいと希望される方が筆者へのご相談として多いのですが、作りたいと希望される方によくお話を聞いてみると、実は「公正証書」とはどのようなものかを正確にわかっていない方が散見されます。
 
公正証書とはどのようなものなのでしょうか。作成すると何ができるのでしょうか。今回は離婚時に作る公正証書について、解説します。
佐々木達憲

執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)

京都市役所前法律事務所弁護士

相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。

公正証書とは

公正証書とは、私人(個人または会社その他の法人)からの嘱託により、公証人がその権限に基づいて作成する文書のことです(法務省ホームページ参照)。
 
一般的に、私人が文書を作成した場合に、その文書は名義人とされている人が本当に作成をしたのか、本当に署名押印をしたのか、あるいはその文書に書かれている契約等は本当に存在したのか、疑われることがあります。
 
そこで、公証人として任命された第三者がその文書の作成に携わることで、その文書が真実に作成されたものであることを証明する文書が、公正証書です。
 
公証人は、公証人法により、裁判官や検察官等の法律実務の経験豊富な者の中から法務大臣に任命され、公正証書の作成等の公務をつかさどります。
 

公正証書を作るとどうなる? ~その法的効果とは~

例えば、お金の貸し借りをしたのに借りた人がお金を返さない場合、貸した側の人はたとえ貸し借りの契約書が存在していたとしても、いきなり借りた人の財産を差し押さえることができません。
 
まずは、裁判所に裁判を起こして、その契約書が本当にその人たちの間で作成されたものであるのか、借りた側とされている人はお金を返す義務が有るのか、裁判でそれが定められなければなりません。
 
それは、前述したように、その文書は名義人とされている人が本当に作成をしたのか、本当に署名押印をしたのか、あるいはその文書に書かれている契約等は本当に存在したのか、第三者からは真実がわからないため、まず裁判所でチェックをする必要があるからなのです。
 
これに対して、お金の貸し借りの事実について記載された公正証書が存在していたら、裁判を起こす必要がありません。その文書が真正なものであると公証人によってあらかじめ証明されているので、いきなり借りた人の財産を差し押さえることができるのです。
 
夫婦間で、慰謝料や養育費等の取り決めをした場合も同様に、相手方が約束した支払いをしなかったら、公正証書があれば裁判をせずにいきなり相手方の財産を差し押さえることができます。これが、離婚時に条件の取り決めについて公正証書を作成する意義となります。
 

その公正証書は本当に作成する必要があるのか、落ち着いて検討を

上述してきたことが離婚時に公正証書を作成する意味合いとなるのですが、筆者のもとに相談に訪れる方々は、これをよく知らずに「とにかく公正証書を作りたい」とこだわる方が非常に多いです。
 
この方々は、「離婚の時には公正証書を作れば良いと聴いた(あるいは、ネットで見た)。だからよくわからないけれどもとにかく作りたい」と、公正証書がどのようなものなのかまったくわからずに固執しています。とにかく公正証書さえ作ればいい、といわば公正証書を“魔法のツール”のように神格化している様子さえ見受けられます。
 
しかし、公正証書とは結局、いざという時に裁判をせずとも財産を差し押さえることができる効果があるに過ぎません。
 
実際に作成をするには手間ひまや費用も発生するのに対し、約束どおり支払いがなされるのであれば不要といえますし、差し押さえる財産そのものがない場合には、公正証書を作ったとしてもどうにもできません。それなのに作成すること自体にこだわってしまい、それが理由となって離婚の話し合いが難航してしまうケースを非常に多く目をします。
 
公正証書を作ることが悪いことなのではありません。しかし、せめて公正証書とは何なのか、何のために作るものなのかはしっかりと理解したうえで、自分たちのケースでは作るべきであるのか否か、落ち着いて検討をしていただければと思います。
 
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士

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