更新日: 2021.09.01 その他暮らし

チケットの高額転売、消費者としての注意点とは

執筆者 : 岩永真理

チケットの高額転売、消費者としての注意点とは
コロナ禍により、東京オリンピックは無観客で開催されました。その他、演劇・スポーツ・コンサートなど、さまざまなイベントも中止・無観客・縮小などを余儀なくされています。規模縮小などで販売枚数が少なくなればなるほど、人気イベントのチケットは入手困難となり、いわゆる「プレミアチケット」になることがあります。
こうしたプレミアチケットを転売目的で購入し、購入価格以上で売り、その差額で利益を得ようとすると、それは犯罪です。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

なぜ犯罪になるの?

現在のコロナ禍では、イベントが開催されてもチケット数が制限されていて、これまで以上に入手困難なチケットもあるでしょう。公式オンラインサイトでは早々に売り切れで、どうしても行きたいイベントは、なんとしてもチケットを入手したくて、オークションサイトや転売サイトを検索する消費者がいることも事実です。こうした状況を逆手にとって、オークションサイトや転売サイトで高額のチケットを取引するのが「転売屋(転売ヤー)」といわれる業者や個人です。
 
欲しい人が納得して買うのであれば高額のチケットでもよいのではないか、と思うかもしれません。しかし、下記のような問題があります。
 

1.イベントの開催者や出演者(出場者)は、チケットが転売によって高額に取引されても、本来のチケット販売収入以外は受け取れない
2.チケットを買う消費者は、本来のチケット価格の何倍もの経済的負担を強いられる
3.チケットを買う消費者が本来価格でチケットを購入したら、それ以外に購入したであろうノベルティグッズなどの売れ行きが鈍る可能性がある

 
このように開催者・出演者(出場者)と消費者の双方にとって不利益となり、かつ、本来販売対象としていた人へ主催者がチケットを販売できず、本当にチケットが欲しい消費者が購入できない、といった状況を避けるため、転売を目的としたチケットの購入を防止する必要があるのです。
 

どんな法律が規制をしているの?

「ダフ屋行為」に加えて、インターネット上でのチケットの不当な高額転売等を禁止するため、2019年6月14日に通称「チケット不正転売禁止法」(「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」)が施行されました。それまで、転売目的でのチケットの購入や会場周辺でのチケットの転売などの「ダフ屋行為」は、各都道府県の迷惑防止条例で取り締まられてきました。ところが近年では、インターネットで容易にチケットを転売できるようになりました。インターネット上での売買は、「公共の場所または公共の乗り物」での売買に該当しないため、迷惑防止条例で取り締まることが難しくなったのです。
 
「チケット不正転売禁止法」によって、特定のチケットの不正転売および、不正転売を目的とした特定のチケットの購入が禁止されます。
違反すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
 

犯罪者にならないためにはどうしたらよい?

罰則の対象となるのは、不正転売業者はもちろん、不正転売(反復継続の意思を持って販売価格を超える価格でチケットを転売)を行う個人も含まれます。
 
ただし、「チケット不正転売禁止法」によって規制されるのは、特定のチケットに限ります。その特定のチケットの条件とは、国内のイベント等で不特定多数に販売されるチケットで、以下をすべて満たすことです。
 

●開催者の同意のない有償譲渡を禁止する旨が券面(電子チケットは映像面)に記載されていること
●開催日時・場所、座席(または入場資格者)が指定されていること
●購入者の氏名と連絡先(電話番号やメールアドレス等)の確認措置がとられ、その旨が券面に記載されていること

 
したがって、以下のようなチケットは、「チケット不正転売禁止法」の特定のチケットには該当しません。
 

●招待券など無料で配られたもの
●転売を禁止する旨の記載がないもの
●販売時に購入者や入場資格者の確認が行われていないもの
●日時の指定がないもの
など。

 

消費者としての注意点

まずは、転売されたチケットを買わないことが、トラブルに巻き込まれないための一番の防御であることは明らかです。公式サイトで売れ切れの際は、開催者の同意を事前に得ている正規(公式)リセールサイトがあれば、そこから買うのが最もよい方法です。また、病気やけがなどで行けなくなった場合に、正規リセールサイトを通じて通常に購入したチケットを譲渡できる仕組みがあれば、購入する時点でも安心感が増します。ただし、すべての開催者が公式リセールサイトを用意しているわけではありません。
 
公式サイトや公式リセールサイトで売り切れになってしまい、なんとしても手に入れたいイベントチケットの場合は、オークションサイトや転売サイトから購入したいと思うこともあるかもしれません。その場合は、以下のトラブルの可能性も考えておきましょう。
 

●開催者が転売を禁止している場合は、転売チケットでは無効となり入場できない
●お金を振り込んでもチケットが送られてこない
●イベント中止時などの返金保障はチケットの額面価格までで、それ以上支払った部分は返金されない

 

まとめ

消費者としてチケットを購入する際は、公式サイトや公式リセールサイトの利用がベストといえます。現段階では、イベント等のチケットすべてが「チケット不正転売禁止法」の対象になるわけではありません。しかし、今後は電子化の加速などから「チケット不正転売禁止法」の対象となる特定のチケットが増え、より厳格化されることも考えられます。個人であっても安易に不正転売をしないこと、そしてそうした不正転売者からチケットを買わないこと、を心掛けておきましょう。
 
(参考)
文化庁「チケット不正転売禁止法」
国民生活センター「チケットの転売に関するトラブルにご注意!」
政府広報オンライン「チケットの高額転売は禁止です!~チケット不正転売禁止法」
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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