夫から暴力を振るわれたら…行政の支援にはどんなものがある?
配信日: 2021.08.27
追い詰められてくると「自分のせいで(自分のために)夫は暴力を振るっている」という錯覚にも陥る……夫の暴力からは何があっても逃れられないと思っていませんか?
DV被害を受けている女性を行政は守ってくれます。たとえ配偶者であっても、暴力行為は許されません。あきらめずに、まずは行政を頼りましょう。
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
ドメスティック・バイオレンス(DV)とは
ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)は、体に対するものだけではなく、精神的なものや性的なものも含みます。
体に対する暴力は、殴ったり、首を絞めたり、髪の毛を引っ張ったりというものがあります。
精神に対する暴力は、心ない言動等により、相手の心を傷つけるものです。例えば「誰のおかげで生活できていると思っているんだと」とどなったり、家族や友人と付き合うのを制限したり、配偶者宛ての電話や手紙の内容を勝手にチェックしたり、無視をしたりということが挙げられます。
性的なものは、嫌がっているのに性的行為を強要する、中絶を強要する、避妊に協力しないといったものがあります。夫婦だからといって暴行・脅迫を用いた性交は許されません。
これらの暴力は、単独で起きることもありますが、多くの場合は、重なって起こります(※1)。
令和元年度(平成31年4月1日~令和2年3月31日)の全国 287カ所の配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数は総数で11万9276件で、男女の内訳は、女性からの相談が11万6374件に対して、男性からの相談は2902件です。このように女性からの相談が97%以上と圧倒的に多い現状があります。
DV被害者は、けがをするにとどまらずPTSD (心的外傷後ストレス障害)に陥るなど、精神的な影響も受けます。加害者となる配偶者のタイプは一定ではなく、年齢、学歴、職種、年収には関係がないといわれています。
普段から誰に対しても言いがかりをつけて暴力をふるう人もいますし、外では人あたりが良く、社会的信用もあるのに家庭内では暴力をふるう人もいます。夫が妻に暴力をふるう理由の背景の1つには、社会における男尊女卑の考え方が影響しているといわれています(※1)。
行政の支援
DVで悩んでいたら、勇気を出して、配偶者暴力相談支援センターの機能を果たす施設に電話をしてみましょう。全国で300カ所あります。配偶者暴力相談支援センターには、以下の機能があります。
(1)相談や相談機関の紹介
(2)カウンセリング
(3)被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保および一時保護
(4)自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助
(5)被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助
(6)保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助
(※1)
殴る蹴る等の暴力を日常的に受けており、生命・体への緊急の危険がある場合は、警察署や配偶者暴力相談支援センター等に連絡をすれば無料で2週間程度、一時保護施設(シェルター)に入ることができます。子どもがいる場合は、(年齢制限がある場合がありますが、)同じ施設にはいることができます(※2)。
新たな生活を始めるにあたっては、当面の生活資金を確保する制度として、行政による資金の貸し付け、各種手当または生活保護制度を利用できます。また加害者から逃れて生活をしていくための住まいの確保には、都営住宅入居にあたり優遇制度や各種福祉施設等があります(東京ウィメンズプラザホームページを参照)。
妻の側からの離婚の申し立ての動機として、夫からの暴力は9039件、精神的な虐待は1万1094件、生活費を渡さないは1万2943件で、性格が合わない(1万7242件)に次ぐ大きな離婚原因でした(※3)。
慰謝料は、相手の不法行為によって受けた精神的・肉体的苦痛に対する損害賠償金ですが、調停や裁判では、加害者側の非に応じた金額になります。DVが理由の場合は、50万円から300万円といわれています。
まとめ
夫から暴力を受け続けているのに家を出る決心がつかない理由として以下のようなことが考えられます。
(1)逃げたら殺されるかもしれないという恐怖感
(2)この状態から抜け出せないとい無力感
(3)「暴力を振るうのは私のことを愛しているからだ」とか「いつかは変わってくれるのではないか」という期待感
(4)環境が変わることへの不安感
(※1)
夫から、肉体的、精神的に暴力を受けるという状態は普通ではありません。声をあげれば道は開かれます。まずは、配偶者暴力相談支援センターに連絡をしてみましょう。
出典
(※1)内閣府「男女共同参画局 配偶者からの暴力被害者支援情報」
(※2)日本司法支援センター 法テラス「福祉事務所や警察へ、一時保護施設(シェルター)を利用したい旨を連絡することにより、一時保護施設の利用ができます。」
(※3)裁判所「司法統計令和元年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、第一種証券外務員、内部管理責任者